愛媛で3年目を迎える小島は、今季33試合・6得点(38節終了時)。キャプテンとしてチームを牽引する。(C) EHIME FC

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 左腕に巻かれたキャプテンマークが頼もしかった。
 
 J2リーグ38節・湘南対愛媛。雨中の試合は湘南が23分にCKから挙げた1点を守り切り、完封勝利を収めた。湘南はこれでJ1自動昇格へさらに近づいた。ただ、内容は16位の愛媛が優位。執拗なプレスと素早い攻守の切り替え、そして果敢なサイド攻撃を仕掛けてペースを掴んだ。シュート数は湘南より2本少ない8本だが、CKは湘南の3本に対し愛媛は11本。愛媛が湘南をいかに押し込んだかが分かる。

 
 その中心にいたのが愛媛の8番、小島秀仁だ。ボランチの小島は両サイドにボールを散らしつつ、味方の足もとにピタリと収まる25メートルほどの縦パスを次々と繰り出した。さらにボールを持ち出し、力強く前線に攻め上がる。デビュー当時を知る人ならば、「こんなプレーが見たかった」と、そう思えるようなプレーの数々だった。
 
「今日は愛媛ペース。オレより秀仁のほうが楽しくやっていた。勝負の厳しさを教えられました」
 同じ背番号で浦和時代のチームメイト、湘南MFの山田直輝はそう語った。
 
 プラチナ世代の中心として期待された小島は2011年、浦和レッズに加入。当時の柱谷幸一GMは「夏にはレギュラーになっている」と太鼓判を押したが、この年のチームは残留争いの渦中にあり、経験の足りないルーキーに出番はほぼ訪れなかった。
 
 翌12年、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任。シーズン前の合宿では監督の目に留まったが、レギュラーとの壁は厚く、14年には徳島ヴォルティスに期限付き移籍。15年、浦和に復帰したものの、同7月に愛媛へ完全移籍した。
 
 小島は新天地の愛媛で試合に出続けた。特長の正確なパスが徐々に戻りつつあった。
 
 昨季、愛媛でチームメイトだった湘南FWの表原玄太は「走っている自分の足もとにピタリとボールが入るんです。あれだけ技術があるのに、なぜ浦和で出られなかったのか不思議だった」と振り返った。
 
 本来のプレーを取り戻すなか、間瀬秀一監督のもと、今季、小島は主将を任された。
 
「責任と自覚をもって愛媛FCを背負って、先頭に立って戦う。そのくらいの気持ちがないと上にはいけない」
 この決意は言葉だけではなかった。
 湘南戦で小島はチームを牽引するキャプテンらしい振る舞いを見せた。失点後、いち早くセンターサークルにボールを置き、試合前、そして負け試合の後でも先頭を切って、約30人のゴール裏のアウェーサポーターに近づき、深々と頭を下げた。
 
「キャプテンになって周りの選手に気を遣えるようになってから、自分の立ち位置やゲームでどこにポジションを取ればいいのかが見え出して、点も取れるようになった。浦和の時は試合に出たいがためのプレーが多かった。でも、今はチームが勝つためにどれだけ走れるか、アピールしながら、チームのためにプレーできるようになった、そのことが自分でも変わったなと思います」
 
 左腕のキャプテンマークが小島をさらに大きくしようとしている。
 
 小島には理想のキャプテン像がある。それは昨年、現役引退した鈴木啓太さんだ。
「プロ1年目の11年。チームが残留争いのなか、キャプテンの啓太さんにどれだけプレッシャーがかかっていたか痛感しますし、啓太さんがひとり背負っていたので改めてすごいなと感じました」
 
 現在の愛媛FCは、主力の多くが20代半ばの選手たちで構成されている。
「今は勝ててないけど、2年、3年後、愛媛はきっと面白いチームになる」
 
 小島秀仁はそう笑った。
 
取材・文:佐藤亮太(レッズプレス!!)