自由民主党公式サイトより

写真拡大

 自民党が単独過半数、公明党と合わせ改憲勢力の3分の2を超えるという圧勝に終わった衆院選。選挙結果を受けて安倍首相は、憲法改正や時期総裁戦について強気な明言は避けたが、その一方、テレビの選挙特番への生インタビューでは、いつもの姑息な一面を見せた。

 昨日午後10時ごろからはじまった安倍首相のインタビュー生中継は、TBS、テレビ東京、NHK、テレビ朝日、フジテレビ、日本テレビの順でおこなわれたが、民放5社のインタビューでは「まずご質問にお答えする前に」と切り出して台風の呼びかけと政府対応について語った。しかし、なぜかNHKでは、台風の話題を最初に口にせず、淡々と質問に答えたのだ。

 総理として災害対応を呼びかけるなら、民放よりもNHKでおこなうべき。なのにそれをしなかったのは、想定範囲内の質問しかしないNHKは別として、安倍首相が苦手とする池上彰や星浩、村尾信尚といった民放キャスターからの質問に少しでも答えたくなかったから、としか考えられないだろう。

 災害さえ質問時間を削るための道具にしてしまうとは卑怯極まりないが、しかし、この選挙戦の期間中、いや、投開票日にまで、安倍自民党は卑しい作戦を展開してきた。

 そのひとつが、投票日だった昨日22日、大手紙や地方紙に自民党広告を大量出稿したことだ。

 広告は、この選挙戦での自民党の「この国を、守り抜く。」という選挙キャッチコピーがでかでかと躍り、同じく選挙ポスターで使用された安倍首相のバストアップ写真が大きく配置されている。自民党は昨年おこなわれた参院選の投票日にも、大手5紙に「今日は、日本を前へ進める日。」と投票日を意識した大きなコピーを掲げた広告を出稿。公職選挙法では投票日の選挙運動は禁止されており、そのときも問題視されたが、自民党は「選挙運動ではなく政治活動の広告」と説明。しかし、選挙戦のキャッチコピーを掲げていることからも、これが選挙活動であることは明々白々だ。

 だが、じつは自民党は、もっとえげつない活動をおこなっていた。本日、『ひるおび!』(TBS)と『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)に出演した"安倍政権御用ジャーナリスト"である田崎史郎・時事通信社特別解説委員が、得意気にこんな"裏話"を披露したのだ。

●産経新聞は、立憲民主党の街宣写真を安倍自民党の街宣のようにミスリード

「(自民党は獲得議席が)260台に乗ればいいなと思っていたのが、昨日の午前中ですよ。でもやっぱり自民党の組織力っていうのはすごくて、あの、昨日も電話作戦やってたんですよ。それは安倍総裁と二階幹事長の指示で、『とにかく電話しろ』と。ギリギリまで。候補者名を言うと、これ選挙違反ですから『自民党の○○事務所です』と。『投票に行かれましたか?』と」(『グッディ!』での発言)

 組織力云々以前に、こんなことが許されるのか。無論、この話を聞いていた司会の安藤優子氏はすかさず「○○事務所ということは、候補者の名前は言うわけですよね?」と質問したが、田崎氏は「でも、事務所というかたちですから」と回答。しかし、田崎氏と並んで解説をおこなっていた政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏は「はっきり言えば脱法行為ですけどね」とツッコミを入れていた。

 投票日に安倍首相自ら「脱法行為」である電話作戦の指揮を執る──。資金力と組織力をバックに、安倍自民党は投票日でもなりふり構わず選挙戦をおこなっていたわけだが、それは自民党だけの話ではなかった。安倍政権応援メディアとその団員たちが、選挙期間中にも安倍首相を"アシスト"するべく暗躍していたからだ。

 たとえば、投票日を迎えた22日の産経新聞朝刊一面は、思わず仰け反るような紙面構成をおこなった。「安倍政権5年 審判は」という見出しの下に大きく掲載した写真は、新宿南口駅前で凄まじい数の人びとに囲まれ、その声援に応えるように手を上に掲げる男性ふたり。写真キャプションは投票日ということもあり、政党名は隠されて〈最終日、「最後の訴え」に聞き入る聴衆ら。レインコート姿の人も〉としか書かれていない。

