ウクライナのドネツクで地元デザイナーが手がけた服を手にする女性(2017年8月24日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】紛争の傷痕が残るウクライナ東部では今年、ファッショニスタたちの間で、戦闘服やソビエト軍の式服などのミリタリーファッションが流行している。

 親ロシア派の武装勢力が事実上の首都としているドネツク(Donetsk)からは、「ザラ(Zara)」や「リーバイス(Levi's)」といった国際ブランドが撤退。これによりブティックには地元デザイナーの作品を並べるスペースができた。彼らの作品には、暗い日々の現実が反映されている。

 デザイナーのユリア・モロゾワ(Yulia Morozova)さん(27)によると、この工業都市で女性に一番人気の服装は「小さな石炭の塊」と呼ばれるモード。ウクライナ東部を象徴するものだと彼女は言う。

 ラインストーンが散りばめられた黒とグレーのロングドレスに合わせるのは、ウクライナからの独立を一方的に宣言した「ドネツク人民共和国(Donetsk People's Republic)」の青と赤の旗をモチーフにした半透明のスカーフ。その旗にも描かれている帝政時代からのロシアの国章でもある双頭のワシは、イブニングドレスにもフィーチャーされている。

 2014年に始まったウクライナ内戦では、1万人以上が命を奪われている。多くはウクライナ政府軍と親ロシア派反政府勢力の両方による無差別爆撃や大量の地雷によって亡くなった人たちだ。その戦闘も最近では低強度紛争へと落ち着いてきており、休戦協定がたびたび破られるものの弱まりつつある。だが南東部の一部は依然、分離独立派の強固な支配下にあり、ウクライナ政府はこれをロシアによる支配だと主張している。

■「若い共和国」の着こなし

 服装はこの現実をいや応なく反映している。目抜き通りの大型広告では、入れ子人形のマトリョーシカなど昔からのロシアの定番デザインと、ミリタリーファッションのポスターが肩を並べている。

 モロゾワさんが提案するファッションで最も目を引くのが「若き共和国」というドレス。白い刺しゅうに覆われたドレスに、ドネツクの旗の色をした長い袖があしらわれている。「私たちは若い国に住んでいる。育ち始めたばかりの国です」。地元デザイナーの作品を集めた野外の特設展で、モロゾワさんは来場した人々に説明していた。そして鎌と槌のモチーフがあしらわれた別のドレスについては、「みんなソビエト連邦生まれだから」と語った。■デザインに反映する紛争

 しかし、「ロシア風」が国際的な有名ブランドに取って代わっていることを快く思わない人もいる。

 語学学校の元学生で現在無職のエレーナさん(27)は、ドネツクにあるショッピングモールを何も買わずに去った。彼女は親ロシア派勢力による仕返しを恐れ、苗字は明かさずに取材に応じた。「こういったミリタリールックや愛国風のモチーフ、マトリョーシカや『ロシア風』の刺しゅう……どれも品質の良いものではない。どれも好きじゃない」と話す。「需要がないことと戦争のせいで、良い服がドネツクから追いやられてしまった」

 一時は100万人近くが暮らしていた街は今、地元の業者以外はトルコや中国製の安い模造品であふれかえっている。

 デザイナーのタチアナ・プロチェンコ(Tatyana Protchenko)さんの最新スタイルは、戦闘によって毎日のように命が奪われていった2年前の日々にインスパイアされている。「木々が生い茂って暖かく美しい春だったのに、そこら中で砲弾が爆発していて、人々が死んでいった」と振り返る。「戦争は私のコレクションに深く影響を与えた」

■なぜ迷彩服を着るのか?

 しかし彼女は、自分のデザインは戦争を助長するものではないと強調する。「戦闘中であっても、ドネツクの女性はデリケートでフェミニンなままなのだという考えなのです」

 一方、買う側のエレーナさんは、なぜ女性が迷彩服や、政治色の強いロシアの旗や、ウクライナからの独立を一方的に宣言した2つの地域の旗をモチーフにした服を着なければならないのかと問う。「こういったタイプの服は、戦場でカモフラージュが必要なときや、愛国心を表現するために着るものだ」と彼女は語る。「なぜ若い女性が迷彩柄を身にまとわなければならないのか。旗のように見えるドレスを着ることで、どうやって自分の国を助けられるのか」。エレーナさんは理解に苦しみつつ頭を横に振る。「こういうものは政治家や軍人に任せておけばいいと思う」
【翻訳編集】AFPBB News