【続・選挙の舞台裏】(中) “2枚目は私”と言ったために起こった悲劇も・・・

写真拡大

 都道府県知事や市町村長選挙、都道府県議会議員や市町村議員選挙は、何人かいる立候補者の中から1人選ぶので、1枚の投票用紙に記名すればいいのだが、衆議院選挙や参議院選挙は選挙区と比例区で計2枚の投票用紙に書くことになる。

 衆議院選挙の小選挙区では立候補者の個人名、比例区では政党名を記入。特定の政党を応援しながらも、人柄などから入れたい候補がいれば、比例区に投票する別の政党の人でも構わない。それゆえに、小選挙区は誰々だが、比例区はその候補者を支援する別の政党に・・・といった“バーター”はよく見かける光景だが、個人名と政党名とはっきり分かれているので分かりやすいのだ。実際に、今回の選挙でもそうした投票行動をとった人が少なくないだろう。

 その一方で分かりにくいといわれるのが参議院選挙だ。衆議院の比例区は、政党内で当選者の順位があらかじめ決まっている拘束名簿式なので政党名を記せばいいが、参議院の場合は非拘束名簿式で、個人名か政党名のいずれかを記す。個人名で記された票は、その候補者が所属する政党の票になる。当選者の順位が決まっておらず、その政党内で得票の多い順に当選者が決まるため、比例区の候補者は躍起になって有権者に自分の名前を書いてもらおうとするのだ。

 個人で選ぼうとしても、とにかく立候補者が多い。投票所で名簿をみると、細かな字でびっしり名前が並んでおり、誰にしようか迷った挙句、結局、政党名を書いたという人も多いだろう。しかし、立候補者にしてみれば、それでは困る。何としても自分の名前を書いてもらおうと必死にアピールすることになる。

 そうした特性から、知名度が高いタレント候補や、団体などが推薦する組織内候補が有利とされるが、それは他の候補と比べてのこと。よほどの有名人でもない限り、人の名前など簡単に覚えられるものではない。頼まれた候補者の名前を忘れ、政党名を書くといったのはありがちな話。そんなことから、比例区の立候補者を応援するスタッフは、何とか個人名を書いてもらうために涙ぐましい努力をしているのだ。

 有名なスポーツ選手出身の現職議員を応援した経験がある地方議員によると、知名度が高くても名前を書いてくれるものではない、という。「自分の支援者約5,000人に頼んだところ、『あの人知っているから入れるよ』といった人が多いので、半分ぐらいは入れてくれると思っていたら、とんでもない。後で、地域別の得票数を調べたら、たったの500票しか入っておらず、がっかりした」とか。

 また、組織内候補を応援した国会議員秘書は「有名人ではないので、名前を間違えないように何度も念を押したのに、投票した後に『名前忘れたので、おたくの党に入れた。それでいいんでしょ?』と言われ、力が抜けてしまった」と苦い思い出を話す。有名人や組織内候補は“有利である”だけで、名前を書いてもらうことが難しいのは一緒なのだ。

 一方、選挙区と比例区、いずれも個人名のため、両者を互い違いに書いてしまいやすいので、比例区の陣営はそのための工夫をする。よく聞くのは、1枚目が選挙区、2枚目が比例区で配られることが多いため、「投票表紙2枚目は○○」という連呼。せっかく入れてくれても、投票用紙に間違って書かれては何にもならないからだ。しかし、それでもとんでもないミスが生じることがある。以下は実際にあった話だ。

 その候補は、自分の出身地である人口50万人ほどの西日本の市を地盤とし、そこに連日のように張り付いて、名前を盛んにアピールしていた。その決まり文句は「私はイケメンじゃないけど、2枚目は○○で!」

 ところが、そこでは知事選が同時に行われ、その投票用紙が1枚目に配布されたから、たまらない。候補者の名を書くべき投票用紙は3枚目だったのだ。おかげで、2枚目の投票用紙、つまり選挙区に、その候補者の名前が書かれた票が1万票近くに達したという。もちろん、それらはすべて無効票。結局、政党内での得票順に影響し、これが原因で落選してしまった、

 参議院の全国比例区の候補は、名前を書いてもらうために、とても苦労しているのだ。