(写真提供=FA photos)シン・テヨン監督

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サッカー韓国代表の不振が続いている。

予選敗退が危ぶまれたロシアW杯予選こそギリギリで突破したものの、10月の欧州遠征ではロシア、モロッコを相手に2連敗。

また、10月のFIFAランキングでは、前回の51位から62位に後退し、FIFAランキングが始まった1993年8月以来、史上初めて中国(57位)を下回る結果となった。

シン・テヨン監督を信じきれない理由

そんな中、猛批判を浴びているのが今年7月に就任したシン・テヨン監督だ。

前出の欧州遠征では、順位争いが佳境を迎えるKリーグに配慮して海外組だけで挑み、本職のサイドバック不在で“変形3バック”を採用。これは3-4-3から4-1-4-1に移行できる戦術だったが、窮余の策は選手になじまず、結局2戦合計で7失点を喫している。

これに対し、韓国のサッカー専門誌『FourFourTwo』などは、「ディフェンスは自動ドアのように道を開け、選手たちの集中力は飲酒運転レベルだった」と痛烈に批判。

シン・テヨン監督が帰国した際には、サッカーファンらが仁川空港に押し寄せて「韓国サッカーは死んだ」と書かれた横断幕を掲げて抗議デモも行われていた。

とはいえ、シン・テヨン監督はまだ就任して間もないのも事実だ。

シン・テヨン監督は、“ソバンス(消防手=火消し役)”の異名の通り、最近は土壇場で指揮を任されることが多い。

2015年にはU-23代表監督に就任したが、このときも前任者の故イ・グァンジン監督が白血病に倒れたための登板だった。

それでも翌年のU-23アジア選手権ではチームを準優勝に導き、今回のW杯予選でもロシア行きを勝ち取ったという意味では、“火消し役”としての活躍は評価されてもいいだろう。

にも関わらず、シン・テヨン監督は韓国で今一つ信頼されていないような印象を受けるのである。

その理由は、過去の采配にあるのだろう。

そもそもシン・テヨン監督のサッカースタイルは、戦術に変化を与え続けることが特徴だ。

例えば上述した2016年のU-23アジア選手権では、当時まだ19歳だったファン・ヒチャンをエースに抜擢し、チームを決勝に導いている。

また、同年リオ五輪では、代表チームが“谷間世代”と呼ばれ、グループリーグ突破も危ぶまれていた中で8強進出を達成。

今年5〜6月に韓国で開催されたU-20W杯で韓国代表を率いた際は、グループリーグの3戦にそれぞれ異なるフォーメーションで臨み、2勝1敗で決勝トーナメント進出を果たしていた。

だが、いざというときにつまずいてしまうのがシン・テヨン監督でもある。

U-23アジア選手権では、手倉森ジャパンと対戦した決勝戦で、2点を先制しながらも逆転を許し2-3で敗北。リオ五輪準々決勝のホンジュラス戦では、ボール占有率(64:36)、シュート数(7:4)と流れを掴みながらも決定打に欠け、0-1で敗退してしまった。

U-20W杯では、ベスト8進出がかかったポルトガル戦で、イ・スンウとペク・スンホの“バルサ・デュオ”を本来のポジションとは異なるウインガーに配置した4-4-2のフォーメーションに急きょ挑戦して敗れている。大一番での冒険が裏目に出たわけだ。
(参考記事:日本の久保建英だけじゃない!! 韓国のイ・スンウとペク・スンホはなぜ、バルサの一員になれたのか

当時、この結果について韓国メディア『SPORTS Q』は、「結果論的な話になってしまうが、少なくとも8強進出をかけた重要な場面では、慣れ親しんだフォーメーションを選択することが効果的だったかもしれない」と悔やんでいた。

こうした事情があるからこそ、現在、A代表の布陣が固まっていないことには懸念が多いわけだ。

キ・ソンヨンの本音

韓国代表キャプテンのキ・ソンヨンも最近、韓国メディアに対してこう吐露している。

「そろそろ、ある程度ベストイレブンの輪郭が見えていないといけないし、選手同士がアイコンタクトだけでもコミュニケーションをとれなくてはならない。それなのに、ディフェンダーに至ってはまだ一度も同じメンバーで試合に臨んだことがありません。

サッカーは互いの呼吸を合わせることが重要なのに、今は合っていない。だから選手たちは、ピッチでも何をすればいいかよくわかっていないようです」

ただ、結果を残せていない韓国代表には、果敢にチャレンジを続けることしか道が残されていないのも事実だろう。

それだけに、海外組だけを登用した欧州遠征についても、「現実的に大会前までにこれほど多くの海外組をチェックすることは不可能だった。今回の2連戦は、シン・テヨン監督自身の目で、直接海外組のサッカースタイルと可能性を見極める機会となった」(『オーマイニュース』)と肯定的に見るメディアもある。

苦境に立たされている今だからこそ、韓国はシン・テヨン監督のサッカースタイルを信じることが必要なのかもしれない。

(文=李 仁守)