オオカミ。仏動物園で(2017年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】哺乳動物の血液から発生する成分「E2D」のかすかなにおいが、一部の動物を捕獲にかきたてる一方で、人を含むその他の動物を怖がらせ退かせることが分かったとする研究論文が、このほど発表された。

 英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された論文によると、サシバエから人に至る生物種が示すこの血中成分への真逆の反応はこれまで知られていなかったとされ、その起源が進化の根源にあることを示唆するものだという。

 E2Dは血液に金属臭を付与するとされている。

 スウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の主執筆者ヨハン・ランドストロム(Johan Lundstrom)氏は、AFPの取材に「血のにおいには、稀な普遍性の特徴がある」と語る。

 研究者らはブタの血からE2Dを単離して、それをオオカミに嗅がせた。するとオオカミは、この合成成分を塗った木片を、それがあたかも捕らえたばかりの獲物であるかのように舐め、噛み、守るといった行動を見せた。家畜の血を吸うサシバエも同様にE2Dに引き寄せられた。この反応は、動物の血に対して示すものと同じだった。

 では、被捕食生物はE2Dに対してどのような反応を示すのだろうか。研究チームは、被捕食生物が進化の過程でE2Dに敏感になり、リスクの大きい場所を避けるための一助となったとの仮説を立てた。

 ネズミを使った実験では、予想した通りの結果が得られた。ネズミはE2Dが発するにおいを嫌い、血に対するものと同様の反応を示したのだ。

 しかし、人の反応は予想できなかった。人は血を欲するのか、それとも恐れるのか──。

 研究者らは3つの方法でこれを調べた。最初のテストでは、立った状態にある人が、においを嗅いだ後にどのような反応を示すかを観察した。無意識の内に前に傾くのは魅力を感じていることの表れで、逆にわずかに後ろに傾くのは危険を感じていることを示すとされた。

 被験者40人は3種類のにおいを嗅いだ。どれもにおいの「良さに」違いはなく、またE2Dが放出されるタイミングや、研究内容や血液との関係についても事前に知らされてはいなかった。

■1兆分の1以下の濃度でも検知

 実験で被験者らは、E2Dを検知して体を後方に傾けた。それもごく少量に対しての反応だった。

 実験の結果を受けて、スウェーデン・リンショーピング大学(Linkoping University)の動物学者マティアス・ラスカ(Matthias Laska)氏は、「人はE2Dを1兆分の1以下の濃度でも検知できる」「これは珍しいことで、これまでに試された付臭剤の大半は、100万分の1や10億分の1が検知閾値だった」と説明した。

 実験ではまた、「微小発汗」の計測の他、視覚テストの反応時間も計測した。ここでは迅速で正確な解答が脅威の感知を表した。

 3つの実験のすべてで、E2Dにさらされた被験者はストレスと恐れの兆候を示した。

 研究者らは、人の反応が捕食動物ではなく、被捕食動物と同様のものだったことについてはさほど驚きはないと語る。論文では「日和見的に捕食者として存在してきたと考えられている人類だが、古生物学のデータを見ると、初期の霊長類は身体が小さく昆虫などを捕食していた」としながら、マンモスなどの大型動物を狩るようになったのはヒトの歴史の上ではつい最近のことだと指摘された。

 E2Dは、血液中の脂質が酸素にさらされて崩壊する際の副産物として発生する。
【翻訳編集】AFPBB News