「中国経済は安泰だ」というのは本当だろうか。武者氏は「米中貿易摩擦の深刻化が避けられない」と予想する(写真:ロイター/アフロ)

中国最大の政治イベントといわれる中国共産党大会が、10月24日に閉幕した。習近平総書記への権力集中が進むなか、中国はさらなる飛躍を遂げ、最終的に世界覇権を握ることになるのか。あるいは不動産バブルに象徴されるようにさまざまな問題が顕在化するのか。武者リサーチ代表の武者陵司氏は、いずれ「米中貿易摩擦」が本格化し、「中国は敗北する」と予想する。

なぜ「中国の経済は脆弱」と言い切れるのか

またぞろ、「中国経済の未来は明るい」というたぐいの論調を、いろいろなところで目にするようになりました。

「すでにEC(電子商取引)や電子決済は日本よりも普及し、国家戦略としてIoT大国になろうとしている」

「中国バブルは崩壊しない。なぜなら、国がコントロールするからだ」

「世界の時価総額ランキングには中国企業が何社も入っている」

とまあ、こういう話が、中国経済の強さの根拠として語られているわけだが、やはり足元は相当脆弱である、といえるでしょう。

私が、国や企業の成長で最も重視しているのは、価値を生み出すメカニズムです。それが健全かつ持続性のあるものかどうか。額に汗をして、多くの人々に喜んでもらえるものを生み出し続けられるかどうかが、国や企業の根幹を支えます。そして、それは組織構成員のモチベーションが、正しく報われるかどうかによって決まってきます。

では、中国人にとってのモチベーションとは何でしょうか。大きく3つあります。

1つ目は、共産党組織における上部の人に認められたいという欲求です。しかし、問題は共産党のモチベーションがまったく不明であることです。共産党といいながら、一部の人間が金儲け主義に走り、特権階級が生まれるなど不平等がまかり通っています。

2つ目は民族主義。中国はすべての世界の中心であるという中華思想ですが、これなどは、他の国々からすればまったく意味不明です。単なる脅威にしかなりません。

そして3つ目は資本主義。金儲けした人間が正しいという考え方です。共産党の国なのに、拝金主義がまかり通っています。

このように、相矛盾するモチベーション、グローバル社会に受け入れられない思想がごちゃ混ぜになり、今の中国人のモチベーションを形成しています。確かに表面上は、中国経済の未来は明るいように見えるのですが、このように根本が実に危ういだけに、はたしてどこまで成長が続くのか、正直言って疑問なのです。

過剰な投資が壊滅的なダメージを及ぼすおそれ

加えて、これまでの中国経済の成長は、大部分が投資に支えられてきました。たとえば中国の高速鉄道網は、2009年時点の営業総距離が1万kmを目標にしていたのですが、2016年には2万kmを突破し、2025年には約3万8000kmになるといわれています。

これを実現するのに多額の投資が行われ、中国経済は大きく成長してきたわけですが、問題は住宅投資と設備投資において、過剰感が出てきていることです。過剰な投資は不良債権化し、最終的には中国経済にとって、壊滅的なダメージを及ぼすおそれがあります。

では、その投資はどんな資金によって賄われているのでしょうか。中国の外貨準備に対して、実は、対外純資産の額はその半分ほどしかありません。つまり、半分は外国からの借金であり、それが活発な投資の原資になっています。

これも非常に危うい話です。外国からの投資は、非常に足の速い資金なので、もし中国国内で何か大きな問題が生じたら、一斉に逃げ出すでしょう。そうなったら、中国は一気に外貨不足に陥ります。

もちろん、中国の首脳は、それを百も承知だと思います。だから中国は今、さまざまな形で世界の覇権を握ろうとし、加えて産業の核となるものをすべて押さえようとしているのです。

具体的にはハイテク産業です。現在、中国は半導体製造のための設備投資を、ものすごい勢いで行っています。将来的には、中国が世界に半導体を輸出する製造拠点になることを目指しているのでしょう。

でも、それを米国が黙って見ているでしょうか。間違いなく米中貿易摩擦に展開するはずです。ドナルド・トランプ大統領は、さまざまな通商問題を解決するに際して、多国間ではなく2国間で行おうとしています。これは、明らかに中国を意識した動きです。

「米中貿易摩擦」が深刻化、中国は敗北する

では、米国はどうやって中国との不公平な貿易関係を解決するのでしょうか。有効な手段としては、日米貿易摩擦のときに円高誘導をしたのと同じように、米国は中国に対しても、人民元高を要求するでしょう。もし人民元高が一段と進めば、米国の貿易赤字の半分を占める対中貿易赤字は減少するはずです。


問題は、ここから先です。人民元高で中国の貿易黒字が縮小すればするほど、今度は人民元安へと転じます。人民元安が進むと、今度は中国国内から外貨が流出します。現在、中国は世界最大のドル債務国ですから、人民元安は人民元建ての債務を大きく膨らませるため、中国は莫大な借金を背負うことになります。日本のように、ドル債権国であれば通貨安はむしろメリットに働きますが、中国のようなドル債務国にとって通貨安は、通貨危機・金融危機に直結するおそれがあるのです。

こうして、米中貿易摩擦の行方は、米国による人民元高の要求から始まり、中国の貿易黒字減少、人民元安、中国からの資本流出、そして金融危機という流れのなかで、最終的には米国が勝利を収めるでしょう。それは、米国と強い同盟関係を維持している日本にとって、経済面においても強い追い風になるはずです。