「ドリームガールズ」の舞台(UCLのプレスリリースより)

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これを生の音楽ライブの力というのだろうか――。劇場でミュージカルを鑑賞すると、座っているだけで約30分の有酸素運動をした時と同じくらいの健康効果があることがわかった。

英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)と英ランカスター大学の共同調査で明らかになった。ただし、チケット販売会社アンコール・チケットに依頼されての研究のため、正式な学術雑誌に論文を発表せず、両大学が2017年9月29日にプレスリリースを通じてメディアに公表した。

「ドリームガールズ」の興奮が心肺機能の向上に

UCLのプレスリリースによると、調査は、ミュージカル「ドリームガールズ」を対象に行われた。「ドリームガールズ」は、ダイアナ・ロスを中心とする米国の黒人系女性ボーカル・グループ「スプリームス」をモデルにしたミュージカル。1960〜1970年代のソウルやR&Bの迫力のある音楽の世界を描いている。米ブロードウェイで1981年に初公演され、6部門でトニー賞を受賞。2006年には歌手のビヨンセが主役を演じて映画化された。

調査では、12人の観客に心拍数や脳活動、自律神経の状態などを測定する装置を装着し、約3時間のミュージカルを観劇してもらった。ミュージカルの公演中、観客の心拍数は平均で28分間、通常時の最大心拍数に比べ、50?70%程度の上昇が見られた(心拍数の図参照)。これは、心臓病研究に取り組む「英国心臓基金」が、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を行なう時に、心肺機能やスタミナを刺激するのに最適な心拍数として推奨する水準だ。

ただ、椅子に座っているだけなのに、28分の有酸素運動をしたのと同じレベルの健康効果があったことになる。また、心拍数はミュージカル開幕時の安静状態の時と比べ、第1幕の終わりまでに倍増、ドラマが佳境に入る第2幕には3倍になった。これは心拍数の変化としては、スピードのある長いラリーをプレイしているプロテニス選手とほぼ同じレベルだという。このため、12人のうち4人が途中で「息苦しさを感じました」と感想を述べたほどだ。

生演奏じゃないとダメ、ビデオ録画では心拍変わらず

一方、自律神経の働きを調べると、心拍数が高いレベルに上昇したにもかかわらず、交感神経(緊張する)と副交感神経(リラックスする)との間の高低さは穏やかだった。観客たちは人間ドラマの展開に適度に緊張しながらも、歌や踊りを楽しみ適度にリラックスしていた。

調査を率いた同大学心理学部のジョセフ・デブリン博士は、プレスリリースの中でこう語っている。

「この調査で、ライブの観劇が心肺機能を活性化するということがはっきりとわかりました。歌や踊りのリラックス効果によって、心拍数の上昇が、あくまで心臓発作を起こさない健康的な範囲に抑えられるのです。そして、劇場のパフォーマンスの最高値と最低値が、心臓を適度に刺激して有酸素運動と同じ健康効果をあげていると考えられます。別の研究によると、ピアニストの生演奏を見ている時の観客の心拍数は音楽のテンポによって変化しますが、同じ演奏をビデオ録画されたものを見ても心拍数は変化しません。音楽はライブで見聞きするのが健康に一番よいのです」