画像提供:マイナビニュース

写真拡大

過去にこんなことがありました。私がニューヨークに駐在していた頃の話です。

あるときG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)が、その週末に開催されることになっており、日本ではマスコミがあおったこともあって、今回のG7では、「円高誘導で合意する」と東京市場では話題持ちきりとなりました。

そしてG7が終わった翌日の日曜日、どんな結果だっただろうかと新聞スタンドにニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、そしてワシントン・ポストを買いに行きました。家に戻り各紙広げてみてびっくり。何と、どれにもG7の記事はこれっぽっちも載っていなかったのでした。

つまり、少なくとも今回のG7については米国は全く関心がなく、話題にすらなっていなかったということ。そして、日本では正に金魚鉢の中の嵐のように、限られた中で大盛り上がりを見せていたということでした。

ところが実際は議題にすら載らず、そしてマーケットが再開した月曜日、週末抱えて持っていたドル/円のショートポジションのロスカット的な買い戻しが殺到し、多くの犠牲者を出しました。これはある意味日本が同質社会であるために起こったことだと思われ、大いに反省する余地があると思います。

特にこの件で責任が重いのはマスコミだと思います。良くあることは、彼らが書いた筋書きに世論を誘導するということです。

○限られた中で大盛り上がりをしてしまう理由

今年中国に行って戻ってきて思ったのは、マスコミの原稿の書き方には雛形があって、それに材料となる中国発の情報を埋め込んで文章を作るということでした。つまり、記事の流れは結局、「中国はこうなんだよね」という筋書きが出来上がっていることを強く感じました。もちろん、言論統制ではありませんが、話の落としどころは決まっているように思いました。

こんなことも最近ありました。まだ可能性は低いですが、米国やECBに利上げの可能性が出ていて、しかも市場には連動性がある以上、日本の緩和解除の可能性は、リスクとして考えておかなければならないということでした。しかしこれをマスコミに「荒唐無稽だ」と一蹴されそうになりました。

けれども、少しでもリスクがあるとしたら見逃してはならないのがトレーダーの仕事です。また今回の場合、米国は年内、ECBもそう遠くない将来に利上げの可能性があります。現状、10年物のドイツ国債と日本国債の利回り格差は0.38%ぐらいしかありません。しかも、今回の大幅緩和の原因はリーマンショックにありましたが、日本は20年前のバブルの崩壊を経験していたためにリスクに慎重です。今回、それ程のダメージは受けていませんでしたが、ヨーロッパはダメージをもろに食らいました。

そんな状況なのに、ECBが利上げをして日本ができないという方がおかしな話のように私は思います。リスクに敏感で、身構えていればそれ程の影響は受けません。

しかし自分たちの心描いたストーリーで話を、中国の例のようにはめ込んでいくことは大変危険だと思います。日本が東日本大震災のときの福島第一原発での「想定外」の事故で相当なダメージを受けたことは、まだ記憶に新しいと思います。

つまりは軟性を持つことが大事であり、想定という枠に押し込んでしまうことは厳に慎まなければならないと思います。特に日本人は現状維持を好みますので、手遅れにならないように脇を締めることが大事だと思います。

※画像は本文とは関係ありません。

○執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。