「沈黙の臓器」が寿命に影響

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 沈黙の臓器といわれる「腎臓」の機能に注目が集まっている。きっかけは10月1日に放映されたNHKスペシャルだった。タイトルは「“腎臓”が寿命を決める」──。「長生き」に、腎臓が大きな役割を果たしているとは、どういうことなのか。

 尿の生成と排泄を司る腎臓は、年齢を重ねるほど不調を起こしやすい。成人病の代表格である高脂血症や痛風は腎機能を低下させ、腎不全の原因となることが知られている。腎不全が尿毒症を引き起こすのを防止するには、人工透析に踏み切らなければならないケースもある。腎臓がんも、近年増え続けているがんのひとつだ。

 中高年にとって「不安のタネ」というイメージが強い臓器だが、Nスペでは尿排泄だけではない腎臓の「知られざる機能」が紹介された。

 まず、他の臓器からの様々な「メッセージ」を聞き、体内の健康を保とうとしていること。血液中の酸素濃度が不足すれば、骨に赤血球を増産するよう腎臓が働きかける。

 さらに腎臓はレニンという物質を放出することで血圧をコントロールしている。慢性的な高血圧患者の多くがレニンを放出しすぎる傾向にあることから、それを抑制する腎臓への外科手術が存在することも紹介した。番組に登場したドイツの高血圧患者は、215あった最高血圧が術後に140まで低下した。

 中でもクローズアップされたのが腎機能と「寿命」の関係だ。番組では、血液中に含まれるリンという栄養素が老化に大きく影響していると解説。リンは肉や豆類などに含まれる重要な栄養素で、足りなければ様々な病気を引き起こす一方、多すぎると老化を加速させてしまうという。

 同番組に登場した、自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部の黒尾誠・教授が解説する。

「血中のリンの量の調節は腎臓の重要な機能です。腎臓の働きが悪くなるとリンが排泄されなくなり、血液中のリン濃度が上昇する。すると、血管が石灰化して動脈硬化が起こりやすくなったり、全身に炎症反応や細胞障害が発生して老化が加速する。特に慢性腎臓病の患者にはこの傾向が顕著に見られます。つまり腎臓を健康に保つことは寿命に大きく影響するといえるのです」

◆柑橘類の摂取も重要

 では、腎臓を健康に保つにはどうすればよいのか。腎臓の不調は、足や顔のむくみ、体のかゆみや吹き出物として現われる。しかし肝臓と同様に「沈黙の臓器」といわれる腎臓は、そのような不調に気づきにくく、異常が判明した時は「人工透析やむなし」となってしまうケースが少なくない。秋津医院院長の秋津壽男氏が指摘する。

「手遅れを避けるためには定期的な健康診断で尿たんぱく数値を確認すべきです。数値が2+(プラス)を超えたら注意が必要と考えてほしい。

 また、高血圧や体重増は腎臓に負担をかけるため、塩分や炭水化物の取り過ぎには注意したい。腎機能低下を防ぐには、尿からの塩分排泄を促すカリウムを多く含む柑橘類の摂取と、1日1リットル以上の水を飲むことが効果的です」

 老化を促進するリンの過剰摂取も避けるべきという。

「リンは体に必要な栄養素ですが、不足することは少なく、過剰摂取に気をつけるべき。特に市販の冷凍食品には、ポリリン酸やリン酸塩を過剰に含む場合があるので注意です」(同前)

※週刊ポスト2017年11月3日号