【インタビュー】ワールド・ウォー・ミー「正気じゃない自分を経験し、理解して克服する」

写真拡大

1990年代のポップ・パンクやマイ・ケミカル・ロマンスに影響を受けたスティーヴン・クライペル(vo)による5人組ワールド・ウォー・ミーが、バンド名を関したアルバムでデビューする。ロックの激しさと焦燥感と、ポップでキャッチーなメロディーが同居する彼らの曲は、どれも一度聞いたら忘れられない。そのメロディーに乗る実体験を綴ったリアルな歌詞も魅力的だ。イリノイ州のシカゴで暮らすスティーヴンが、電話取材に応じてくれた。

◆ワールド・ウォー・ミー画像

──遂にデビュー・アルバム『World War Me』がアメリカだけでなく日本でもリリースされますが、今はどんな気分ですか?

スティーヴン:最高の気分だね。このアルバムの制作には5年かけたからね。それが世界的に発表されるって事実にも圧倒されているよ。クレイジーだ。

──バンド結成の経緯から教えていただけますか?

スティーヴン:最初にゲット・スケアードのニック・マシュー(『World War Me』のプロデューサー)と、ツイッターを通じて出会ったんだ。彼がX-BOXを無料でくれる人を探してたんだけど、俺が自分のデモCDが入ってるX-BOXを持ってたんだよ。だから「こいつは一石二鳥!」と思って、彼に俺のデモとX-BOXをあげたんだ。そしたら、そのデモを彼がすごく気に入ってくれた。5年半ぐらい前の話だよ。それからずっと、俺達はワールド・ウォー・ミーの曲作りをやってる。俺はゲット・スケアードの大ファンで、彼らの音楽を聞いて育ったんだ。ニックは、ちょうどプロデューサーとして仕事を始めることを望んでいたから、彼が本格的にプロデュースをやったバンドは俺達が初だと思う。

──その後、どうやってメンバーを集めたんですか?

スティーヴン:ニックが、リズム・ギターのジョニーに電話して、このバンドに参加したいか聞いたんだ。ジョニーは「イエス」って言ってくれて、ニックが他に誰かミュージシャンを知らないかって聞いて、ジョニーが色んな人に電話をかけて回ってメンバーが集まったんだ。彼らに会って、彼らの能力に圧倒されたよ。それでバンドを始めたんだ。2016年のことだよ。

──ちなみにその時、あなたは何歳だったんですか?

スティーヴン:23歳だね。

──ということは、10代の頃からこのアルバムを作り始めてたんですね。

スティーヴン:ああ。だから本当に長いプロセスだった。始めた当初に比べたら、人としてもソングライターとしても大分成長したよ。

──デビュー・アルバム『World War Me』は、最高にキャッチーでポップであると同時に、エッジーでダイナミックでエネルギッシュなロック・アルバムで興奮しました。あなた自身は、どんなアルバムになったと感じていますか?

スティーヴン:アルバムのサウンドは間違いなくポップだよ。俺がこのプロジェクトを始めた時、自分がどんなタイプのソングライターなのか気付いたことがあった。歌詞で俺が語ることは、何か意味のあるものにすることができる。だから、可能な限り正直で、可能な限り良い歌詞を書きたかった。でも、本当に歌詞を聞いてもらうためには、その人の頭にこびりつく楽曲にする必要がある。この二つをひとつに合わせようと試みたんだ。「俺はポップより上だから、ポップなんかやらねえ」っていう傲慢なロック・バンドにはなりたくなくてさ。ポップより優れている奴なんていないからだよ。ポップ・ミュージックが優れているのには、理由がある。頭に残って離れないから人々はポップを好むんだよ。

──同感です。

スティーヴン:ポップ・パンクの基本もそこから来てると思う。だから俺はキャッチーな曲を聞きたいリスナーに曲を提供するって、ビビらずに言うよ。メロディが彼らの頭の中に残れば、歌詞も覚えてもらえる歌ってもらえると思うから。一緒に歌ってもらって、俺が言ってることを分かって欲しいと思ってるんだ。あと、アルバムのギターとかインスト部分は、サム41、ブリンク182、マイ・ケミカル・ロマンスからの影響が沢山入っている。俺は特定のジャンルを念頭に置いて曲を書くことはしない。ただキャッチーな曲を書くことを試みてて、その中でこうした影響が音楽に自然と反映されるんだ。

──「World War Me」があなたのお気に入りの曲のひとつで、この曲を書いた時にあなたはダークな場所にいたとYoutubeで語っていましたね。

スティーヴン:「World War Me」は4年半前に書いた曲なんだ。俺が育った家庭にはずっと暴力があった。深刻な精神の病を抱えた兄弟がいてね。彼は養子なんだけど、いつも暴力をふるっていたんだ。ナイフを投げたり、俺の両親の喉元にナイフを突きつけたりしてね。そういうことが何度もあって、いつ刺されてもおかしくない状況だった。そういう類いのことが俺の身にも起こったことがあって、トラウマになった。その翌日に父が脳卒中で倒れた。その後意識が回復したけど、もう昔の父には戻れなかった。俺にとって、父は常に頼れる存在でずっと尊敬していた。あの父はもういないんだって気づいて、それで俺は本当におかしくなった。毎日毎時間も呑み続けた。朝の11時から夜11時まで呑んでたと思う。でも、ある日、家の地下室にこもろうって決めて、一切呑むのを止めたんだ。その地下室は薄暗くてさ、文字通りダークな場所にいたんだけど(苦笑)、そこに4日こもって、水とポテトチップの袋だけでしのいで「World War Me」を書いたんだよ。俺がその時にやっていたこと、その苦闘についての曲をね。その時の俺は、死にたいと思っていた。もう終わりにしたいと思ったんだ。でも、この曲を書くことで別の人格が出て来て、そんな自分と向き合った。自分自身と戦争をしたことがこの曲になったんだよ。俺はこの曲の歌詞をどうやって書いたか覚えてないんだ。4日間寝てなかったからね。おかしくなってたから、その時に俺が頭の中で何を考えてたのかは分からない。でも、この曲が俺の中から出て来た。そして結果的に、俺は、よりいい人間、より強い人間になれたんだ。だからこの曲は、俺にとってすごく大事な曲なんだ。

──すごくエモーショナルで感動的な曲だと感じていましたが、今の話を聞いて、より好きになりました。

スティーヴン:ありがとう。

──今はもう、大丈夫なんですか?

