【コラム】なでしこ、課題と光明の完封勝利…“完成形なき”理想の追求は続く

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 22日に行われた女子サッカーの国際親善試合「MS&ADカップ2017」で、なでしこジャパンはスイス女子代表に2−0と勝利を収めた。順当な結果だろう。

「スイスの2人のエース(ラモナ・バッハマンとラーラ・ディッケンマン)がいたら勝ち切れたかなと、少し疑問に感じます」

「“世界一を獲る”と言い切るには、まだまだ力が足りないと思います」

 試合後に高倉麻子監督が吐露した心情も含めて、これが今のなでしこの実力だ。

 キャプテンを務めるDF熊谷紗希は「前半は相手のボールが予想以上に伸びてきた。(中略)それでも裏へぶっちぎられるようなことはなく、前で跳ね返せたと思います」と一定の手応えを語った。だが課題は、(熊谷は参加しなかった)今夏のアメリカ遠征などで露呈したとおり、横に大きく揺さぶられると脆いことだ。今回のスイス戦でも、ゴールエリアを横断するような逆サイドへのパスを出されたシーン(35分)は、相手のシュートが枠を外れて命拾いした。

 攻撃については、「組み立てのところでテンポがなかなか上がらなかった。やってきた(取り組んできた)けれど、出し切れなかったかなと思います」と、指揮官の評価は厳しめだ。それでも「ただ選手同士は感じ合って、連動して(中略)それぞれの個性を出せそうかなという雰囲気があったので、やり込んでいくしかないと思います」(高倉監督)と、チームに差し込む光明を言葉にした。

 選手たちの狙いが実を結んだのは70分。先制点をアシストしたMF櫨まどかは「前半は相手の守備がタイトだったけれど、後半は足が止まってDFがかぶるようなシーンが多くなった。そのタイミングで中島(依美)選手が走ってくれた」と、受け手と噛み合ったシーンを振り返った。

 櫨は29歳にして代表初選出という、いわば“オールド・ルーキー(遅咲きの新人)”だ。高倉監督は試合後の会見で、彼女についてメディアから質問を受けると(どの選手にも期待を込めていると前置きしつつ)「ボールが収まる。タメを作ってシュートまたはラストパスを出すセンスの高さを感じている。国際試合で戦うレベルに達している。核になってほしいと思うぐらい」と、矢継ぎ早にポジティブな評価を語った。そして櫨は12月に千葉市蘇我球技場(フクダ電子アリーナ)で開催されるE−1選手権(旧東アジアカップ)に向けて「代表経験が少ない分、フレッシュに、思いっきりぶつかっていくだけだと思います。なでしこリーグでの経験を生かし、体を張ることや、日本のずる賢さとかをプレーに出していきたい」と抱負を述べた。

 なお高倉監督は、チームが目指す攻撃のスタイルについて「ポジションにとらわれず自由な絵を描けるように」「勇気を持って、小回りの効いたプレー、相手の心を感じたパスを通してゴールに向かっていく」「見る人が本当に思い切りガッツポーズをするようなゴールに期待している」と情緒を交えて表現する。つまりはパターン化されない、アドリブ要素の強い攻撃。完成させるにはおそらく時間がかかるし、そもそも完成形が「こんな形だ」と限定することもできないだろう。たどり着けないまま大きな大会を迎えてしまう可能性だってある。

 もちろん、ある程度の形の備えもおろそかにはしない。「あうんの呼吸とか必殺のホットラインも持っておくべき。それはセットプレーかもしれない。通用するひとつの形を持っておくことは強みになるので、そこも作っていきながら(自由な攻撃を目指す)ということになると思います」(高倉監督)。

 選手たちがこの高い要求に応えるためには、局面局面において多くの経験を積み重ねることが必要になる。E−1選手権で「見応えのある局面」「先々に生かされる局面」を数多く生みだすことが期待される。

取材・文=江橋よしのり