日々、騙し騙されかけひきをくり返す、東京の男と女。

彼らの恋愛ゲームには、終わりなど見えない。

これまで、独身を貫く経営者を追いかける女、男を巡って争う2人の女、弁護士に一目惚れした女とその後輩の攻防、そして互いに想い合いながらも本命のいる男女を紹介した。

今回は、仕事と恋愛関係で攻防を繰り広げる3人の男女。

彼らのかけひきは、誰に軍配が上がるのだろうか…?




web広告代理店で花形部署に所属する一般職・真奈


こんにちは、真奈(27)です。

新宿のweb広告代理店で、一般職の営業アシスタントとして勤務しています。

私の所属する営業チームは、営業の中でも1番の花形部署。メンバーが15人ほどいて、健吾さん(30)というマネージャーが率いています。

彼はとても優秀な人。歴代最年少で社長賞を獲得し、直近も2期連続でチームをMVPに導くなど、目覚ましい活躍を見せています。

チームの女性達はいつも、何らかの発展を期待するような声色で彼に話しかけているのが、目に見えて分かります。(私も含めて、ね)

でもひとりだけ、そうじゃない女性がいます。

それは、総合職の麻子さん。健吾さんの同期です。

正直、彼女が面倒くさい人で困っています。

私は、仕事はそこそこ要領良くこなし、いずれは寿退社…くらいに考えているのですが、彼女は無駄に完璧主義。

「この書類、間違っているよ。お客様に送るものだということを意識してね」

そんな風に、よく私に説教してきます。マネージャーでもないのに、総合職だからって偉そうに…。

だから、30歳になっても貰い手がないのでしょうね。

彼女を疎ましく思う気持ちが増幅していった私は、ある妙案を思いつきました。

―彼女を口実に、健吾さんに近づこう。


麻子を陥れた真奈の手口とは…?


“男尊女子”をうまく活用せよ


「健吾さん、少しいいですか」

健吾さんがミーティングから戻り一息ついたタイミングを見計らって、私は声をかけました。

私の神妙な面持ちに「どうした?」と心配そうに声をかけてくれながら、彼は私を会議室へ連れていってくれました。

「…私、麻子さんとうまくやれなくて…」

震える声で、私は彼女に他の子達よりも妙によく注意されること、その物言いによりモチベーション維持に悩んでいることを打ち明けました。

「それは辛かったね」

健吾さんは私の話にただ同意し、共感してくれた後、話してくれました。

「正直僕も、少し気づいていたんだ。君がしっかり仕事をこなしてくれるからつい頼りにしてしまって、裁量を持たせているのが麻子は気に入らないのかもしれないね」

健吾さんからの思いがけない評価に胸が熱くなり、私は一層目を潤ませてしまいました。

「麻子には、僕からうまく言っておく。それでも彼女が反省しないようなら、チームから外れてもらうことも視野に入れるよ」

そこまで親身になってくれるなんて…。私は、健吾さんの言葉に胸を打たれました。

やはり男性上司に最終的に選ばれるのは、男性をうまく立てられる、今流行りの“男尊女子”ですよね。

麻子さんのように対等にキャリアを張ろうとする女性は、男性からしても疎ましいのでしょう。

「ありがとうございます」

私は丁寧にお礼を言いながら、甘えたように彼に微笑みかけました。



それから1か月後。

麻子さんは、零細企業を主に担当する営業部に異動になりました。

おかげで私は今、毎日快適に仕事にまい進できています(と言っても、アフター6にはきっちり帰宅しますが)。

そしてもう1つ、嬉しい報告があります。

私、晴れて健吾さんとおつき合いをすることになりました。

麻子さんの件をきっかけに健吾さんが気にかけてくれるようになり、ご飯や遊びに頻繁に行くうちに、自然な流れでそうなることができたのです。

全てが目論み通りに運ぶって、こんなに気持ちいいことなんですね。




誰もが認める敏腕営業マン、健吾


健吾(30)といいます。

web広告代理店のアカウントプランナーチームで、マネージャーを務めています。

うちのチームは今月も目標を大幅に超えた達成が見えており、非常に順調です。

加えて最近、部下の真奈とつきあい始め、恋愛の方も順風満帆。

実は真奈のことは、彼女が半年前に僕のチームに配属になった時から意識していました。

すっと斜め上に伸びたぱっちりした目に、少しすねたように尖った唇。一見冷たそうに見える美人ですが、笑うとくしゃっとなる笑顔が非常に魅力的です。

気づけば僕は、秘かに彼女を目で追うようになっていました。

しかし彼女ほどの美人に積極的に声をかける自信は、恥ずかしながらありませんでした。

僕は仕事スキルは高いと自負していますが、特段顔が良いというわけではないし、根が真面目な故に彼女を転がすような度量もない。

さらに仕事で積みあげてきたプライドが、職場内恋愛で失敗することを僕に頑なに拒否させていました。

考えた末に僕は、2つのことを達成するある名案を思いついたのです。


健吾は真奈を手に入れるために、裏で手を回していた…!


