利き手側の手足を冷却し効果を検証(京都大学提供)

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乳がんや肺がんなどの治療に広く使われている抗がん剤「パクリタキセル」は、7割以上の人に副作用のしびれを生じさせる。しびれを治す方法はなく、治療をあきらめる患者が少なくなかった。

京都大学大学院医学研究科学生・華井明子さん(作業療法士)と坪山直生教授らの研究チームが、手足を冷やせばしびれを予防できることを発見、医学誌「Journal of the National Cancer Institute」(電子版)の2017年10月12日号に発表した。冷やしたグローブ(手袋)とソックス(靴下)を身に着けるだけで副作用の心配もなく、患者の体に優しい画期的な方法だ。

乳がん・肺がん・胃がん患者の7割以上が副作用に苦しむ

京都大学の発表資料によると、パクリタキセルは現在、乳がん、肺がん、胃がん、子宮がん、食道がんなど多くのがんに用いられている。投与は病院施設で点滴によって行なわれる。点滴は毎週1時間ずつ、12週間ほど(多い人は1年以上)続けられる。しかし、投与直後から副作用として手足の指先にじわじわとしびれ(末梢神経障害)が出てくる場合が多い。

投与後4〜6週目から弱いしびれが出始め、回数を重ねるごとにひどくなる。正座で足がしびれて立てなくなるように足がつまずいたり、手に力が入らず物を落としたりして日常生活に支障をきたす人も多い。しびれは患者の67〜80%(平均77%)に現れ、一度発症すると1年以上残る。しびれを効果的に予防・治す方法がないため、途中で抗がん剤療法を断念する人が多い。

しびれを発症してからでは治すことは難しい。予防するにはどうしたらよいか。そこで、研究チームが考えついた方法は手足を冷やす方法だ。マイナス25〜30度に冷やした冷却用グローブとソックスを点滴の15分前から身に着ける。そして1時間の点滴中と点滴終了後の15分間と、計90分間冷やし続ける。

40人の乳がん患者に点滴の際に片側の手足だけ、冷却したグローブとソックスを装着する臨床試験を行ない、「しびれ」が生じるリスクを調べた。すると、冷却した側では87%も低くなることが確認できた。

手足を冷やすと血流が滞り、抗がん薬をブロック

それにしてもなぜ手足を冷やすと、しびれを予防できるのか。J-CASTヘルスケアの取材に、華井明子さんはこう答えた。

「寒い日に指先が冷えて青白くなる様子をイメージするとわかりますが、手足を冷却すると末端への血液循環が抑えられます。抗がん剤を点滴すると、血流に乗って体中に薬が届きますが、副作用を起こす手足だけは血流が滞り、薬が届かなくなります」

――予防効果はずっと続くのですか?

華井さん「点滴を行なう時に毎回冷却し、抗がん剤の血中濃度が最も高くなっている時に、手足に抗がん剤が到着するのを防ぎますから、ずっと予防効果が続きます」

――マイナス25〜30度というと、自宅の冷蔵庫で手袋・靴下を冷やし、しびれを治すというわけにはいきませんね。

華井さん「冷却は毎回の点滴時の『予防策』として行なうもので、一度出てしまったしびれを治療するものではありません。点滴は病院で行ないますから、冷却も病院で行なうことになります。病院によっては冷凍庫がない所もありますから、全国的な導入に当たっては診療報酬改定も必要と考えています」