キレのある動きで2ゴールを奪った中村。初の選手権に向け、状態は上向きだ。写真:吉田太郎

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 世代を代表するゴールハンターが初めて“憧れ”の選手権に挑む。

 青森山田は10月22日、高校選手権の青森県予選決勝で八戸学院野辺地西に11-0で圧勝。とりわけ、J2のモンテディオ山形入りが内定するU-18日本代表FW中村駿太は、左サイドから馬力のある動きを見せた。DFふたりの間を割り込んで強引にシュートを決めるなど、持ち味を存分に発揮。2得点・1アシストの活躍でチームの勝利に大きく貢献した。
 
 中村は今年3月に青森山田への加入を決断するまでJ1の柏レイソルの育成組織に所属していた。小学生時代から各種大会でゴールを量産して“柏のロナウド”と注目されたストライカーである。昨年のAFC U-19選手権でU-19日本代表に17歳ながら“飛び級”で招集され、準決勝で2得点を決めるなど年代別日本代表でも活躍してきた。
 
 だが、“移籍”で注目された一方、青森山田では満足のいく結果を残すことができていない。運動量などの課題を改善し、試合では献身的な姿勢を貫いてチームに貢献しているが、3回戦で敗退した夏のインターハイは2試合で無得点。プレミアリーグEASTでも15節を終えて5得点に終わっている。
 
 本人は「チームが変わって難しい面もあったんですけれども、夏が終わって冬に入って、『もう言い訳できないな』というところがあった」と口にする。必要なのはゴール。結果にこだわり過ぎて力まないように、自分らしいプレーを続けて、それをゴールに結びつけたいと考えていた。
 
 後半半ばに交代したこの日は、結果を残したとはいえ悔しさを滲ませた。チームメートのMF郷家友太(神戸内定)が4得点を決め、中村の2得点が霞む結果になったからだ。それでも、最も注目度の高い選手権でゴールを量産できれば、間違いなくインパクトを残すことができる。大言を口にすることはないが、「早く1点取れれば絶対に乗っていけると思う」と選手権で大暴れするという意気込みは言葉の端々から感じ取れた。
 また、そう思うのには、もうひとつ理由がある。選手権は憧れの舞台だったからだ。U-19日本代表でチームメートだったFW岩崎悠人(現京都)やMF原輝綺(現新潟)、そしてDF杉岡大輝(現湘南)。彼らが出場した昨年の選手権1回戦、市立船橋対京都橘戦をフクダ電子アリーナで観戦した。

「テレビで見ていても、ナマで見ても本当に凄い人、『いいなあ』という憧れだった」

 あれから1年。大舞台に立つ権利を手にし、今度は自分が活躍する番が回ってきた。
 
 当初は中村について、「できないことが多すぎる」と指摘していたという黒田剛監督も、「レイソルにいた頃に比べれば身体も絞れたし、運動量も多くなったし、本人は成長を感じていると思う。彼は最後の選手権。そのために転校してきたと思うので、大いに活躍してほしいなと思います」と成長を認め、全国での活躍を心待ちにする。
 
 期待に応え、中村は高校サッカーファンの視線を釘付けにすることができるか。

「自分自身が立ってみないと分からない雰囲気があると思うので、分からないところもあるけれど後悔したくないので楽しみたいなと思います」

 笑顔で語ったストライカーが、現在何よりもこだわっている結果を残して青森山田を連覇へ導く。

取材・文:吉田太郎