モスクワで開催されたグランプリ(GP)シリーズのロシア大会、ロステレコム杯の女子フリーで、演技を終えた樋口新葉は、納得の表情を見せた。


GPシリーズロシア大会で3位表彰台の樋口新葉

 中盤の3回転サルコウが2回転になり、後半のダブルアクセルからの3連続ジャンプでは最後の2回転ループが少し詰まった着氷になってわずかに減点。それでも、ミスをそれだけにとどめ、最後までスピードに乗った滑りをした。

 その結果、フリーでは137.57点を獲得し、合計は207.17点。順位は3位だった。

 前日のショートプログラム(SP)、「最初から最後まですごく楽しく滑れた」という樋口は、終わった瞬間に両手でガッツポーズ。だが、得点を見てその表情は曇った。

 後半の3回転ルッツからの連続ジャンプはセカンドの3回転トーループが回転不足と判定され、次の3回転フリップもエッジをフラット気味にして踏み切っていたために”ノット・クリアー・エッジ”のアテンションマークがつけられた。その減点があってSPは69.60点。1位のエフゲニア・メドベデワ(ロシア)には11.15点、2位のカロリナ・コストナー(イタリア)には5.02点差をつけられた。

「失敗なく終わったのがすごくうれしくてガッツポーズが出ました。得点は思ったより出なかったですが、スコア表を見たらわかりやすいミスだったので、明日のフリーでは直せると思います。(初戦の)ロンバルディアトロフィーのあとは、連続ジャンプの最初のジャンプは低く跳んで、着氷後に流れるようにして2本目を高く跳ぶことを意識して練習してきました。フリーも今日のような感覚で滑れたらと思います」

 そのフリーは、世界女王のメドベデワが最後のダブルアクセルで着氷後に転倒する珍しいミスを犯した。苦笑で演技を終えたが、それでも150.46点を獲得して合計231.21点。さらに、SP2位で最終滑走者のコストナーは、演技構成点で高得点を獲得して合計215.98点。それぞれSPの順位をキープして実力を示した。

 このふたりに次いで樋口は3位だったが、GPファイナル進出の可能性は残した。

「フリーでは、昨日のアテンション(ノット・クリアー・エッジ)や回転不足が気になっていたので、すごく緊張していて、演技中の記憶もリンクの白い表面しか残っていなくて……。お客さんの顔とか歓声はぜんぜん覚えていないですが、演技に力を入れるような滑りはできたかなと思います」

 こう語る樋口は、フリーではSPで犯したミスが出なかったことに加え、昨季苦しんでいた「パンクで1回転になってしまうジャンプが出なかったのがよかった」と言う。

「パンクをして点数にならないことを去年多く経験したことで、練習でもパンクをしないことを意識して、集中できているのかもしれないです。五輪シーズンなので、より一層そういう気持ちになっているとも思います。去年まではジャンプをあまり意識しないで跳んでいましたが、今年はどう跳ぶかということを意識してやっています。それが体に染み込んできているのだと思います」


次戦はファイナル進出をかけて中国大会に出場予定

 ただ、同時に今回の演技を振り返って「ほとんどのジャンプがまだ詰まっていてGOE(出来ばえ点)を稼げていなかった」と反省する。合計217.63点だったロンバルディアトロフィーより10点以上低いが、樋口はこの得点が「今の自分」と話す。

「ロンバルディアであの得点が出たのはすごくうれしかったけど、ショートもフリーも回転が足りないのではないかと感じていました。今回のように回転不足やアテンションがつく厳しい判定なら、点数はもっと下がっていたはず。(今回は)映像で見返してもわかるくらいの回転不足だったので、今回の試合がベースになると思います」

 日本女子の平昌五輪出場枠は「2」。その厳しい戦いに備えて、妥協するわけにはいかないと考えているのだろう。それは昨シーズン、苦しみながらも世界の大舞台を経験したことで得た感覚だ。

 樋口は、今回のロステレコム杯で3位になったとはいえ、当面の目標にしているGPファイナル進出が確実になったとはいえない。次は2週間後の中国杯。三原舞依と本田真凜のほか、昨季の世界ジュニア王者のアリーナ・ザキトワ、元世界女王のエリザベータ・トゥクタミシェワのロシア勢や、昨季世界選手権3位のガブリエル・デールマン(カナダ)も出場する。そこで2位以上にならなくては、ファイナルへの道は見えてこない。

「目標としている200点超えができているのはうれしいですが、210点とか215点を超えるようにしていかないと次の試合は勝てないと思う。そのためにも、ジャンプのミスをなくすだけではなく、着氷後の流れをよくするなど、加点をもらえるものを目指していきたい。中国杯は2週間後で時間は短いですが、今の感覚や気持ちを忘れないようにしてうまく調整していきたいです」

 こう話す樋口は、ライバルたちと自分の得点を見て、しっかりと自分の立ち位置が把握できているといえる。昨季は全日本選手権で2位になり、世界選手権や世界国別対抗に出場して大きな手応えをつかんだ16歳が、五輪出場へ向かって走り出した。

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