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もくじ

ー オレはクルマが好きなんだ!
ー オールラウンダー、日産Z
ー 不思議なクルマ、ルーテシアRS V6
ー 硬派! インプレッサWRX STi
ー ランエボがインプに食らいつく!
ー 勝者はフェアレディZに決定

オレはクルマが好きなんだ!

この4台にはある共通点がある。それはスタイルが魅力的なことでもなければ実用性の高さでもないし、ましてや女の子ウケがいいことでもない(いいかどうかは別として)。

なかには「フェアレディZはカッコいいじゃないの」とおっしゃる女性もいるだろうが、それは今の世の中では少数派にあたる。

答えはふたつ。ひとつはミディアムサイズのボディにパワフルなエンジンを搭載したスプリンターであること、もうひとつは好きモノ御用達のマニアックなモデルだという点だ。

その筆頭が三菱ランサー・エボリューションIXである。このクルマが猛烈に速いことに対しては誰も疑う余地はないし、実際にとてつもなく速いのだが、そもそもランエボの市場は90年代前半に初代エボIが登場した頃とは大きく様変わりを見せている。

つまり、この種のクルマに対する熱狂的な人気には翳りが見え始めたばかりでなく、ラリーのホモロゲーション獲得というそもそもの存在理由さえ意味を失ってしまっているのだ。

スバル・インプレッサWRXにも同じことが言える。ランエボとは永遠のライバルであり、いつの時代も接戦を繰り広げているが、つい最近の改良によってエボIXに負けないポテンシャルを身につけている。

この2台はガソリンが闇の市場でしか手に入れることができなくなった未来でも熱いバトルを繰り広げていることだろう。

ルノー・ルーテシアRS V6も今回の企画からは外すことができない、好きモノ御用達のクルマだ。このクレイジーなルーテシアは販売が終了するのも間近かと見られているので、新車で手に入れるなら今が最後のチャンスとなる。

エボIXとインプレッサWRXにとって意外なライバルとなるのが日産フェアレディZである。世間一般では、この手のクルマはのんびりおしゃれにストリートを流すものと決めつけているようだが、好きモノを侮ってはいけない。Zは今や貴重なFRクーペなのだから。

永遠のライバルであるランエボとインプレッサ、クレイジーなルーテシアV6、そしてFRクーペのフェアレディZ。これで役者は揃った。果たして4台のマシンはどんな戦いぶりを見せてくれるのだろうか。

オールラウンダー、日産Z

フェアレディZはロングノーズ・ショートデッキという古典的なスタイルの2シータークーペだ。デザインもメカニズムも最新のものだが、各部のディテールや乗り味には意図的に古典的な味わいが演出されており、昔からのZファンのみならず多くのクルマ好きを魅了した。

それと同時に、Zは日産という企業がエキサイティングな自動車メーカーだということを印象づけるのに役立ち、結果的に同社の厳しい財政事情に大きく貢献した。

Zが搭載する3.5ℓのV6は最高に洗練されたユニットとは言いがたいが、このクラスでは文句なしのパワーとトルクを誇る。

さらに今回紹介する35thアニバーサリー(英国ではGT4の名前で発売中)はオリジナルに対して20psアップの300psをマークするスペシャルエンジンを搭載しており、一段と愉しいクルマに仕上がっている。Zのシャシーはテールを振り回して走っても嫌がる気配を見せない。コイツはご機嫌なドリフトマシンなのだ。

GT4はいまAUTOCAR英国版編集部でも大人気(そして徹夜の最大の原因にもなっている)プレイステーションの「グランツーリスモ4」にちなんだ176台の限定モデルである。高回転の伸びと力強さを向上させたVQ35DE型エンジンをはじめ、専用アルミホイールや専用本革シートなどが採用され、鮮やかなイエローのボディカラーで塗られている。

走りはもう文句なしに愉しい。

このクラスのクーペで、Zと同等の速さと喜びを持つクルマはないだろう。ただし、GT4が標準モデルよりすべての面で上回っているかについては議論の余地がある。

絶対的なパワーとスロットルレスポンスは標準モデルから明らかにレベルアップしているが、低中速域のトルク感はわずかとはいえ損なわれている印象もある。とはいえ、これはウェット路面で振り回して走るのには好都合であったのだが。

