ノーナ・リーヴス、SHISHAMO、CHAI……新作でポップミュージックをどう表現した?

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 今回のテーマは“バンドが表現するポップ”。80年代のポップスをルーツに持ち“ポップン・ソウル・ミュージック”を掲げるNONA REEVES、実はブラックミュージックに対する造詣も深いSHISHAMO、ニューウェイブ、エレクトロ、ヒップホップなどを自由に取り込んだ音楽性で注目を集めるCHAIなどの新作を紹介する。

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 デビュー20周年を記念したNONA REEVESのニューアルバム『MISSION』。シングル「O-V-E-R-H-E-A-T」のほか、「Danger Lover feat. いつか(Charisma.com)」「未知なるファンク feat. 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)」「記憶の破片 feat. 原田郁子(clammbon)」などが収録された本作は、70年代、80年代のポップス、ブラックミュージックをもっとも新しいポップミュージックへと結びつけてきたNONAの真骨頂とも言える大充実作だ。Daft Punkの『Random Access Memories』(2013年)からカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol.1』(2017年)に至るネオソウル、ファンクのリバイバルの流れとも必然的にリンクしながら、現在の日本のアイドルポップ、アニソンなどのテイストも取り入れられ、まさに全方位的なポップアルバムに仕上がっているのだ。グルーヴィーなサウンドと高品質なソングライティングを共存させたポップソングを提示することはもはや彼らの“ミッション”なのだと思う。

 The ピーズ、the pillowsなどのロックンロールバンドをリスペクトする一方、山下達郎、aikoなどもルーツに持つSHISHAMO・宮崎朝子(Vo / Gt)のソングライティングの質の高さは現在の若手バンドのなかでも群を抜いている。強烈なファンクネスを感じさせるロックンロールナンバー「BYE BYE」(2017年8月)に続くニューシングル「ほら、笑ってる」(映画『ミックス。』劇中歌)は、思い通りにいかない現実と格闘しながら、奇跡を待つのではなく、<みじめで 情けなくて/それでもこれが私だから>と自分を受け入れながら進んでいこうする決意を描いたミディアムバラード。感情の動きを繊細に表現するメロディラインとボーカル、歌を際立たせると同時に豊かなバンドグルーヴを体現する3人の演奏を含め、SHISHAMOのポップセンスが前面に押し出された楽曲と言えるだろう。

 新人バンドの登竜門である『FUJI ROCK FESTIVAL 2017』の「ROOKIE A GO-GO」に出演、岸田繁(くるり)、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)などからも評価されている女性4人組バンド・CHAIの1stフルアルバム『PINK』。ファンク、ニューウェイブ、ギターロック、ヒップホップが何の違和感もなく融合したアッパーチューン「N.E.O.」、抑制の効いた16ビート、人力エレポップ的なサウンドメイク、穏やかでキュートなメロディがひとつになった「ほれちゃった」など、意外性に溢れたアレンジメントと豊かな旋律を軸にした優れたポップナンバーが並んでいる。これらの楽曲から感じられるのは、他者の視線や流行に捉われず、好きなものは好き、素敵なものは素敵と言い切る姿勢。“コンプレックスは個性”“私たちはみんなかわいい”というメッセージを投げかけている彼女たちのスタンスは、もちろんその音楽性にもダイレクトに反映されているのだ。

 メンバーが脱退してもメジャーレーベルとの契約が切れても数年間リリースが出来ない時期があってもGOING UNDER GROUND・松本素生(Vo / Gt)はいつも変わらず楽しそうで、たまに取材の場で会ったときも「久しぶりじゃないですか! 元気ですか? 渋谷で飲み屋やってるから飲みに来てくださいよ」などと笑顔で話しかけてくれるのだが、本作『真夏の目撃者』でもGOING UNDER GROUNDは切なくてキラキラしていてグッとくるポップミュージックをしっかりと体現している。両A面シングル『超新星/よそもの』を含む本作のテーマは“夏”。何度も通り過ぎていった夏の記憶をモチーフにした楽曲は抒情性と高揚感と後悔と希望をオムニバス映画のように映し出し、リスナーの心の中にある“あの夏の感じ”を呼び起こす。そう、GOING UNDER GROUNDのポップの魔法はいまもしっかりと存在している。

 “全員アフロヘア”という出オチ上等のインパクトともにシーンに登場した3ピースバンド・鶴の結成15周年企画第一弾は、11曲入りのニューアルバム『僕ナリ』。ソウルミュージックとロックがぶつかり合うアンサンブルの中でドラマティックなメロディラインが広がる「低気圧ボーイ」、グルーヴィーなバンドサウンドが気持ちいい「Keep On Music」、軽快なギターカッティングを軸にしたシティポップ風ナンバー「グッドデイ バッドデイ どんとこい」、青春と呼ばれる時期をとっくに過ぎた男たちの心情を描いたミディアムバラード「バカな夢を見ようぜ」などルーツミュージックと日本語のポップスをナチュラルにつないだ楽曲からは、14年のキャリアの中で培ってきた円熟の技が確かに感じられる。(森朋之)