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芸能人の不倫スキャンダルが巷をにぎわせています。信頼、キャリア、仕事を失うだけでなく、お金も家族も失う…それが不倫です。頭ではわかっているはずなのに、止められないのは人間の悲しい性。

今回、軽い気持ちで不倫に踏み出してしまったけれど、収拾がつかない人、または「自分だけは大丈夫」と根拠のない自信で不倫しようと思っている「不倫予備軍」に向けて、本当は恐ろしい不倫の現実をお伝えします。澤藤亮介弁護士に聞きました。(ライター・吉田潮)

●「軽い気持ちで手を出しやすく、発覚もしやすい」SNS不倫

――まずは、昨今の不倫事情と傾向を教えてください。

2003年に弁護士登録しましたが、その当時に比べると、有責配偶者の男女比の差は減り、妻が不倫するケースが増えてきた印象があります。本来、不倫はクローズドなものだったはずです。ところが、昨今の不倫は、普通にデートしたり、友達にも相談したり、SNSに書きこんだり。SNSのおかげで出会いやすくなり、遠距離の交際もしやすくなったのでしょうね。でも、軽い気持ちで手を出しやすくなったことで、逆に発覚しやすくなったとも言えます。

――別れ話がこじれたり、浮気が発覚したりして、不倫相手、または配偶者がエキセントリックな行動をとる、というケースもありそうです。

「(相手が)会社に来てしまうおそれがある」というご相談はあります。この場合、法的には難しいところがあって、例えば、相手が会社の人事やコンプライアンス委員会に駆け込むなどしても、それが懲戒事由の報告のような形であれば、違法な行為とは原則言えないんです。ただし、それ以外の目的で、不倫相手の会社に行って「上司を出せ!」とか、勤務中に面会を求めると、後々、その行為が不法行為になる可能性はあります。

――テレビドラマでは、自宅や職場に誹謗中傷のファックスやメールが送られてくるという話もよくあります。

現実でも、たまにありますね。ただ、誰がやったのか特定するのが非常に難しいケースが多いです。逆に特定できれば、賠償請求できるケースもあるのですが、なかなか証拠をつかめないというのが現状のようです。程度がひどい場合は、実際動いてくれるかという問題はありますが、警察に捜査してもらうしかありません。

――配偶者にバレて発覚するのではなく、不倫相手に逆ギレされて、報復として性行為の動画をインターネットに曝された事例もありました。

私自身、そこまでの案件はさすがにありませんが、不倫関係であることにどちらかが苛立ったり、別れ話がもつれたりした結果、感情的になってトラブルに発展するケースは多いですね。怒りのあまり婚約破棄などの慰謝料請求をしてくることもありますが、既婚者であることを隠したようなケースでない限り、認められないでしょう。

こうしたケースでは、事態が悪化する前に、和解金の支払いなどを話し合う必要があります。その上で「アップロードしない」「第三者に開示しない」と約束させるしかないでしょう。

●スマホロックが解除される「3つの発覚パターン」

――そもそも、なぜ不倫はバレるのでしょうか。

いい質問ですね。私が扱う不倫案件でいうと、ほぼLINEです。8〜9割がLINEから発覚しています。裁判ではLINEのやりとりが証拠として出ることも多いです。裁判所が証拠として使用できるか否かが問題である「証拠能力」の有無については議論がありますが、民事裁判では、証拠に刑事裁判ほどの厳格性がないので、頻繁に証拠として提出されていますよ。画面をスクリーンショットで撮ったもの、あとはトーク履歴のテキストを転送したものなどが丸ごと出てきたりします。

――スマホには通常ロックをかけているはずですが、配偶者に見られてしまうということですか。

私がお話を伺う限りでは、発覚のパターンは3つ。「家族にわかりやすいパスワード」「後ろから押しているところを見ていて、キーの位置でなんとなくバレる」、そして「酔っぱらって寝ているときに、指紋認証でロック解除される」です。いまだに4ケタのパスワードで、しかも家族ならわかるような数字にしている人が、意外と多いんですよね。

