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ルポライターの中村淳彦さんによるAV女優のインタビュー集「名前のない女たち 貧困AV嬢の独白」(宝島社)の出版とその映画化をめぐり、取材を受けた女性がまったく知らされていなかったとして抗議の声を上げている。本書は中村さんが雑誌に掲載した記事を中心に今年1月、出版したもので、AV女優18人が登場、その生い立ちなどが書かれている。

しかし、本書の映像化が進んでいることがTwitterで話題となり、取材を受けた一人で、AV女優のかさいあみさんが9月7日、「名前のない女たちは、AVに出てる女優を面白おかしく不幸に書いてそれを勝手に書籍化して、1円も女優には還元されず映画化。中には書籍化されるのも知らない子もいて、自宅に本が送られ、親バレした子もいる。どういうつもりなの??馬鹿にしないでほしい」とTwitterに投稿、波紋を呼んだ。

かさいさんのTwitterによると、かさいさん自身や他の女性たちが書いて欲しくないと伝えた個人的な情報が原稿に含まれていた他、事前チェックも求めたが無視されたという。女性たちには、取材に対する謝礼や、書籍の印税なども支払われていないとのことだった。

著者や出版社が、オフレコ情報を含むインタビューを出版したり、映像化したりすることに法的な問題はないのだろうか。女性問題に詳しい松田有加弁護士に聞いた。

●内容によっては名誉毀損やプライバシー権侵害の可能性も

取材対象者が伏せておきたかった個人的な情報が、無断で雑誌記事に書かれてしまった場合、著者や出版社はどのような責任に問われるのだろうか。

「出版社は、取材対象者の同意があれば、取材対象者から聞き取った情報を自由に公開することができますが、非公開にすることを約束していた情報を公開してしまった場合には、その内容次第では名誉毀損やプライバシー権侵害に該当し、損害賠償責任などの法的な責任を負うことがあります。

取材の内容によっては個人の名誉やプライバシーに深く関わることもありますので、出版社としては、取材対象者から、取材(情報の収集)についての同意を得るだけではなく、情報の開示・公表についての同意も得ておかなければなりません」

例えば、最初は雑誌の記事として掲載されたものを、その後、取材対象者の許諾なく出版はできるのだろうか?

「あらかじめ取材対象者との間で、情報の公開範囲についての取り決めがなされている場合を除き、何らかの責任に問われる場合は少ないと考えられます。

『雑誌』と『書籍』という発表形態の違いはありますが、両者の流通範囲には通常大きな差異はないと考えられますので、書籍としての出版についても取材対象者の承諾があるとされる可能性が高いと考えられるからです。そのため、書籍化に際して、当初の記事の内容を取材対象者の意に反して改変するようなことがない限り、出版社に対して何らかの法的請求をすることは難しいでしょう」

では、一般的に書籍を映像化する際、書籍に登場する取材対象者の許諾は必要になる?

「映像化についても、書籍化についてと同様であり、取材対象者が公開に同意していた場合には、映像化に際して、再度取材対象者の許諾を取る必要はありません。なお、著作権の観点からしても、雑誌や書籍の記事についての著作権は出版社や著者にあることが通常ですので、取材対象者の同意を得ることなく映像化を行うことができます」

しかし、取材対象者が伏せておきたかった情報が掲載された書籍が映像化された場合でも、著者や出版社、映像の製作者は責任に問われないのだろうか。

「やはり一番重要なポイントは、『取材対象者から公開についての同意を得ているかどうか』です。著者は、非公開にすると取材対象者に対して約束していた情報を公開した場合、損害賠償責任を負う可能性があります。また、出版社及び映像制作者としても、非公開にすることを取材対象者に約束していたことを知っていた場合などには、出版・映画化に伴って、損害賠償責任を追及される可能性があります」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
松田 有加(まつだ・ゆか)弁護士
子どもの権利擁護に強い関心があり、弁護士になる前、児童養護支援施設や法教育の授業に関わる活動を行う。特に芸能界で頑張る子どもや女性の助けになりたいという強い思いを持ち、何でも相談しやすい弁護士であることをモットーに、誠実に職務に取り組む。知的財産権、インターネット上の法的問題等を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/