僕の作戦は、真奈を手に入れ、麻子を陥れること


それは、同じチームの同期の麻子を利用すること。筋書きはこうです。

まず麻子に、「真奈が最近仕事に手を抜きがちだから、他の子よりも厳しめに注意をしてほしい。信頼している麻子にしか頼めない」と打ち明けました。

麻子は当初、「なぜそれを健吾がやらないの?」「彼女だけを厳しく注意する意味があるの?」と懐疑的な反応を見せました。

しかし僕は引かず、「ああいう受け身タイプの女性には、同性で仕事ができる先輩が叱るのが最も効果的なんだ」とそれらしいことを言って彼女を説き伏せた。

麻子は渋々ながらも、結局はリーダーの僕の言うことを聞き、真奈にそうした接し方をするようになりました。

こうすることで、典型的な末っ子タイプの真奈は、いずれ僕を頼るようになるだろう。万が一頼ってこなくても、タイミングを見計らって僕から声をかけよう。

そして、真奈と関係を深めるきっかけにしよう。これが第1の目的です。

もう1つの裏の目的は、麻子をチームから外すこと。

実は最近彼女、めきめきと営業成績を上げてきていたんですよ。

チームとしては喜ばしいことですが、気づけば僕の成績を抜きかねないほどの脅威になっていました。

マネージャーの僕が同期といえど部下に、ましてや女性に負けるなど、とても面目が立ちません。

それに成績に伴い自信をつけてきたのか、前よりも僕に対等に意見をしてくるようになっていたのも、疎ましかった。

だから麻子のことで真奈から相談を受け、人事に報告できる状況をつくり、麻子を異動させることを目論んだのです。



案の定、真奈は僕に相談を持ち掛け、僕はそれを口実に人事に働きかけ、麻子を異動させることができました。

共通の敵をつくると結託しやすくなるのは、ダークサイドスキルの基本ですよね。僕と真奈は順調すぎるほど順調に関係を深め、結ばれることができました。

今週は京都へ出張に行くのですが、サポートとして真奈も同行させようと思っており、今から楽しみです。




生真面目なキャリアウーマン、麻子の復讐


初めまして。麻子(30)と申します。

半年前に異動辞令を出された時は、まさに青天の霹靂でした。

なぜ?なぜ?と何度も自問自答しました。

営業成績も順調で、リーダーの健吾とも信頼関係を築けていたのに。

しかし、程なくして2人がつき合い出したこと、私について真奈が相談したのがきっかけであったこと、そして最近私の成績の伸びを健吾が快く思っていなかったことが、同期からの噂話で耳に入りました。

それを知った時は、頭を鈍器で殴られたような衝撃でした。

健吾が、そんな器の小さな人間だとは思いもしなかった。私利私欲で、私から大切なクライアント達を奪うような真似をする人だったなんて。

私は、静かに2人への復讐を誓いました。

ここまで半年かかりました。健吾と真奈が接待と称して、ごくたまに自分達のご飯代やタクシー代の領収書を切っている証拠を溜めるのにね。

何度か後をつけた時は、ストーカーをしているみたいで、本当に嫌でしたけれど。

証拠をつかんだ私は、「私の彼」にそのことを話しました。

私の彼ね、営業部全体を統括する部長なんです。立場が立場だけに、社内では秘密にしていますが。

おそらく2〜3回の経費使用だけでは本来厳重注意のみですが、今回は私の異動に私情が入っていた可能性も考慮に入れられました(彼がきちんと人事に伝えてくれました)。

結果、健吾と真奈は来月から別部署に異動、健吾は降格となることが決定しました。

目には目を、恋愛には恋愛を、陰謀には陰謀を。

やられっぱなしでは終わらない。それが男と女のゲームですよね。

……でもね、2人の仲はこれでどうなるのかしらと楽しみにしていたのに、相変わらず仲睦まじい様子なんです。

健吾のインスタグラムには真奈の幸せそうな顔がたびたび出てきて、それを見るたびに少しイラっとしてしまいます。

やっぱり私は“女”として真奈に負けているのかなって、思ってしまうんです。


仕事×恋愛攻防を繰り広げた男女たち…勝負の結果は?


1人の女を利用して恋仲に発展した男女と、左遷され復讐をした女。

貴方が思う本当の勝者は、誰?