先人達の大変な苦労が…。日本に外来語が定着するまでに、実はすったもんだがあった?

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同じ言葉なのに「チェロ」が「セロ」?

『セロ弾きのゴーシュ』と言えば、文豪・宮沢賢治による名作です。読者の皆さんも、おそらくタイトルを見聞きしたことくらいはあるのではないでしょうか?しかし、同時にこの作品のタイトルを初めて見た時に「『セロ』っていったい何だ?」と思われた方もいるでしょう。実は筆者も「セロ」がピンと来なかった1人です。

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実は「セロ」とは、管弦楽には欠かせない弦楽器「チェロ」のこと。「チェロ」のスペルは「Cello」なので、読みようによっては確かに「セロ」とも読むことができますね。

しかし、同じ物を表す言葉なのになぜ、かつてはこのように異なる表記がなされていたのでしょうか?そこには「外来語」が日本語の中に定着するまでの、先人達の大変な苦労があったのです。

外来語の日本語表記には、苦難の道のりが・・・

このような例は、明治時代〜第二次世界大戦後くらいまで「イギリス」を「エゲレス(英吉利)」、「アメリカ」を「メリケン(米利堅)」、「コーヒー」を「カフェー」と表記していたことからも分かります。

恐竜の名前などは現在でも表記に揺れが見られ、例えば「ティラノサウルス」は「チラノザウルス」「タイラノソーラス」など、複数の表記が見られます。

こうなってしまった原因の1つは、日本語の「かな」が50音しかないため、外国語の発音を正確・忠実には表現しきれないことにありました。先人達はその50音をどうにか「カタカナ英語」のように当てはめて外来語の発音を表そうとしたのですが、その結果として日本語表記がいくつも出てきてしまったのでした。

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明治時代の小説家・評論家として活躍した斎藤緑雨(1868(慶応3)年〜1904(明治37)年)はこの現象について皮肉を込めて

「ギョーテとは 俺のことかと ゲーテ言い」

という川柳を残しています。

そう、詩劇『ファウスト』などの名作で知られるドイツの文豪「ゲーテ(Goethe)」の日本語表記も、明治時代には「ゲーテ」「ギョーテ」だけでなく、「ゴアテ」など実に20種類以上もあったのです!

言語に忠実な外来語の日本語表記への努力は、現代も続く!

第二次世界大戦後、日本の海外との交流はより盛んとなりました。それに伴い「バイオリン」を「ヴァイオリン」と表記するなど、外来語をより言語に近い表現に近付けようという動きは広がりを見せるようになっていきます。

外来語を日本語で表現するための試行錯誤は、現代でも続けられているのです。