「国宝」--なんて潔い名前なんだ!

もう相当話題なので知っている方も多いと思うのだが、京都国立博物館で開催されている、京都国立博物館開館120周年記念 特別展覧会『国宝』のことである。

京都国立博物館の前身、帝国京都博物館が開館したのは明治30(1897)年、今から120年前のこと。また、日本の法令上「国宝」という言葉が初めて使われたのも、同じく120年前。つまり、今年は「京博」「国宝」がともに120周年を迎えるメモリアルイヤーなのだ。

それを記念する展覧会が、この『国宝』というわけである。

ここがすごいよ 国宝展

展覧会で公開される国宝は210件。

現在、国宝指定の美術工芸品は885件(2017年新たに指定されるものも含む)。つまり、日本の国宝の約4分の1が京博に集まってしまうという、とにかく大ごとなのだ。

たいてい特別展とかだと、「本展の見どころは国宝○○です」というのが決まり文句。それで言えば、全部見どころになってしまう。それくらい豪華!

ちなみに、京博の歴史上『国宝』展が行われるのは3度目。「あ、なんだ、結構やってるんじゃない?」と思ったあなた、違います。

2回目は昭和51(1976)年、41年も前のこと。今自分の年齢に+41した人、寿命のこととかつべこべ考えるくらいなら行っておいたほうがいい!

でも「行くべき!」って叫びまくったところで記事としての価値はないので、今回は実際に観ることのできる作品を紹介しながら、5つの疑問を軸に「国宝ってなに?」というところをおさらいしたいと思います。

Q1. 「国宝」という考え方は
   いつできたの?

国宝が誕生したのは明治時代。

この制度を作るきっかけとなったのは、アメリカの東洋美術研究家、アーネスト・フェノロサの思いだった。

明治維新の神仏分離によって、日本には「廃仏毀釈」(=仏教を排斥するため、寺などを壊した仏教破壊運動)の動きが起きた。それによって重要な文化財が破壊されたり、海外に流出したりするのを見たフェノロサは、文化遺産を学術的に調査し、その保存を訴えた。

そして明治30(1897)年、古社寺保存法が公布される。これは、社寺の貴重な建造物や宝物の保存について定めた法律だった。古社寺保存法は、昭和4(1929)年、国宝保存法が制定されて廃止となる。その後、昭和25(1950)年には文化財保護法が成立した。

記念すべき国宝第一号はこれだ。

国宝 普賢菩薩像 平安・12世紀 東京国立博物館
【10月3日〜29日展示】

これは、国宝 普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)だ。

戦後、絵画の国宝第一号に指定され、日本美術最高傑作のひとつといわれる作品。繊細な表現、渋く沈潜した色は、当時の絵画が最新の中国の美術様式に刺激を受けていたことがわかる。

そして、逆に一番新しい国宝はこちら。

国宝 大日如来坐像 平安・12世紀 大阪・金剛寺
【10月3日〜11月26日展示】

これは、国宝 大日如来坐像(だいにちにょらいざぞう)。

大阪府河内長野市にある金剛寺のこの像は、今年新たに国宝へ指定されることが決まった作品。巨大な仏像を見事に仕上げた、仏師の手腕がうかがえる。

Q2. 「国宝」はどうやって決まる?

国宝は、Q1でも紹介した文化財保護法に基づいて決められている。

まずは文化財の種類を分類するところから始まる。カテゴリーは全部で6種類。

1. 有形文化財
建造物、工芸品、彫刻など。

2. 無形文化財
演劇、音楽、工芸技術など。

3. 民俗文化財
風俗慣習や民俗芸能、それらにまつわる衣服や家屋など。

4. 記念物
古墳などの遺跡、庭園などの名勝地など。

5. 文化的景観
人々の生活や生業、地域風土から形成された景観地。

6. 伝統的建造物群保存地区
城下町、宿場町、門前町など歴史的な集落。

次に、文化庁の美術学芸課と建造物課が各地の有形文化財を調査。そのなかから重要文化財の候補をリストアップする。

リストアップされた作品は、文部科学大臣が文化審議会にかけ、そこで意見がかわされたあとで、文化財保護法に基づき重要文化財に指定される。そのなかから、とりわけ文化史的、美術的、学術的に優れているもの、そして共有性や普遍性を持つものが国宝に指定される。

指定作業は1年に1回。2017年には、上記の国宝 大日如来坐像を含む7件が新たに国宝に指定された。

Q3. 「国宝」が多いのは
   どこの都道府県?

