今季の開幕前、ダントツの降格候補と予想されていた北海道コンサドーレ札幌がJ1残留を実現しようとしている。


2試合連続で2ゴールを叩き込んだ札幌のFWジェイ

 10月21日に味の素スタジアムで行なわれたFC東京戦で、札幌はFWジェイの2ゴールで2-1と勝利を挙げて2連勝。今季初のアウェーでの白星で勝ち点を34に伸ばし、降格圏となる16位のサンフレッチェ広島との差を7ポイントまで広げた。残り4試合であることを考えれば、残留に大きく前進したことは間違いない。

 立ち上がりから札幌は積極的だった。2分にエースのFW都倉賢がポスト直撃のシュートを見舞うと、5分にはキャプテンのMF宮澤裕樹が惜しいミドルを放つ。7分にも都倉がセットプレーからあわやというヘッドでゴールを襲うなど、FC東京を自陣に釘づけにした。

 今季の札幌はアウェーでめっぽう弱かった。このFC東京戦を迎えるまで、ホームでは8勝4分3敗と結果を出す一方で、アウェーでは3分11敗と散々な出来。この内弁慶ぶりが残留争いを強いられた最大の要因となっていた。

 なぜ、アウェーで勝てないのか――。それは失点を恐れる意識が強すぎ、腰が引けた戦いになってしまうことが原因だった。しかし、この日は違った。

「今日はホームのように、しっかり前からいくという決まり事を持って試合に入った。それが前半からできたと思います」

 3バックの一角を担うDF福森晃斗は、そう説明する。その積極性が序盤の猛攻を実現し、試合の流れを掴むことに成功したのだ。

 では、なぜその姿勢をこれまで打ち出せなかったのか。それは、経験値の不足による部分が大きいだろう。

「開幕当初は会場の雰囲気だったり、相手のネームバリューに圧倒される部分があった」

 都倉はそう説明する。

「でも、J1にも慣れて、結果がもたらす自信を積み重ねられている。前回のアウェーの広島戦でも先制されたけど、慌てることなく安定感を持った戦い方ができていた。だから、アウェーでも勝てるという自信はありましたし、実際に今日は最初から相手を圧倒できた」

 昨季までJ2だった札幌には、絶対的に経験が足りなかった。しかし、J1で粘り強く戦い、勝ち点を積み重ねるなかで、「やれる」という手応えを掴んでいったことは想像に難くない。それはホームでより生きていたが、残留争いが本格化したシーズン終盤になって、アウェーでの戦いでも生かされるようになってきたのだ。

 都倉は言葉を続ける。

「自信に加えて、ナオ(石川直樹)さんやジェイといった、J1でやってきた選手たちが結果を出すノウハウや影響力をチームにもたらしてくれている。ポイント、ポイントで選手を補強したことで、今までのベースにピースが上積みされた印象を受けています」

 今季の札幌はシーズン途中に、ジェイ、MFチャナティップ、DF石川直樹と3人の即戦力を補強。いずれもレギュラーとしてプレーしており、確実にチーム力の向上を実現するファクターとなっている。

 なかでも、最大のヒットはジェイだろう。昨季までジュビロ磐田でプレーしたこの長身ストライカーは、半年間のブランクを経て今夏に札幌に加入。しばらくはサブ扱いで得点も少なかったが、このシーズン終盤に大爆発。前節の柏レイソル戦で2ゴールを奪うと、FC東京戦でも47分と59分にゴールを叩き込み、2試合連続2ゴールの離れ業(わざ)で札幌にアウェー初勝利をもたらしたのだ。

 このジェイをはじめ、札幌には一芸に秀でた選手が揃う。ジェイの高さと強さは圧倒的だが、都倉にも同様のストロングポイントが備わる。また、チャナティップは「タイのメッシ」の愛称もうなずける小気味のよいドリブルで、とりわけカウンター時に相手に脅威を与える。

 福森のプレースキックも札幌の大きな武器だ。7月の第18節・大宮アルディージャ戦で試合終盤にフリーキック2発を叩き込み、チームに勝ち点をもたらした彼の左足は、この日もジェイの先制ゴールを正確なプレースキックでお膳立てしている。

「トクさん(都倉)やジェイがいるので、高さは分(ぶ)がある。自分はキッカーなので、しっかりそこに合わせることができれば、今日みたいに点が獲れる。そこが今はうまくはまっているのかなと思います」

 福森はそう説明したが、たとえ劣勢でもセットプレーひとつで流れを変えられるのが、今の札幌の強みと言えそうだ。

 また攻撃だけでなく、守備の粘り強さも札幌の特徴だろう。FC東京の攻撃が迫力を欠いたこともあるが、2点を奪うまではほとんどピンチを与えず、猛攻を受けた終盤も身体を張った守備で、相手の反撃を1点に抑えている。

「ある程度、自分たちの前で回されるのはわかっていたので、いかにゴール前で身体を張れるか。90分を通してやり切ることができた」

 先制点の起点となるだけでなく、守備でも存在感を示した福森は、会心の勝利に胸を張った。

 個性的なスタメンだけでなく、サブメンバーも盤石だ。MF小野伸二、MF稲本潤一、MF河合竜二と、経験豊富なアラフォーがベンチに控えているのはなんとも頼もしい。この日は稲本が途中からピッチに立ち、カウンターのピンチで相手のシュートチャンスを阻止するなど、逃げ切りに貢献している。

 開幕前の順位予想で、筆者は札幌を最下位に予想した。昨季のJ2の戦いを何度か見る機会があったが、「守備は堅いが、点が獲れないチーム」という印象を抱いていた。過去にも同様のスタイルでJ1に上がってきたチームが、ストロングポイントだったはずの守備が通用せず、1年でJ2に舞い戻るケースがあったことが順位予想の裏づけだった。

 しかし、今の札幌のストロングポイントは決して守備だけではない。圧倒的な個性こそが、彼らの躍進の礎(いしずえ)となっている。その強みがあるかぎり、来季も北の大地にJ1の舞台はとどまり続けるだろう。

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