選挙期間中に5党の代表が街頭演説をした池袋駅前。西口で演説する候補者らと聴衆(記者撮影)

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選挙期間中に5党の代表が街頭演説をした池袋駅前。西口で演説する候補者らと聴衆(記者撮影)

超大型の台風21号が迫る中で投票日を迎えた今回の衆議院選挙。各党・各候補者が激戦を繰り広げた中で、通勤途中の駅前や街角で聞いた候補者や各党幹部などの街頭演説を投票の参考にしたという人も多かっただろう。

選挙の演説が行われる場所というと、代表的な場所として思いつくのが大規模ターミナルなどの駅前。鉄道利用者が多くない地域の場合は、大規模商業施設付近や交通量の多い交差点などであることも多いが、人が集まる場所として「駅前」は選挙戦でも重要なポイントには違いない。

そこで、今回の衆院選で各党の代表が全国のどんな駅前で街頭演説を行ったかを集計し、「訴え」の場としてどこが選ばれたのかを調べてみた。

各党代表はどこで演説したか

集計の対象期間は公示日の10月10日から21日まで。対象とした政党は、自由民主党、希望の党、公明党、共産党、立憲民主党、日本維新の会、社会民主党、日本のこころ(順番は公示前議席数順)。街頭演説場所の調査は、各党公式サイトやSNSで公開されている情報を基本とし、サイトで公表していない場合など不明点は各党に取材した。自民党の安倍晋三首相については、新聞各紙掲載の「首相動静」も参考にした。

今回の衆院選で、各党代表が訪れた都道府県の数を集計すると、計38都道府県。どの党の代表も演説に訪れなかったのは、福井・石川・和歌山・徳島・愛媛・高知・鳥取・島根・山口の9県だった。最も多くの都道府県を回ったのは自民党の安倍首相と希望の党の小池百合子代表で、ともに22都道府県。次いで共産党の志位和夫委員長が19都道府県、立憲民主党の枝野和夫代表が17都道府県の順だった。

では、各党代表が演説に「集結」した駅前はどこだったのだろうか。1人が複数回演説を行った場合をカウントせず、1人(1党)1カ所1回として数えた場合、最多となったのは首都圏のターミナル駅ではなく、東北地方最大の都市・仙台の玄関口である仙台駅前。宮城県内の小選挙区に公認候補を立てなかった社民党を除く7党の代表が少なくとも1回、同駅付近で街頭演説を行っている。2回行ったのは自民の安倍首相で、同じ日に駅周辺を練り歩き、2カ所で演説している。

特に集中していたのが、同駅西口の「AER(アエル)前」。JR仙台駅から徒歩2分の場所に立地する、地上31階・地下3階の複合施設だ。同駅付近で演説を行った7党の代表のうち、東口で演説した日本のこころの中野正志代表以外の6人がこの場所を選んでいた。

どんな場所なのか。仙台市内在住の男性は「駅前のメインアーケードである『名掛丁』の入り口でもあって人通りが多く、建物の前がデッキになっているので上からも見やすい場所」。多くの人にアピールする選挙演説の場所としての条件を満たしているといえそうだ。

東京では池袋が人気スポット

仙台駅前に次いで多かったのは東京の大ターミナルである池袋駅前と、大阪のなんば駅前。池袋は自民・希望・共産・立憲・こころ、なんばは自民・希望・共産・立憲・維新のそれぞれ5党の代表が演説を行った。

東京都心のターミナル駅としては新宿・渋谷・池袋がビッグ3だが、今回の衆院選では、新宿駅付近で演説を行ったのは希望・共産・立憲の3党、渋谷は希望・共産(「センター街入口」を駅前に含めた場合)の2党で、街頭演説の場所としては池袋がほかを圧倒。1人が複数回の演説を行った場合もすべてカウントすると計8回となり、仙台駅と並んで最多だ。

立憲の枝野代表は西口と東口五差路で各1回、希望の小池代表は西口2回、東口1回の計3回、同駅前で演説を行った。小池氏は公示日の第一声、選挙戦最終日の「最後の訴え」がともに同駅西口だった。両党代表は新宿駅前でもそれぞれ同じ回数、街頭演説を行っている。

なんばは、立憲の枝野代表がマルイ前〜難波駅前、その他4党の代表が高島屋前。大阪府知事である維新の松井一郎代表はなんば高島屋前で、第一声と最後の訴えを含め計3回の演説を行っている。大阪のターミナル駅としては「ミナミ」の中心であるなんばと「キタ」の中心である大阪(梅田)が代表格だが、梅田は希望の小池代表が訪れておらず4党。場所はいずれもヨドバシカメラ前だった。

大阪・梅田と並び、4党の代表が演説を行ったのは博多駅前。公明・共産・維新・社民の4党代表が訪れている。福岡のターミナルとしては、新幹線をはじめとするJR各線が集結する博多駅とともに、九州最大級の繁華街といわれる天神に位置する西日本鉄道の西鉄福岡(天神)駅があるが、同駅付近では希望・公明・立憲・社民の4党代表が演説している。ただし、博多駅の場合は各党とも「博多駅」だが、西鉄福岡駅付近の場合は駅ではなく「天神ツインビル前」または「天神イムズ前」と商業施設の名前で告知していた。

4党以上の代表が演説に訪れた「駅前」は以上の6カ所。東北・関東・関西・九州と各地方の代表的な駅がおおむね顔をそろえているが、入っていないのが北海道と中京圏だ。たとえば北海道の場合、札幌駅付近で演説を行ったのは立憲の枝野代表のみで、同市内で演説を行った自民・希望・共産は地下鉄を除けば駅周辺以外の場所がほとんど。また、中京圏の中心といえる愛知県内では、自民・希望・共産・立憲の4党代表が計12カ所で演説を行っているものの、地下鉄を除けば駅前は名古屋、金山、太田川の3カ所だ。

「駅前率」が高かった党は?

これに対し、たとえば東京都内の場合、各党代表が演説を行った計47カ所のうち36カ所が駅前。大阪府内も、維新の松井代表が各地を細かく回っているため「駅前率」はやや下がるものの、計57カ所中27カ所が駅前だった。当然ながら各選挙区の情勢にも左右されるものの、「人が集まる場所」が駅前であるかどうかの指標とみることもできそうだ。

ちなみに、各党代表ごとに見た場合「駅前率」がもっとも高かったのは共産の志位委員長で、期間中に行った街頭演説などのうち90.9%が駅前。次いで立憲の枝野代表が86.7%で、この2人が特に駅前・駅周辺での演説が多かった。志位委員長は各地方の代表的な拠点となる都市、枝野代表は首都圏や近畿などの都市部を重点的に回っており、これが「駅前率」の高さに結びついているといえるだろう。

終盤は全国的に天候不順が続いた中、各党が激戦を繰り広げた今回の衆院選。各党の活動の中でも、代表の街頭演説は特に注目される大きなイベントだ。全国各地の駅前などで繰り広げられた訴えは、有権者にどのように響いただろうか。