京都、といいたい気持ちはよくわかるが、1位は東京(277件)だ。内訳としては工芸がもっとも多く、93件が指定されている。

国宝 時雨螺鈿鞍 鎌倉・14世紀 東京・永青文庫
【10月3日〜29日展示】

2位は京都(232件)。内訳としては、書跡が54件、次いで建造物が51件。続いて、3位は奈良(201件)なのだが、じつは奈良の国宝指定の建造物は京都よりも多く、64件もある。どちらも古都のイメージが強いのは、あの存在感のある社寺の建造物のせい?

そしてここからは件数がぐっと減り、4位は大阪(60件)、5位は滋賀(55件)となっている。

Q4. 「国宝」の常連作家は?

個人の作家として、作品が国宝に指定されている件数が多いのは、彫刻では運慶、絵画では雪舟だ。

運慶は、大日如来坐像(圓成寺蔵)、弥勒如来坐像(興福寺蔵)など6件(このほか推定作品などもある)が指定されている。

雪舟も、天橋立図(京都国立博物館蔵)、秋冬山水図(東京国立博物館蔵)など6件が指定されている。

国宝 天橋立図 雪舟筆 室町・16世紀 京都国立博物館
【10月3日〜29日展示】

Q5. 「国宝」の最小&最大のものは?

最小のものは、国宝 金印だ。その大きさ、1辺2.3cm。
これは、江戸時代、現在の福岡市志賀島で発見された金印「漢委奴国王印」のこと。紀元57年、後漢の光武帝が倭奴国に与えた『後漢書』の記載と一致するものとして、長い日中交流史の冒頭を飾る貴重な文化財だ。

国宝 金印 福岡市東区志賀島出土 弥生・1世紀 福岡市博物館

そして、最大の国宝は東大寺大仏殿(金堂)だ。
横幅57m、奥行と高さは約50m。世界最大級の木造建築といわれているが、創建時は今より大きく、幅は86mもあったそうだ。

とにかく、行け!
(激混み覚悟で)

結局「行け!」って書いてしまうのだけど、やっぱりもうそれしかないのである。普段、東京や大阪、愛知や福岡など全国に散らばっているこの国の宝たちが、こんなふうに一堂に会する機会なんて、そうはないのだから。

ただし、そう思っているのはみんな同じ。先日、芸術分野に詳しい友人に「行きたいんだよね〜」とのんきなトーンで話したところ、「激混み必至だぞ、覚悟して行け!」と言われました。まるで戦場へ向かう友を見送るかのような……。

実は公式サイトでも混雑が予想されることは常々アナウンスされている。平日でも混雑が避けられない場合もあるけれど、それでも、少しでも空いているときに行きたい!というあなたは、京都国立博物館のTwitterをチェックすることをオススメする。

こんな感じで、混雑状況や待ち時間をツイートしてくれているので、時間の融通がきく人はこれを参考にするべし。

さあ、芸術の秋、そして、国宝の秋! 楽しんでいきましょう。

展覧会名
開館120周年記念 特別展覧会 国宝

会期
平成29(2017)年10月3日(火)〜 11月26日(日)
・鬼 10月3日(火)〜10月15日(日)
・挟 10月17日(火)〜10月29日(日)
・郡 10月31日(火)〜11月12日(日)
・鹸 11月14日(火)〜11月26日(日)
※機銑鹸は主な展示替。一部の作品は、上記以外に展示替あり

会場
京都国立博物館 平成知新館

休館日
月曜日
※ただし10月9日(月)は開館、10日(火)休館

開館時間
9:30〜18:00(入館は17:30まで)
※ただし会期中の毎週金・土曜日は20:00まで(入館は19:30まで)

観覧料
一般 1,500円(1,300円)
大学生 1,200円(1,000円)
高校生 900円(700円)
※( )内は団体20名以上

※国宝件数などのデータはすべて2017年9月時点のものです。

Top Photo:国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸・17世紀 京都・建仁寺【10月3日〜29日展示】
Reference:『Discover Japan_CULTURE 日本人なら、一度は見ておきたい国宝』
Licensed material used with permission by 京都国立博物館