フェアレディZはアウディTTとは違い、真の意味でドライバーを愉しませてくれるクーペである。シャープで正確なステアリングと頼もしいグリップ力、スロットル操作で自在にドリフトアングルをコントロールできる能力を持っている。

舗装の悪いワインディングをトバしまくると、路面とのコンタクト不足を感じることもあるが、それだけでこのクルマの魅力が失われることはない。

実用性も充分に高い。もちろん、同乗者がひとりしかいないというのが前提となる。燃費も3.5ℓ排気量のわりに悪くない。このクルマは4台の中でもっともネガが少ない。日常ユースで気になる点はシフト操作に力が必要なことと、不愉快なロードノイズがキャビンに侵入してくることだけだ。

フェアレディZの総評

Zのリセールバリューは驚くほど高い。今回の参加車の中ではダントツで、値段に見合ったパフォーマンスとすばらしいフィーリングを持っている。フューエルタンク容量も80ℓと充分なサイズが確保されており、燃費もいいからロングツーリングにも向いている。

不思議なクルマ、ルーテシアRS V6

ルーテシアRS V6は不思議なクルマだ。グループBのラリーマシンを彷彿とさせる2座のミドシップカーであるが、実際にラリーでは活躍していない。このクルマのワンメイクレースは開催されているが、おもなステージはストリートなのである。

ところでこのクルマの発売当初、あらゆる方面から走りに関してブーイングが聞こえてきた。いわく、ドライでなければ怖くて走れないというのだ。ルノーではこの声を受けて、ルーテシアRS V6に大幅な改良を施した。

ラグナ譲りのV6をミドに搭載しているのは同じだが、シャシー全般に大幅な見直しが行なわれ、サスペンションはよりプログレッシブに動くようになった。

とはいえ、ウェットでは依然として緊張を強いられるクルマである。短いホイールベースとリアに集中した重量配分、それからあっという間にフルロックしてしまう切れ角の小さいステアリングという組み合わせには、大きなミスを受け入れる寛容さはない。

ルーテシアRS V6は過激なルックスから想像するほどは速くない。このクルマで最大の問題点はまさにこの部分で、「これだけ迫力ある姿をしてるんだから、さぞかし速いんだろう」と期待ばかり高まってしまうことだ。

しかし冷静に考えれば、1400kgという軽くない車重と255psのV6 3ℓエンジンの組み合わせでは衝撃的な加速は望めない。

だからといってコーナリングも絶賛するようなものでもない。背後に巨大な重量物を背負っていることを常に意識する。

姿カタチはFF版のルーテシアRSに似ているが、同じようにワインディングで振り回して走ることは不可能だ。間違ってもドリフトしようなどという命知らずの考えは起こさないほうがいい。

このクルマの最大の美点は何か?

それは官能的なエンジンサウンドと、うまく乗りこなせた時の満足感にある。テクニックを駆使してワインディングを軽快に走り抜けたとき、他のクルマでは決して味わうことのできない満足感を与えてくれる。

信じられないだろうが、それなりに実用的でもある。V6エンジンは低回転からトルクがあって扱いやすいし、乗り心地も意外なほどしなやかだ。高速道路では燃費がよく航続距離も延びる。

ボンネットの下にはポルシェ911のような物入れもあるから小旅行なら問題ない。だが、狭い駐車スペースに止める時には苦労する。極端に切れ角の小さいステアリングを何度も切り返えさなければならないからだ。それから、ESPが装備されてないので雨の日の運転は気を付けたい。

ルーテシアRS V6の総評

このクルマに600万円を投じることを正当化するのは難しい。1.2ℓモデルと同じ貧相なインテリアを見たら、たいていの人はポルシェのショールームへ移動してボクスターを購入してしまうだろう。そういう意味では究極の好きモノ御用達グルマである。

硬派! インプレッサWRX STi

インプレッサWRX STiはラリーマシンの血統を受け継ぐ4WDのウェポンだが、そのベースとなっているのは前輪駆動の冴えないセダンである。

WRXはつい最近大掛かりなバージョンアップを受けている。シャシーは改良され、タイヤもワイドになり、一段と戦闘力アップした。

今回のテスト車はプロドライブ製のチューンナップ・パックが組み込まれたSTi PPPというモデルで、これはスタンダードのSTiに対して高回転型のエンジンチューンが施されており、最高出力は300psのマークする。

