東芝の株主総会が開かれるのは今年だけでもう3度目だ(撮影:梅谷秀司)

「審議に入る前に、まずはお詫び申し上げたく存じます」

10月24日、千葉県の幕張メッセで東芝の臨時株主総会が開かれた。綱川智社長はあいさつと開会宣言、注意事項を述べた後、恒例となった感のある“お詫びの言葉”を述べた。

今年に入って東芝が株主総会を開くのは3度目となる。

3月の臨時総会は半導体メモリ事業の分社化の承認を得るためだった。米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)に関連した巨額損失穴埋めのためであり、前日にはWHが米国連邦倒産法の再生手続きを申請、東芝の2017年3月期の最終損失が1兆円になるとの見通しを発表したばかりだった。

6月の定時総会では、監査法人との意見の対立からその2017年3月期の決算を発表できていなかった。

今回、臨時総会を開くのは、同決算の承認が必要だったため。これは本来なら「報告」で済むところ、監査法人からの「無限定適正」意見が得られなかったために「承認」を得る必要があった。加えて、6月の総会時に暫定としていた取締役の改めての選任、分社したメモリ事業子会社「東芝メモリ」の売却の承認という3つが議案となっていた。

メモリ売却の行方を危惧

総会前に11人の株主に話を聞けたが、もっとも関心が高かったのはやはりメモリ事業の売却についてだった。

「本来なら稼ぎ頭のメモリ事業は売らないほうがいいが、今の状況なら仕方がない」(70代男性)「有望事業を売却してスカスカになって大丈夫かと思うが、カネが必要なのでやむを得ない」(58歳の男性)。

こうした意見に代表されるように、メモリ事業の売却は仕方ないものと受け止めたうえで「メモリ事業の売却がうまくいくかを聞きに来た」(60代男性)と、債務超過の脱却と上場維持のカギを握る売却の行方を心配する声が大半だった。

経営陣に対しては、「経営陣は全部ダメ。協業しているウエスタンデジタル(WD)が訴えるのは当たり前。原発の損失は2016年より前からわかっていたはずで、監査法人が正しい。東芝は上場廃止が当然」(千葉市に71歳の女性)などと厳しい声が多かったが、「今の経営陣は頑張ってくれている」(70代男性)という激励もあった。

もっとも、マシンガンのように経営陣への不満をぶちまけた前述の71歳の女性でさえ「役員全員に辞めてもらいたいが、そうはいっても人がいないので仕方がない」とあきらめ顔だった。

淡々と進んだ総会

まず、会社側は2017年3月期決算、PwCあらた監査法人が「限定付き適正」としたことへの反論、WH関連の損失、今後の東芝の姿、東芝メモリの売却などについて、淡々と説明していった。

株主からの質問は主に4分野に集中した。‥貅妊瓮皀蠅稜箋僂詫菁3月末に間に合うか、WHに関連した巨額損失の引き金となった米原発建設会社(S&W)買収についてのリスク認識、「限定付き適正」となった監査について、ぜ卞睇土改革の実効性、だ。


株主からは厳しい声が多かった(撮影:梅谷秀司)

,砲弔い董独占禁止法の審査とWDによる訴訟が課題と認めたうえで、「独禁当局に説明して承認を得られるように努力する」(綱川社長)、「WDの訴訟は解決していかないといけないが、買収を決めたベイン(キャピタル)とは、本件が解決していなくてもメモリ事業を引き取ることで大筋合意している」(財務担当の平田政善専務)と述べた。

来年3月末までに売却が完了しない場合、「具体的には言えないが、環境の変化に応じてさまざまな手段を考えて進めている」と綱川社長が回答した。WDの訴訟などで3月末までの売却が間に合わないことを危惧した株主が、東芝メモリを売却しないでメモリ事業の利益を元に東芝が優先株を発行して増資するスキームを考慮するように、3号議案(東芝メモリの売却)の修正動議を出したが、3号議案はそのまま承認された。