――なんて単純! なんてうかつな! それだけ配偶者を侮っているということですね。

少なくとも、IT関係の知識や能力を配偶者以上にもっていない人は、不倫してはいけません。同等でも危ないです。不倫というのは本質的にバレやすい行為です。刑法的に言うと「共犯」がいる行為ですから。つまり自分が100%証拠を隠したとしても、不倫相手がどこまで隠せるかという問題があります。

変な言い方ですが、単独犯だったら完全犯罪も遂行しやすいけれど、共犯がいるので発覚の危険度は単純に2倍となるわけです。そしてもうひとつ、みなさん「興信所をよく使う」ようになりました。

――興信所!? つまり探偵を雇う一般人が増えているってことですか? 

裁判でも、ご相談の段階でも、興信所の資料はよく出てきます。昔に比べると、ネット検索で探しやすく、アクセスしやすくなったのでしょうね。ただし、実際には「本人の自白」も多いです。配偶者から「私は何年何月何日にまで誰々と不倫しました」と白状させられて、録音されたり、書かされたりしているんです。

●もっともこじれる「不倫中のウソ」

――噓や隠し事は必ずバレるということですね。

最もこじれるのは「配偶者とうまくいっていない」「別居していて、離婚しようと思っている」と交際を始める前に嘘をついて不倫を始めたケースです。相手が既婚者だと知って関係を始めた場合には本来、交際相手に対する慰謝料は成立しづらいのですが、「既婚なのに未婚と偽って交際」し、ご両親に挨拶するなど社会通念上、婚約したといえる関係になると「婚約不当破棄」になり、また「妊娠中絶による精神的苦痛」も慰謝料の理由になることがあります。

――実際に、裁判になってしまうケースというのは相当面倒くさそうですね。

私は不倫の慰謝料請求について、「入口と中身の問題」があるとよく説明しています。「入口」は慰謝料の請求権が成り立つかどうか。争点となるのは「肉体関係があったかどうか」、「既婚と知っていたかどうか」、だいたいこの2点です。

でも実際には、そこが争われるケースは意外に少なく、請求権が成立することが前提として「中身」つまり、慰謝料の金額が問題の中心になることが多い印象です。その場合、裁判所が慰謝料の金額を決める際に通常考慮する交際期間、性交渉の回数や頻度を立証する責任があるのは、申し立てをする側です。

――恥ずかしいやら情けないやら。それに裁判となるとお金もかかりますよね。

不倫が発覚すると、極端に言ってしまえば、「元サヤに戻るケース」と「破綻して離婚するケース」があります。前者は不倫があっても夫婦が仲良しとなると裁判所は損害が少ないとみなし、慰謝料は減額されます。ただし、後者の場合で、さらに小さいお子さんがいて離婚となると、慰謝料は300万円超えの高額になることもありますよ。

――不倫慰謝料の基準額ってあるのでしょうか?

ケースバイケースですが、代理人として交渉する弁護士の立場から言えば、裁判にならなかったとしても、相手方への慰謝料と弁護士費用で200〜300万円は用意していただきたいです。その用意ができないのに不倫をするというのは、たとえていうなら「無保険で車を運転しているようなもの」です。事故を起こしたときに、自分の責任すら賠償できない、そんな悲惨な状態なのです。

――実際には発覚後、どのような経過をたどることが多いのでしょうか?

