ハリルの“秘密兵器”!? 浦和MF長澤に「攻守のプレーのボリューム」が生まれた舞台裏

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ペトロヴィッチ前監督時代の“不遇の時”を乗り越え、出場機会は徐々に増加

 来年のロシア・ワールドカップ本大会への出場を決めた日本代表に、新たな“秘密兵器”が誕生するかもしれない。

 バヒド・ハリルホジッチ監督は、22日に行われたJ1第30節の浦和レッズ対ガンバ大阪戦を視察。浦和レッズのMF長澤和輝を「攻守にプレーのボリュームがあった」と絶賛し、ブンデスリーガのケルンで若き日々を過ごした25歳にスポットライトが浴びせられている。

 長澤は専修大から2013年冬にケルンへ移籍。当時ドイツ2部で戦っていたチームで1部昇格を果たしたが、左膝靭帯断裂のアクシデントに見舞われた。結局、1部での試合出場は計11試合にとどまり、2015年12月に浦和が完全移籍で獲得。1年間をJ2ジェフユナイテッド千葉で過ごし、晴れて今季から浦和でプレーしている。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督体制下では出場機会に恵まれず、天皇杯では本職の中盤とは異なるストッパーを務めたこともあった。長澤自身は「それがプレーの幅を広げたのか分からないけど、良い経験にはなりました」と回顧。半年近い“不遇の時”にも、「ケルンから日本に戻る時に声を掛けてもらった恩義が浦和にありますから」と、紅白戦でBチームが日常になりながらも一切不満を漏らさず、チームのためにトレーニングを積んだ。

 そうした中で、7月末にコーチから昇格した堀孝史新監督となってからは出場機会を掴み始めている。特に、18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝の上海上港(中国)戦では、アジアサッカー連盟(AFC)公開のデータでデュエル企図数が25回と両チーム最多で、空中戦を含めて15勝10敗と強さを見せていた。元ブラジル代表MFオスカルに当たり負けせず、いかにもハリルホジッチ監督“好み”の選手という印象が強い。

「ストロングポイントは重心が低いこと」

 対戦したG大阪のインサイドハーフは、10月シリーズで招集されたMF倉田秋とMF井手口陽介。“比較材料”として、ひとつのモノサシとなる試合だったと言えるだろう。長澤はこうしたハリルホジッチ監督の発言を受け、「見てくれているのは嬉しい」と話しながらも、「まずはチームで良いプレーをすること」と冷静に現状を分析した。

 G大阪戦は台風21号が接近する中で開催され、試合前から大雨が降り続く中でのゲームだった。スリッピーな状況でもバランスを崩すようなことがなかった長澤だが、そこにはブンデスリーガ、そしてケルンでのプレー経験が生きているという。

「ドイツの方が、ピッチは比べ物にならないほど緩いんです。だから、僕は今日の埼スタのピッチがそんなに緩いとは思わなかった。ドイツの芝は粘り気もあるし滑りやすいんですけど、そこに慣れてくると滑らなくなってくるんです。背が小さい自分のストロングポイントは重心が低いこと。それを発揮していくのが相手にも嫌なことになりますからね」

 悪天候の中でも馬力と安定感があり、低い重心でボールも運べる。インサイドハーフを組んだMF柏木陽介も「カズキはボールを持ち運べるし、タメを作れる」と長所を挙げる。浦和にとって日本代表の欧州遠征(11月10日ブラジル戦・14日ベルギー戦)はアル・ヒラルとのACL決勝直前となるが、初戦(11月19日)がアウェーだけに欧州遠征に参加して、そのまま浦和の合宿地と見込まれるUAE入りというスケジュールは十分に考えられるだろう。

 ハリルホジッチ監督が「ナガサワは攻守にプレーのボリュームがあった。私にとって良い発見だ。次の合宿に呼ばれてもおかしくない」と絶賛するほどの急成長を見せる25歳が、日本代表の中核ポジションに殴り込みをかけられるか注目だ。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images