△砲弔い董S&W買収を決めた2015年10月のリスク認識については法務部担当で新任取締役候補でもある櫻井直哉上席常務が「(米国の4基について)コスト上昇が想定され、電力会社から訴訟を起されていた。工事担当の建設会社からも訴訟の恐れがあるなどの問題を抱えていた。S&W買収で電力会社から3000億円以上の契約の上積みをいただける。非効率だった工事業者を変えるなどの要素があった」と買収に至った事情を説明した。監査委員会委員長である佐藤良二社外取締役も「手続きは十分になされていた」と強調した。


総会は2時間52分に及んだ(撮影:梅谷秀司)

東芝の原子力部門の元社員という株主が「2011年9月には原子力事業の人間には原発の損失がだいたいわかっていた。損失を伏せていたのでは」と詰め寄ったが、原子力事業統括部長の畠澤守常務が「当時は911のテロ対応で(原子炉の)設計を大幅に見直して認可を得るタイミングであり、福島事故の直後でもある。設計や工事の変更でコスト増加が見込まれていたので、お客様と交渉していたタイミングだ」と対応は適切だったと訴えた。

十分な手続きでも見逃された巨額損失リスク

2011年段階でコスト増が見込まれていたならば、2012年3月期にWHののれんを減損すべきだったのでは、という疑問が浮かぶが、そこへの見解は得られなかった。

S&W買収についても、手続きが十分になされていたにもかかわらず、6000億円を越える損失リスクを見逃した理由を突き詰めようとしていない。理由がわからなければ、手続きを改善してもこの先また同じ失敗を繰り返す不安が消えない。

は、2017年3月期決算についてPwCあらた監査法人が「限定付き適正」とした件。PwCあらたは当期に計上されているS&W買収関連損失6522億円のうちの相当程度ないしすべての金額は、S&Wを買収した2016年3月期に計上されるべきであり、同期を修正する必要があると主張している。

これに対して、東芝は2016年3月期の修正する理由はないという立場。「利用すべき情報の判断についての見解の相違」(平田専務)であり、佐藤監査委員長も「会計監査人(PwCあらた)の説明について十分に了承することができなかった」と説明した。真っ向から意見を否定されたPwCあらた監査法人から直接回答を求める動議も出されたが、書面回答を平田専務が読み上げただけで動議は否決された。

い砲弔い討蓮経営幹部層への360度サーベイの実施、ミーティングや対話会の活発化のよるコミュニケーション強化に取り組んできており、「引き続き取り組みたい」(10月末に退任する人事・総務担当で経営刷新推進部長の牛尾文昭専務)とした。


(注)「臨時」は臨時株主総会(出所)東芝発表資料

全体としては、株主に誠実に答えようという姿勢が見られるが、こと△鉢に関してはどうしても噛み合ない。最後とする質問の後に議事延長の動議が出されたが、あっさり否決された。結局、2017年3月期の決算承認、取締役選任、東芝メモリの売却の3議案は何事もなかったかのように可決された。

「安心したとは到底いえない」

総会後にも株主に話を聞いた。東京都足立区在住の83歳の男性は「経営者も一生懸命だろうが、メモリ売却が来年3月末までに実現できるのか。安心したとは到底いえない」と不安感を口にする。

50代の東芝の元従業員という男性は「新しい話もないしこの程度だろう」と言えば、40代で三重県から来た男性は「上場廃止になっても持ち続ける。未来を見つめて復活して欲しい」と前向きだった。横浜から来たという68歳の男性は「アミカワ社長(正確には綱川社長)の人柄は信用できた」と語った。3時間近い総会を終え、足早に駅へと向かう株主には一様に疲労感が目立った。

株主総会を振り返って感じたのは出席株主の少なさだった。実際、出席株主は回を追うごとに減っている。不正会計発覚後の2015年からお弁当がなくなったこと、都内の両国国技館から千葉の幕張メッセに会場が移ったことなどが影響している可能性がある。

もっとも、株主総数がこの1年弱で約10万人減っていることを考えれば、東芝は個人投資家から見捨てられつつあるのかもしれない。