「Thinkstock」より

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 現在の医療は、通院と往診の2つが主な受診パターンだ。これに加え、国は遠隔医療の普及を推進する流れにある。

 すでに大学病院を含むいくつかの医療機関で遠隔医療が実施されているが、まだ患者に広く周知されていないのが現状だ。遠隔医療について知ることは、医療の選択肢が増え、有益であることは間違いない。患者のための医療を追求し、早くから遠隔医療を取り入れている東京・四谷のブレインケアクリニック院長、今野裕之医師に話を聞いた。

●遠隔医療は、患者にとってオプションのひとつ

「質の良い医療」とは、どのようなものか。

 緊急を要する場合や手術となれば、設備が整った医療機関が適当だが、慢性疾患などで定期的な受診による治療継続・経過観察をする場合は、なんといっても医師と患者の信頼関係が重要ではないだろうか。

 今野氏は、何よりも患者との信頼関係を第一に考えているという。多くの医療機関では、診察時間がわずか1〜2分といわれ、患者の話をほとんど聞かないような医師も増えている。だが、今野氏は患者から十分なヒアリングを行い、患者が理解しやすいような説明を心がけているという。そのため、今野氏をかかりつけ医とする患者たちは、強い信頼を寄せている。その信頼関係ゆえに、今野氏の患者のなかには、仕事等の理由で遠方に引っ越した後も、遠隔医療によって受診を継続している患者もいる。

「信頼関係を重視する患者さんは多く、医療機関を替えてこれまでの生活習慣や過去の経過を新たに話すことに抵抗がある人もいます。また、精神疾患の患者さんの場合は、その日のコンンディションによって来院が困難になることもあります。しかし、そのようなときこそ診察したほうがいいのです。そこで、遠隔医療での受診が可能となれば、病状の悪化を防ぐのに非常に有効な手段だと思います。患者さんには、通院のオプションのひとつとしてご案内しています」(今野氏)

●遠隔医療はアプリで手軽にできる

 現状、遠隔医療が広く利用されていない理由のひとつに、ハード面について知られていないことが挙げられるだろう。遠隔医療というネーミングが、難しい印象を与えてしまうのかもしれないが、実際にはいたって簡単だ。

 スマートフォンで、遠隔医療を利用するためのアプリをダウンロードするだけだ。代表的なアプリとして「CLINICS(クリニクス)」「ポケットドクター」「LiveCallヘルスケア」などがあるが、どのアプリも予約、診察、会計、処方までをインターネット上で完結できる。処方箋に関しては原本が必要となるため、患者の元へ郵送される。

 それでも現行法上、遠隔医療を受ける場合でも初診はクリニックでの直接受診が必要となっている。そして、その後に遠隔医療を受ける場合、「予約料」が発生する。この予約料については、クリニックによって違いがあるので、自分が受診するクリニックへ問い合わせをしたほうがいいだろう。

●医療機関同士でも利用すべき遠隔医療

 遠隔医療が注目される点は、医療の質の向上や効率良く医療の提供を実現するオプションとなり得るところにある。遠隔医療の定義は広い。たとえば、かかりつけ医ではなく、検査等で大学病院などを受診する場合に、医師同士でネットを通じて画像や検査結果などの情報を共有したりディスカッションすることも遠隔医療のひとつだ。病院を移るたびに検査するという無駄がなくなり、患者負担が減ると同時に医療費抑制の面でも有益な医療機関の連携を実現することが可能となる。

 また、認知症の予防・治療に力を入れる今野氏は、来る超高齢化社会において遠隔医療の担う役割は大きいと話す。

「高齢化社会が進むにつれ、在宅診療の利用者が増えることが想定されます。在宅診療の定期的な訪問のほかに、診察が必要な場合などに遠隔医療による診察をサポート的に行うことができるでしょう」(同)

 今月、千葉大学医学部付属病院が東日本電信電話(NTT東日本)と「地域包括医療連携の実用に向けた共同検討プロジェクト」を実施すると発表した。プロジェクトでは、NTT東日本が千葉大学で複数の講義を行うなど、遠隔医療の担い手を育成する教育を行う。将来的には、専門医とかかりつけ医の効率の良い連携により、患者にとって有益かつ的確な診療ができる仕組みの実現を目的としているという。

 この報道を見ても、遠隔医療を提供する側の体制が整っていない現状がうかがえる。しかし、このような現状でも患者のために遠隔医療を実施する今野氏は、まさに遠隔医療の先駆け的存在といえる。今後、このような医師が増えることを期待したい。
(文=吉澤恵理/薬剤師)