ロバート・モラー氏は、民主党、共和党の両政権でFBI長官を務め、党派を超えた尊敬を集めている人物だ(写真:Joshua Roberts/ロイター)

米大統領選挙時のトランプ陣営とロシアの癒着をめぐる疑惑で9月中旬、捜査を指揮するモラー特別検察官がある記録の提出を求め、ホワイトハウスが凍り付いた。司法妨害容疑に基づくドナルド・トランプ米大統領の立件につながってもおかしくない記録だったのだ。

トランプ氏は米国連邦捜査局(FBI)長官だったコミー氏に、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)に対する捜査の手を緩めるよう求めていた。

刑事訴追の可能性が生じているのは

その後、トランプ氏はコミー氏を解任するが、ニクソン元大統領がウォーターゲート事件で学んだように、大統領が検察官をクビにするのは賢いやり方ではない。コミー氏を解任したことで、トランプ氏はモラー氏と対峙することになった。民主党、共和党の両政権でFBI長官を務め、党派を超えた尊敬を集めている人物だ。

モラー氏の捜査によって刑事訴追の可能性が生じたのは、トランプ氏だけではない。元選挙対策本部長のポール・マナフォート氏、娘婿のジャレッド・クシュナー氏も視界に入っている。

モラー氏は大統領選におけるクシュナー氏の活動に加え、同氏の大規模な不動産ビジネスにも関心を持っている。クシュナー氏は父親と巨額の借り入れを行って、ニューヨーク市5番街666番地の豪奢(ごうしゃ)な不動産を購入。しかし、借金返済に行き詰まり、プーチン大統領に近いロシアの銀行などから融資を引き出そうとしていた。

一方のマナフォート氏は、ロビイスト、政治コンサルタントとして世界中の独裁者を支援してきた人物だ。悪名高き顧客の中には、親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコビッチ元ウクライナ大統領の名前もある。

トランプ氏の息子の「疑惑」は

租税回避地に隠された財源や資金洗浄容疑を含め、捜査チームはマナフォート氏の世界を股に掛けたビジネスを詳細に洗っている。圧力を加えるべく、モラー氏は夜明け前の時間帯にマナフォート氏の自宅に家宅捜索を仕掛けてさえいる。

トランプ氏の息子ジュニア氏については、ロシア政府と親密なロシア人弁護士との間で行われたトランプタワーでの会談が焦点だ。ロシア人弁護士はヒラリー・クリントン氏に打撃を与える情報の提供を申し入れ、喜んだジュニア氏は「最高だ」とメールで応じていた。

モラー氏は、自身が納得するまで捜査を継続するだろう。