その走りはじつに過激だ。スタート直後、ほんの一瞬だけはモタつくが、そのあと一気に盛り返してくる。特に4000から8000rpmにかけてのパンチは凄まじく、飛行機の羽根を付けたら飛んでいくのではないかと本気で思うほどだ。

ところで、インプレッサは限界域では強いアンダーステアを示すという評価が定着しているが、今回のテスト車に関してその評価は当てはまらない。

狙ったどおりのコーナリングラインを描くことができるし、ドライバーズ・コントロール・デフのダイアルを「フリー」に近づければ、コーナー入り口から出口までリアタイヤを流しっ放しで駆け抜けることだってできる。従来のインプレッサのようにフロント外側のタイヤに負担が集中しているような感触もない。

しかしこの手のクルマの場合、4枚のドアと5人分のシートを備えているから実用的だと決めてしまうのは早計だ。もちろんインプレッサの場合も例外ではない。

乗り心地は劣悪とまではいかないが、路面状態が悪いと乗員は常にヒョコヒョコとした上下動に悩まされることになるし、遮音材を減らしたりガラスを薄くすることで軽量化を達成している影響で室内は騒々しく、とてもじゃないが快適とは言えない。

加えて、トバしている時の燃費はウソのように悪く、頻繁にガソリンスタンドに行かなくてはならない。ガソリンスタンドのスタッフとはすぐに友達になれそうだが。

それからその気がないときに頻繁にバトルを挑まれるというのも意外と疲れるものだ。もちろん、ひとたびバトルになれば滅多なことでは負けない。

インプレッサWRX STiの総評

このクルマを買うということ、それはつまり自分のモーターライフに深い喜びをもたらすために出費するということだ。

インプレッサはドライバーに所有する喜びと極上のドライビングプレジャーを与えてくれるが、困った側面も持っている。

英国版編集部では2年ほど前にインプレッサを1年間所有していた。この間の平均燃費は7km/ℓ弱だったが、ハードな運転をするとたちまち3km/ℓ台まで落ち込んだ。サーキット走行も愉しんだが、タイヤとブレーキパッドの摩耗以外に、エンジンオイルの消費にも泣かされたものだ。

ランエボがインプに食らいつく!

ラリーステージでも公道でもインプレッサの最大のライバルであるランエボはついに9世代目に突入した。2ℓのターボエンジンと電子制御の4輪駆動、三菱独自の駆動力配分システムなどで武装しているが、インプレッサWRXがそうであるように、ベース車両はおとなしい前輪駆動のセダンである。

エボIXは先代モデルのエボVIII MRをベースに、エンジン関係では可変バルブタイミングシステム「MIVEC」を追加し、新設計のタービンを組み込み、シャシー関係ではリアスプリングの長さを詰めてリアタイヤの接地性を向上させている。

さらに空力面でも大幅なバージョンアップが図られている。最高出力は330ps(日本仕様は280ps)で、0-100km/hをわずか4.5秒で駆け抜け、最高速は250km/h以上(日本仕様は180km/h)をマークする怪物だ。

エボIXは多くのハイパフォーマンスカーとは異次元の世界に住んでいる。スピードも、加速も、ブレーキもほとんど比べる相手がいない。エンジンは2500rpmから本格的に仕事を開始し、それ以降は押し寄せる波のようなターボパワーがレブリミットまで続く。キレのいい6段ギヤボックスをシフトアップしても加速はいっこうに衰えない。

しかしエボIXで驚くべきことは、強力なトラクションと横方向のグリップ、敏捷なハンドリングを見事に両立させている点だ。テクニカルなワインディングでエボIXに付いこれる可能性のあるクルマは今回のテスト車の中では唯一インプレッサしかない。

実用性はどうだろう。

これは5人が乗れるごくふつうのセダンだと思い込むのは勝手だが、同乗者はそうは思わない。

たしかに大人5人が乗って長距離ドライブに出かけることは可能だが、目的地に着いた時、全員がクタクタに疲れ切っていることだろう。このクルマを毎日のアシとするのにはかなりの心構えが必要である。

