接客に疲れ朗読教室に通うOL・熊川絵里を演じている趣里/(C)NHK

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放送中のドラマ「この声をきみに」(毎週金曜夜10:00-10:50、NHK総合)は、 話下手で偏屈な数学者・孝(竹野内豊)が、朗読教室に通い、人生を変えるため奮闘するヒューマンドラマ。孝の通う朗読教室「灯火親(とうかしたしむ)」には、さまざまな事情を抱える生徒たちが在籍している。

【写真を見る】竹野内豊演じる孝にキツく当たる場面も/(C)NHK

その中の一人、熊川絵里は、普段はショールームに勤務するOLで、孝には度々キツいことを言うキャラクター。彼女もまた、顧客相手に型通りの説明をする毎日に疲れ、朗読教室に通っているという。絵里を演じている趣里にインタビューを行い、朗読をした感想や、撮影現場の雰囲気を聞いた。

■ 朗読は、感じるままに読んでいる

――朗読にはどのようなイメージを持っていましたか?

朗読の経験はなかったんですが、シス・カンパニーさんの朗読劇「宮沢賢治が伝えること」などを拝見したことがあってその時にすごく感動したので、元々興味はありました。声の色で伝えることで、日本語の良さも伝わってくるという印象でした。今回のお話を頂いた時には、個性的ですてきな共演者の方々と一緒に朗読ができるということがうれしかったです。

――そうそうたるキャストの方々が集結してますよね。皆さんと演技をしてどのように感じましたか?

片桐はいりさんとは、同じ作品に出させていただくことは3、4回あったんですが、顔を合わせてお芝居することがなかったんです。実際に共演してみると、受け取るものがたくさんあるなと思います。(杉本)哲太さんや麻生(久美子)さんも、お話はしたことがあったんですが、改めてこうして現場でお会いできるっていうことがすごくうれしいです。私も頑張らなきゃいけないなと思います。

――皆さんとの朗読はいかがでしたか?

共演者の皆さんと声をそろえて読んだ時には、やっぱり何か押し寄せてくるものがありましたね。言葉を区切るところや、音を合わせて読まなきゃいけないので難しいなと感じています。

――普段の現場の雰囲気はどうですか?

みんなすごく仲が良いんです。ロケがあった時には、そのロケ場所の近くのおいしそうなレストランをスマホで調べて、みんなで「時間あったら行きたいね」って話してます。

皆さん穏やかで、本当に空気が良い現場なんです。それがドラマにも出ているんじゃないかなと思います。年齢がバラバラなので、いろんなお話も聞けて。柴田恭兵さんも、昔小劇場で舞台をやっていた時のお話をしてくださったり、全然知らなかったことも教えてくださるので勉強になります。

――撮影の時には皆さんで事前に練習するんですか?

いや、皆さんプロなので、本番で決めようって感じですね。たわいもない話をしている時に朗読の先生が来るとちょっと「あ、やらなきゃ」ってなったり(笑)。先生がその都度教えてくださるので心強いんです。読む時のスピード感なんかも、全体を聞いて、指導してくださっています。

ただ、そんなに厳しいっていう感じでもなくて、「素晴らしいです!」って言って私たちの気分を上げてくれるので、「頑張ります!」っていう気持ちになります(笑)。読み方も、みんなで合わせてって言うくらいで、あとは感じたままにと言ってくださっています。

■ 朗読シーンは、孝の空想の世界に入り込む感覚

――劇中では、屋外で朗読をしながら演技をしている場面もありますが、教室内とはやはり感じ方が違いますか?

外で読む時は、孝の空想の世界の中なので、本を読むっていうよりは、イメージの世界で皆が開放されているような感覚なんです。なので朗読というよりは、自分が感じたままに、表現するというか…現実じゃない感じです。教室内とは開放感が全然違いますね。

空想の中で、孝も朗読教室に通っている人たちも、今捕らわれていることから解き放たれているので、天国のような、そんなイメージです。

――読んでいる時には、何かを想像して表現しているんですか?

想像するというよりも、感じたままに、ただ、自分がそこに存在するっていう感じです。みんな、なにか事情があって朗読教室に通っているので、現実ではない世界に行ける、朗読の魅力に取りつかれているところもあると思うんです。朗読するものが、例えば物語だったら、その世界の中に行くというか、そのまんまでいるような感じがいいのかなって思っています。

――絵里も、現実の世界に疲れているキャラクターですよね。朗読教室に癒やしを求める感覚には共感しましたか?

そりゃあねぇ、人間は癒やしを求めたいですよね〜(笑)。絵里はサバサバしているんですけど、ロマンチックなものに憧れがあって、多分そうなりきれない自分もいるんです。理想はあるけど、そうできない現実があるんですよね。だから朗読教室に通っているのかなって思うんです。そういうところは、もちろん自分と重なる部分もあります。

――そういう思いって誰でも抱えていますよね。

そうですよね。(ドラマの中でも)キャラクターは、それぞれ抱えているものがあって生きているから、救いを求めたいし、何か楽しみを持ちたいなっていう思いがあって。

人って絶対何かを抱えているから、朗読教室に行くこともそうですし、人それぞれのやる事や形は違っても、発散する場所や目標を持って生活したいっていう気持ちはすごくよく分かります。このお話で描かれていることは、すごく身近なことだなと思います。

■ 誰かを置いてけぼりにしないドラマ

――劇中で印象的だった作品は何ですか?

第3話で、宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」を、みんなで崖に行って夕日に向かって読んだんですけど、すごい高揚感でしたね。「雨ニモマケズ」って、みんなが知っている詩だけど、改めて読むと本当にすてきだし繊細だし、いいなぁって思いました。「仲間を感じる」ことがテーマで、孝も心が打ち解けてきているシーンなので、とても印象的でした。

――ちょっと口調がキツかった絵里も、孝と打ち解けてきたように見えますが、これからの絵里の見どころを教えてください。

第7話では、私が歌詞を朗読するシーンがあるんです。私自身、バンドとかが好きなのでおうちでよく音楽を聞くんですけど、改めて歌詞には、書いた人の世界観が出ているなと感じました。

朗読で歌詞を読むとまた印象が変わって、朗読ってすごいな、無限だなと思いました。例えば雑誌でも、目で読むのと声に出して読むのでは伝わり方も違いますし。歌詞の音楽じゃない伝え方って面白いなって思いました。

――脚本にも歌詞と同じようにその人の世界観があると思いますが、大森美香さんの脚本を読んで、どう感じましたか?

空想やファンタジーな部分もありながら、このドラマは現実的ですよね。離婚だとか子どもの問題もあって。どっちかに偏りがちだと思うんですけど、そのバランスがすごく面白いなって思いました。

大森さんの人柄の良さも、女性らしい現実的なところや、向き合わなきゃいけない部分もしっかり描かれているんです。家族の問題や性別のこととか、みんな抱えているものがあることによって、一人一人に寄り添っているというか、誰かを置いてけぼりにしていない感じがしました。

見ている人も、自分だけじゃないんだなと感じてくれると思いますし、そういうドラマがあるのはすごく救いなんじゃないかなと思います。