負けても死んでもへこたれない!出雲の神・大国主命の冒険は波乱万丈

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前回、出雲の神様である大国主命が白兎を助けて、『お姫様と結ばれる』予言を受けたくだりまで紹介しました。果たして、兄弟神の荷物を持ってお供を続ける大国主命(オオクニヌシノミコト)は、幸せを掴めるのでしょうか…

成功したプロポーズが命取りに…

さて、因幡に着いた兄弟神達は自分こそ姫の婿殿になろうと希望に胸をふくらましていましたが、因幡のお姫様であるヤガミ姫は『私は大国主命を婿にしたい』と言います。こうなると面白くないのは兄弟神で、彼らは現在の鳥取県西部に位置する伯耆(ほうき)の山に大国主命を誘い出してこう告げます。

「この山に赤い猪がいる。下に追い落とすから捕まえるんだ!」

実はこの赤い猪と言うのが大きな石を焼いたもので、巨大な焼け石で押し潰された大国主命は息絶えます。それを見た大国主命の母神は天界の神様・カムムスヒにお願いして、貝の女神を派遣して貰いました。女神は、貝殻を削って作られた母乳のような薬で大国主命の生命力を蘇生させたのです。

それを見てますます怒った兄弟神(懲りませんね)は、今度は大国主命を太い木の割れ目に入れて圧殺しようと目論みました。またしても罠にかかって死にかけた大国主命は、母神の忠告で今の和歌山県、木の国(紀伊)に逃れるも追撃されてしまいます。

暴れ込んで来た兄弟神に対抗しかねた大国主命は、見かねた地元の神様に導かれて根の国―スサノオが支配する地底の国へと落ち延びていったのでした。

力の無さは知恵と人柄でカバー!根の国の大冒険

根の国へ行った大国主命を出迎えたのはスサノオの娘であるスセリ姫で、彼女と大国主命はすぐさま恋仲になります。娘が若造にぞっこんなのが寂しいと言うか、つまらなかったのでしょうか。スサノオは大国主命を「こいつは地上から来た不細工男、葦原醜男(アシハラシコオ)だ」と見下した態度を取り、蛇のいる洞穴に泊まらせます。

そうした父親の仕打ちに反発したのが親譲りの勝気さを持つスセリ姫で、彼女は蛇を大人しくさせる領巾(ひれ)、ショールのような布を大国主命に与えます。次の日にハチとムカデの部屋に入れられた時も毒虫に対処できる領巾を差し入れて、父神の悪だくみを頓挫させてしまうのです。

ここまで読み進めると、大国主命は武勇らしきものを発揮していないどころか、その心優しさに惹かれた周囲の人々や生き物に救われ、ヒントを与えられてひらめいているのに気が付きます。大国主命は、少々頼りなくても人柄・仁徳で周囲の助力を得て勝ち進むヒーローの先駆けでもあるのです。

スサノオを出しぬけ!根の国からの大脱走

さて、弱虫でお人好しの男が娘の彼氏で、脅しても怖気付く気配もないのを見たスサノオは音を発して飛ぶ矢、鏑矢(かぶらや)を大国主命に探させ、彼を焼き殺してやろうと火攻めを決行します。しかし、ここでも大国主命を慕うネズミが味方したために暗殺計画は失敗してしまいます。

スサノオは更なる嫌がらせとして、自分の頭に巣食うムカデを取って噛み潰させますが、スセリ姫が『赤土とムクの実を噛み潰して吐きなさい』と入れ知恵したために大国主命は、毒のあるムカデを噛まずに済みます。

そうとは知らぬスサノオは、“オレ様の娘といちゃつく生意気な若造”と蔑んでいた大国主命が従順だと思いこんで寝てしまうのでした。乱暴でワガママなスサノオが眠りこけたのを見たスセリ姫は、父の宝である剣・弓・琴を持った大国主命と共に駆け落ちを決行します。

スセリ姫という強力な助っ人を得て宝物まで手にした大国主命は、かつてのようないじめられっ子ではありませんでした。こうして、多くの人を味方にしてしまう仁徳という最強の武器をフル活用した、大国主命の反撃がスタートしたのでした。