そもそもマフラーからはかなりの迫力満点のエグゾーストノートが発生しているし、ロードノイズも盛大だから走行中に会話をするためには声を張り上げないといけない。

さらにドライバーは街中で繋がり方が唐突なクラッチと、カミソリのような鋭いレスポンスのエンジンに気を遣いながら走らなければならない。

ランサー・エボリューションIXの総評

ランニングコストも強烈に高い。編集部が昨年まで長期テストで乗っていたエボVIII FQ-330は延べ3万kmを走破したが、トータルのガソリン代、その他モロモロの消耗品で150万円以上を支払い、テスト期間中に5回入院した。

ランエボにいつも上機嫌で走ってもらうためには7000kmごとにディーラーを訪ねなければならないのだ。タイヤの消耗は早いし、まるで永遠に渇きが癒されないかのようにプレミアムガソリンを飲み続ける。速さとのトレードオフとは言え、改善を望みたいところだ。

勝者はフェアレディZに決定

結論から先に言おう。今回のグループテストで勝利を収めたのは日産フェアレディZだ。

このクルマは2台のラリーオタク・マシンのスリルとパフォーマンスの8割を備えており、ルーテシアRS V6のでっかいヒップに匹敵する独自のキャラクターも備えている。

さらに今回のテスト車の中で唯一、自由自在にドリフトを愉しむことが可能なクルマである。さらに街中を走っていても必要以上に挑発されることがなく、サンデーレースに参加しても違和感がない。

ふたり乗りであることさえクリアできれば、いろいろな意味で日常ユースに耐えられるし、ランニングコストも常識の範囲に収まっている。それから人気車種なのでリセールバリューも期待できる。

これだけ完璧な理由が揃っていれば、他の3台を正当化するのは難しい。ただし、これだけは言っておこう。今回のどのクルマを選択したとしても、カーガイ(もしくは好きモノ)の仲間から尊敬されることは間違いない。

2番手はランサー・エボだ。最新モデルのエボIXはいかなる道でもライバルを寄せ付けない圧倒的な速さを身につけており、しかもその速さは洗練されている。

ただし本当に速く走らせるためには、クルマと対話しながらの繊細なドライビングが求められる。そしてトバせばトバすほど快楽のバロメーターは高まっていく。こういうキャラクターはこの手の高性能車としては理想的なのだが、その代わりいつも免許証のことを心配しなければならない。

ゆったり流すふつうのドライブは、シビレるような全開走行までのタメのようなものだ。このクルマはハイパワーのケーターハムと同じように考えるのが正解だ。

4つのドアを備えた5人乗りのセダンではあるが日常ユースでの快適性は望めないし、ひとたびスロットルペダルを全開にすれば驚異的なパフォーマンスと愉しさを得られる。

そういう意味において両者は同類なのだ。かつてわれわれが所有していたエボVIIIは数々のトラブルに見舞われたが、エボIXではそのようなことがなくなっていることを切に望みたい。

個人的にはルーテシアRS V6は素晴らしいと思う。ひとりのエンスージァストとして、こういうクルマが実在することをうれしく思う。ボクはこれに乗っている間、口を半開きにしてニタニタしていた。

冷徹に分析すれば走りの面では3台の日本車に負けているのだが、スペックやデータには現れない魅力を持っているのだ。

ということで、インプレッサWRXが最下位になってしまった。STiはエボにほぼ匹敵する愉しさとスピードを得ることができるのだが、低音でゴロゴロと唸るエグゾーストノートを聞くだけで朝の気分は憂鬱になる。

エボと比べれば街乗りは楽だが、総合的に評価すれば実用性に問題があるのは間違いない。それからいくら高性能だからといっても、ハードに走らせたときの燃費の悪さとオイル消費量についてはなんとかしてもらいたい。

今回のグループテストでいちばん嬉しかったのは、どのクルマも個性豊かで、充分以上に速く、例えようのないくらい愉しいという事実がわかったことだ。しかもそれは腕前や鑑識眼に関係なく味わえるのだ。