「安倍政権」と打たれた見出しと写真を合わせて見ると、一見、安倍自民党の街頭演説の風景のように錯覚してしまうが、じつはこの写真、21日におこなわれた立憲民主党の街宣の写真。大勢の聴衆に囲まれている男性ふたりは背を向けているため顔は見えないが、これは枝野幸男代表と福山哲郎幹事長だ。

 つまり産経新聞は、立憲民主党の盛り上がりを、あたかも「安倍政権への審判」であるかのようにミスリードする紙面を、党名を隠して掲載できる投票日であることを利用して掲載したのだ。

 安倍自民党はこの街宣がおこなわれた同じ夜、秋葉原駅前で、多くの日の丸に包まれるという「極右集会」「おとなの塚本幼稚園」というべき、安倍支持者の実態が露わになった街宣をおこなった。現場では、TBSやテレ朝などに「偏向報道だ!」とわめき、政権に批判の声をあげる人に対しては「朝鮮人か!」などと怒鳴り散らすというヘイトスピーチまで飛び出す始末だったが、常日頃、同様の主張を繰り広げている産経新聞はこうした「風景」こそ「真実」として紙面化すればいいこと。それを、こんなときには立憲民主党の写真を利用するとは、まったく開いた口も塞がらない。

●安倍応援団メディアもタイミングよすぎる広告で援護射撃

 だが、さらに呆れるのは、安倍応援団メディア・団員の露骨な動きだ。

 この選挙中には、メディア圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」立ち上げメンバーであり、2012年秋の自民党総裁選直前に『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という"安倍ヨイショ本"でデビューした自称文芸評論家である小川榮太郎氏が『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)なる著書を「月刊Hanada双書」として出版した。

 小川氏は、森友問題で当初は籠池夫妻を擁護し、昭恵夫人も籠池夫人に〈小川榮太郎さんがお電話されたようですが、繋がらず留守電にもならなかったと言われていたので携帯番号お教えします〉などとメールを送っていたことが発覚している。このように、昭恵夫人とベタベタの関係を築いている"関係者"が何を言おうと信用できるはずがないが、問題は、書籍広告として「"スクープ"はこうしてねつ造された」などのキャッチコピーとともに、新聞に大々的に掲載されたことだ。

 それは、選挙中に発売された高橋洋一氏の新刊『ついにあなたの賃金上昇が始まる!』(悟空出版)も同じで、やはり小川氏の著書と同様に、「アベノミクス継続で日本経済は必ず大復活する!」「フェイク報道に騙されるな!」「森友は財務省のチョンボ、加計は三流官庁文科省の完敗」などという安倍首相を応援する文言が広告として紙上に躍った。これらは選挙中だけでなく、投票日にも掲載されたのだ。

 選挙を目前に、もうひとつ、奇怪な動きが見られていた。じつは、「総選挙!〈安倍政権の反撃〉」「新聞は偏向している」などと書かれた極右雑誌「月刊Hanada」(飛鳥新社)のチラシがポスト投函されていたのだ。しかも、「月刊Hanada」が袂を分かった「月刊WiLL」(ワック)もまた、同じようにチラシを配布していた。

 当リテラ編集部のスタッフ宅にもこのチラシは投函されていたのだが、ともに定期購読を募ったチラシを装いながら、そのじつ、安倍首相を擁護する一方で政権批判を批判する目次などの内容紹介が占めており、事実上、安倍政権の広報のような内容だ。そのため、ネット上では"「広告」を隠れ蓑にした安倍自民党の選挙応援チラシなのではないか"という見方も。さらに、"もしかして昵懇の両誌の版元に安倍自民党が依頼してチラシ配布させたのではないのか"という疑問も噴出していたほどだ。

 チラシの目的にかんしては定かではないが、このように、お友だちメディアも一丸となって姑息な選挙戦を繰り広げてきた安倍自民党。今回の圧勝という結果によって、安倍首相が今後ますます批判的なメディアに対する圧力を強める他方で、こうした応援メディアをどんどん勢いづかせていくことは確実だろう。
(編集部)