和解の形はいろいろで、慰謝料の金額で「早期解決」を求める人もいれば、「とにかく交際をやめさせたい」という人もいます。代理人として弁護士が入って交渉することで、被害感情や応報感情(相手に損失を与えたいという気持ち)は時間とともに減退していくことが多いです。

●「肉体関係さえなければいい、と思っていたら大間違い」

――不倫をする人にこそ、法律的な知識が必要なのかもしれないですね

「不貞」や「不倫」の定義を裁判所がどう考えているのか、というのも本当は知っておいてほしいところです。たとえば、離婚理由として認められるものは民法770条1項に定められていますが、、その中の「不貞な行為」とは、現在の裁判実務では、基本、性交渉すなわちセックスのみをさします。

ところが不倫慰謝料の対象となり得る行為は、もう少し幅広い解釈となります。たとえば、キスにとどまるとか、一緒にお風呂に入っているとか、そういう行為も「不法行為」(民法709条)の対象になり得ます。今の判例の一般的な考え方では、「婚姻共同生活を侵害・破壊に導く可能性のある行為」をさしていますから、不倫慰謝料のケースでは、性交渉さえなければいい、と思っていたら大間違いです。

――マスコミの報道では「一線を超えたか、超えていないか」がキーワードになっていましたね。でもそんなに甘いものではないと?

人によって解釈が異なりますからね。食事だけでもダメだという人もいますし。慰謝料請求の対象となる「不倫」とは、一線を超えたか超えていないか、という基準だけではありませんから、注意が必要です。そしてもうひとつ、不倫に関しては思いもかけない爆弾が存在します。「交際が終わったから安心」と思っていたら、時限爆弾のように後から爆発することがあるんです。

――つまり、昔の不倫がうっかり発覚しちゃうということですか?

たとえ、きれいに別れることができたとしても、交際が終わってから数年後に、元交際相手が、スマホに交際中のLINEや性交渉中の写真などを削除しないで保存していて、それが、交際が終わってから数年後に、その配偶者に見つかってしまうケースがたまにあります。

――そうした場合、時効にはならないのでしょうか

不倫の慰謝料請求の時効は3年ですが、どこから不倫の交際期間とカウントするかが鍵となります。不倫の事実を知らなければ、加害者が誰かも知らないので、論理的には10年前の不倫であっても、不倫された配偶者が、不倫の事実やその相手が誰かを知ったのが最近であれば、時効は完成していないという話になります。残念ながら、以前の不倫が原因で離婚してしまうご夫婦もいます。不倫相手とモメずにうまく別れたつもりでも、時限爆弾のように後から爆発するケースもあると知っておいてください。

●「自分は絶対にバレない」とは思わないで

――本当にありとあらゆるリスクがあるし、正しい不倫の終わらせ方というのもないんですね。

今回は不倫してしまったサイドの話をしていますが、決して「不倫をうまくやれ」というわけではありません。恋愛については法律が裁けない部分も大いにありますし、リスクを背負ってでも落ちてしまう恋は誰にも止めようがなかったりします。

私は不倫してしまった方も、不倫されてしまった方からも、相談と依頼をいただきますので、両サイドの立場から見させていただいておりますが、やはり、不倫が起きてそれが発覚することにより「傷つく人がいる」というのは考えるところが大きいですよね。不倫をされた側の配偶者や子供に対する精神的苦痛や、その後の生活の不安など、損害は絶大ですから。それを考えますと、当然ですが、安易な気持ちで不倫に手を出すには止めた方がいいでしょう。

それでもやはり不倫したいとのことでしたら、「自分は絶対バレない」などとは思わず、発覚して慰謝料請求される可能性があることも視野に入れ、費用面や精神面でも、自分自身でしっかり責任を果たせるかどうか自問自答した上で決断した方がよろしいかと思われます。

【取材協力弁護士】

澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士

東京弁護士会所属。不倫、離婚問題などを中心に取り扱う。iPad、iPhoneなどのデバイス好きが高じ、事務所内の事件資料や書籍の全面データ化等、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

事務所名:新宿キーウェスト法律事務所

事務所URL:http://www.keywest-law.com

【ライタープロフィール】

吉田潮(よしだ・うしお)

ライター・イラストレーター。「週刊新潮」でコラム「TVふうーん録」、東京新聞隔週コラム「風向計」、NHK1.5チャンネル「ドキュメント72時間」の「読む72時間」などで執筆。著書に『TV大人の視聴』(講談社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』(KKベストセラーズ)。

(弁護士ドットコムニュース)