今年の文化勲章受賞が決まった藤嶋昭・東京理科大学長は、インタビューの中で、「世の中には不思議で分からないことがいっぱいあり、身の回りの事象に感動することが大事。何事にも好奇心必要です」と呼びかけた。

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ノーベル賞候補に毎年ノミネートされている藤嶋昭・東京理科大学長は、インタビューの中で、豊富な研究実績や教え子の留学生との交流から、自然界の驚異、教育・大学問題まで幅広く語った。「世の中には不思議で分からないことがいっぱいあり、身の回りの事象に感動することが大事。何事にも好奇心が必要です」と呼びかけた。

また、東京理科大の前身・東京物理学校卒の「坊ちゃん」(夏目漱石作)の主人公の時代には同校入学者のうち16人に1人の割合(6%)の学生しか卒業できなかったことを明らかにした上で、その伝統を受け継ぎ、学生を厳しく鍛え、理科系を中心とした総合大学としてノーベル賞級の研究者養成を目指す方針を述べた。
(聞き手=八牧浩行Record China主筆)

――藤嶋先生の講演は面白く引っ張りダコですね。子供向けのお話もとても人気があります。さらに古今東西の書物のお話も造詣が深く、若い世代が知るべき科学者108人を紹介した「時代を変えた科学者の名言」も出版されておられます。
この108人は単なる科学の専門家だけでなく、すべて全人格的です。彼らの深い人生を知ることは、若い世代にとってとても有益だと思います

――文人科学者といえばノーベル賞を受賞した朝永振一郎さんには大学で接しましたが、哲学、歴史など文科系の分野にも精通していました。

彼の「量子力学」の本を友人たちと合宿して読みました。科学者の必読書で素晴らしい本でした。

――朝永博士は文才もありました。先生の著作を読むと同じ読後感を持ちます。こういう形で発信されると、東京理科大で勉強したいという学生が増えるでしょうね。昨秋開催の理科大セミナーでは将来ノーベル賞受賞者を出したいとの熱意が伝わって来ました。留学生に対する期待は?

理科大の学部は留学生には難しく、卒業出来ない者も多い。運動部の所属部員やOB名簿では普通ほかの大学では何年卒と記しますが、理科大では何年入学で掲載します。卒業年次は分からないからです。昔から卒業は難しくて前身の物理学校の歴史を記録した文献によると、卒業できたのは入学者1000人のうちたった30人ですよ。3%ぐらいです。

夏目漱石が書いた「坊ちゃん」には理科大の前身の東京物理学校出の主人公が登場します。私の発見ですが、漱石は慶応3年(1866年)生まれ。翌々年が明治元年(1868年)。明治39年に坊ちゃんを書いたということは、新任の主人公がいつ卒業したかというと、明治37年でないと話が合わない。37年の卒業生は33人、坊ちゃんは3年で卒業できたと書いてありますので明治34年の入学。このときは833人が入学。なんと16人に1人しか卒業できない。坊ちゃんのモデルは優秀です(笑い)。

――少数精鋭ぶりには驚きます。徹底的に鍛えて、ついてこられない学生はオミットしてしまうんですね。

(当時は)夜間ですから勉強したい人は来なさい、そうでなければ去りなさいということです。そのうちの一人が坊ちゃん(笑い)。今も1割ぐらいが留年します。留学生は来ても特別扱いはしませんから難しいので、なかなか卒業できない学生もいます。大学院は英語での講義もありますが。

――かつて先生が東大研究室で実践されたように、厳選した将来トップリーダーになる素晴らしい人を国内外から呼んできて鍛えれば、ノーベル賞などにつながる可能性もあるのでしょうね。

そうですね。優秀な留学生には是非来てもらいたいですね。

――今度、受験システムも変わるようですね。

理科の時間も増えてきましたからね。私は中学も高校も理科の教科書制作の編集会議では、委員長をやっており、原稿をチェックしています。

――多岐に渡るお仕事ですね。いろいろな偉人の科学者の言葉を紹介している著作も多いですね。