スティーヴン:ああ、なんとかやってるよ。俺はいつもちょっとピリピリしてるしちょっと調子が狂ってるけど、それはミュージシャンにはつきものだからさ。正気じゃない自分を経験して、それがどこから来てるのかを理解して克服する。それが、ミュージシャンとして俺がやってることなんだ。これが唯一の生き方なんだ。

──「War Zone」も同じようなテーマの曲になっているんでしょうか。

スティーヴン:そうだよ。それも地下室にこもってた4日間で書いた曲だと思う。これは、ある特定の人に向けて書いた歌詞なんだ。俺の中に二人の人格がいて、俺は、自分自身に話しかけてるんだ。「お前、どうしたんだ?」って問いかけてて、そういう状態になってる自分を責めてる。俺が当時の俺を受け入れて、その自分を克服して前に進むことを決意するのか、そのまま常に酒の影響下で、全く生きてない人生を送り続けて、病んだ世代の一員になるのか、どちらなんだっていう曲なんだ。この曲は、今のアメリカの政治についてと思う人が多いけど、政治的な曲じゃない。この曲も、鬱になってアルコールを過剰に摂取してた時期を乗り切ったことについての曲なんだ。でも、皆が彼らなりの意味を曲から受け取ってくれるのは大好き。他の人達は俺じゃないから、聞く人によって曲が違う意味になるのは最高だ。それぞれの解釈をするってことは、彼らがその曲を本当に気にしてくれてる証拠だからね。他の人にとっては、ドナルド・トランプがアメリカでクソ野郎になってることについての曲にもなるんだよ。

──私が気に入った曲「Color Me Sick」では、普段は尖っているあなたのボーカルの美しい面が披露されています。この曲についても教えて下さい。

スティーヴン:「Color Me Sick」はかなり前に書いた曲だよ。4年半前にニックとレコーディングしたんだ。その時のものを、そのまま収録した。酷い経験をしてたあの当時、俺はガールフレンドと別れたんだ。彼女は、俺がいない間に俺の親友と寝て、他の奴らとも寝てた。だから「Color Me Sick」は、彼女の顔面に「ファック・ユー」って叩きつけている曲なんだよ。それを言うのに、すごく優しくてクリーンなボーカルで歌うって、すごく面白いと思ったんだ。普段の俺はラウドでアグレッシブだから、それとは真逆の優しい美しい声で「クソ食らえ」って歌うことで、俺はハッピーな気分になった。だから、皮肉なんだよ。こんな風に俺が歌ったら、元彼女はこの曲を好きになったはずだから(笑)。この曲は長いこと聞いてない。聞くのは、挑戦になると思うね。

──このバンドで達成したい最大の夢はなんですか?

スティーヴン:俺の最大の夢?現実的な夢としては<ワープト・ツアー>に出演することかな。それから、日本に行ってプレイしたい。マイ・ケミカル・ロマンスが日本でビッグなのを知ってるし。彼らが日本が素晴らしい場所だって言っている取材記事を読んだんだ。アヴリル・ラヴィーンも日本は最高だって語っていた。だから、日本に行って最高の時間を過したい。日本の人達は、すごく音楽に情熱を持ってくれているよね。日本のファンは大好きなバンドを追いかけるし、長年、バンドを支えてくれる。俺達の音楽も、皆が大好きになってくれることを願っているよ。だから最大の夢は日本に行くことだよ。そういえば、ONE OK ROCKって、日本のバンドだよね?

──ええ、ONE OK ROCKを知ってるんですか?

スティーヴン:大好きなんだ。今、一番好きなバンドのひとつだよ。ONE OK ROCKのメンバーに「君達は最高にクールだ!」って伝えたい。<ワープト・ツアー>で彼らを観たんだけど、俺の人生で最高のショウの一つだったよ。彼らは素晴らしいね。

取材・文:鈴木美穂
Photo by Bryce Hall

ワールド・ウォー・ミー『ワールド・ウォー・ミー』
2017年10月20日発売
【完全生産限定スペシャル・プライス盤CD】¥1,800+税
【通常盤CD】¥2,300+税
※歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ザ・グッド・イナフ
2.ドント・ホールド・ユア・ブレス
3.ミスター・ミザリー
4.エイク・フォー・アゴニー
5.ブレイク・ア・レッグ・キッド
6.エスケープ feat.ニコラス・マシューズ [from ゲット・スケアード]
7.ファイアー・アンド・フレイムス
8.ザッツ・ソー・イエスタデイ
9.ウォー・ゾーン
10.リヴ・ウィズ・アワセルヴス
11.フロム・ザ・フィア
12.ワールド・ウォー・ミー
13.カラー・ミー・シック

【メンバー】
スティーヴン・クライペル(ヴォーカル)
チャーリー・ハリス(リード・ギター)
ジョナサン・ワトソン(リズム・ギター)
ショーン・デイリー(べース)
ジョー・カス(ドラムス)

◆ワールド・ウォー・ミー『ワールド・ウォー・ミー』オフィシャルページ