中国人は何を目当てに日本を訪れるのか。ショッピングや異文化体験もあるだろうが、黒龍江外国語学院の舒篠さんのように、特別な思いを持った人もいるようだ。写真は三鷹の森ジブリ美術館。

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先日、日本政府観光庁が発表した9月の訪日外国人のデータによると、国別では中国が最多で前年同月比29.9%増の67万8300人となった。国慶節連休も中国人の日本旅行人気は高かったようだが、中国人は何を目当てに日本を訪れるのか。ショッピングや異文化体験もあるだろうが、黒龍江外国語学院の舒篠さんのように、特別な思いを持った人もいるようだ。以下は舒さんの作文。

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「ずっと日本へ行ってみたかったので、日本語を勉強しているんです」。これは、私が1年生のときからよく言う言葉だ。日本はそんなに遠い国ではないが、私は一度も行ったことがない。大学生になってからずっと、日本語を勉強している。心の底から「日本へ行きたい!」。何としても、外の世界を見たい。

幼い頃、私と妹はよく「となりのトトロ」を見た後、2人でまねをして、サツキとメイのようにあっちこっち走りまわった。仕事で疲れて寝ている母は、走り回る私たちを「もう、うるさい!少し静かにしなさい」と叱ったものだ。

ある日、「お姉ちゃん、トトロはどこに住んでいるの?いつか見てみたいなあ〜」と妹が言った。映画の中でトトロはいつも木の上に立っている。ずっと田舎の山の中に住んでいるのだと思っていた。「じゃあ、一緒に探してみようか」ということになり、ある日、母に内緒で、私たちは山へ出かけた。山道をトトロを探しにワクワクしながら歩いた。歩いても歩いても見つけられない。私は疑問を持ち始めていたが、妹はどうしてもトトロが見たいといった。仕方がないので探し続けた。

「トトロは木の上にいるでしょう。だから、もっと木が多いところまで行ったらどうかなあ?」という妹を連れて探し続けたが、結局見つからなかった。辺りが暗くなる不安の中で妹をなだめ、「また、いつか探しに来よう。その時は会えるよきっと」と言いながら、急いで家に帰ったのだった。

ところが翌日事件が起きた。妹は高熱が続き、診断の結果「過敏性紫斑病」という病気を患ってしまったのだ。この病気はとてもひどくて、簡単に治るような病気ではなかった。結局、妹は1年間休学しなければならなくなった。毎日1回点滴をする。妹の手は、注射針のせいで穴だらけになってしまった。私はとても悔しかった。自分の過ちを責めるしかできなかった。もし私が、妹を連れていかなかったら、妹はこんな病気にはならなかったと。

でも、母は私を少しも叱らなかった。妹は「お姉ちゃん、そんなに自分を責めないで。私はトトロを探すのが楽しかったよ。これは私たちの秘密だから、誰にも言わないでね。また行ってみたいなあ」と言ったのだ。こんなになってもまだ、トトロに会いたいという妹に私は励まされた。

妹は闘病生活から抜け出せて、今は元気になっている。「トトロに会う!」。これは、私がずっと日本へ行きたい理由の一つで、幼い頃からの、私と妹のささやかな夢なのだ。もちろん、日本へ行けるときが来たら、必ず妹を連れてトトロに会いに行くつもりだ。幼い心で深く感動した「となりのトトロ」。あの、美しい自然の里を訪れたい。もう一度妹とこの映画をスクリーンで見たい。そんな夢が叶ったら、私にとっての幸せだ。(編集/北田)

※本文は、第十二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「訪日中国人『爆買い』以外にできること」(段躍中編、日本僑報社、2016年)より、舒篠さん(黒龍江外国語学院)の作品「トトロを探しに」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。