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text:Richard Bremner(リチャード・ブレムナー)

もくじ

ー BMWが体現する「新世界」
ー BMW、上流移行を目指す
ー 具体的に何がどう変わる?
ー BMWが描く「未来車」

BMWが体現する「新世界」

バイエルン・モーター・ヴェルケ。BMWをフルネームで書き、(おなじみの青と白のプロペラマークの代わりに)黒と銀のバッジと使う。フランクフルト・モーターショーでBMWが用いた手法だ。

新しいデザイン言語はクルマのインテリアとエクステリア双方にも表れている。このブランドはさらに上流のマーケットに向かおうとしているのだ。

iブランドの電気自動車や新設計のラグジュアリー・モデルで、BMWは新たな自己表現をしつつある。印刷物やTV、webでも自社の名前をフルスペルで表記するようになってきた。

ことしのフランクフルト・モーターショーでは、7シリーズ・サルーン(フロアマットが木でできたヨットみたいな冒険家スペシャル・バージョン)の展示の上に、この新しいサイネージがに飾られていた。

また、端正な8シリーズ・コンセプトや、ちょっと大味のX7、それにキドニー・グリルとびっくりさせるようなプロポーションを持ったiビジョン・ダイナミックス・サルーンも出展されていた。

実際、この3種類のコンセプトカーのグリルは、形状、テクスチャ、プロポーションなどが大きく異なっており、BMWの「針路の変更」を反映している。

BMWのアイコンの変更よりもずっと重要な針路の変更とは何か、商品管理やデザインのチーフは次のように説明する。

BMW、上流移行を目指す

「BMWグループにはふたつのことが同時に起こりました」とBMWグループのデザイン部門を率いる、エイドリアン・ファン・ホーイドンは、ことの発端をそう説明する。

「まず、われわれはトップレンジをさらに拡大したいと、ずっと考えていました。まだまだ伸びしろがあると確信しています。現にわれわれの顧客はトップエンドの商品をますます欲しがっています。そしてほとんど同時に、われわれは8シリーズやX7のような新しいクルマを開発し、2018年にはZ4などを含む新型車を次々に展開していきます」

「実際、ここ1年半ほどの間に6ないし7シリーズの新型車を発表します。わたしがこの会社に来て以来、短期間にこんなにたくさんの新車を出したことはありません」

これほど多くの新モデルを次から次へと開発することを、「チャンスだと考えています。1年半で6車種を展開すれば、ブランドを大きく進化させることができるからです」とホーイドンク。

「いいタイミングだとも思うんです。これまでかなり順調でしたから。しかし、動き続けなければならない。いいカモにはなりたくありませんからね」と冗談も交える。

会社をいいカモにしないようにすることは、BMWの商品管理兼ブランド・チーフのヒルデガート・ウォルトマンのやる気の源でもある。

「BMWのような強いブランドは、常にフレッシュで、オリジナリティがあり、とんがっていなければならないんです」と彼女は言う。

1998年にBMWにくる前、ユニリーバとカルバン・クラインで経験を積んだブランドの専門家であるウォルトマンは、「常にフレッシュである」「オリジナリティがある」「とんがっている」というBMWブランドの三箇条を管理監督してきた。

そして商品開発プロセスに積極的に参加し、新車の中身にも大きくかかわるようになった。

三箇条は、iブランドのクルマや新たな方向性のラグジュアリーカーなど、BMWの主力車種に当てはまる。

具体的に何がどう変わる?

熱狂的なBMWファンは、いくつかの広告に一般人が出たり、ソーシャル・メディアも含めてメッセージのトーンが車種ごとに違っていることに気づいているかもしれない。

「最新の1シリーズの広告キャンペーンでは、いま話題のドローンと競争させることで、1シリーズは完全にデジタルなんだと言っています」

このリフレッシュによって1シリーズ・ブランドは最新でモダンなものであり続けます。重要なことは、それぞれのセグメント、購買層に合わせて、すべてのクルマに新しく異なった解釈を加え続けるということです」とウォルトマンは言う。

iモデルについては、「さらにデジタルで、もっとマルチメディアで、もっとエモーショナルというまったく新鮮なアプローチをしていきます。これは強烈なメッセージです」と彼女は付け加える。

BMWのラグジュアリー・モデルである既発売の7シリーズや、今後発売されるX7と8シリーズ・クーペの表現には、ファッションの世界から借用した戦略を使う。

「われわれのルーツに立ち返り、アレキサンダー・マックィーンのようにフルネームを使います」とウォルトマンは言う。マックィーンなどのファッション・ハウスは、ハイエンド・ラインにはフルネームを使い、お手頃価格の商品にはイニシャルを使っている。

「これに合わせて、クルマの見た目自体も変わるんです」とホーイドンク。「つまり、より少ないエレメント、より少ないラインで最大の効果を上げるべく、見た目はさらにクリーンでなければいけない、ということです」

「しかもラインはパリッとして、よりシャープかつ正確であるべきです。これは新しいトップエンドのクルマにピッタリだと確信しています。デザイン言語を減らす場合、細部がより重要になります。ラグジュアリー・モデルの場合はなおさらです。われわれのラグジュアリー・モデルは、とてもモダンです」

新しいデザイン言語とは、単に形をシンプルにリファインすることではない。BMWは各モデルの個性を際立たせることに熱心である。新しいグリルはこの流れである。

「次世代のモデルでは、それぞれを互いにまったく別のものにしたいんです。それぞれのモデルには、違うブランドのまったく異なった競争相手がいます。その意味で自動車産業は変わったのです」とホーイドンクは言う。

「ラグジュアリーカーの場合、となりのクルマから区別するのが良い方法です。われわれもそうします。新しい8シリーズを見れば、その名に値することがわかるでしょう。以前の8シリーズ同様、それはサルーンから派生したクーペではありません」

BMWが描く「未来車」

開発中の新しいデザイン言語と2018年に押し寄せる新型モデルで、BMWは企業のアイデンティティを再評価すべきだと、ホーイドンクとマーケティングチームは考えている。

このプロセスに深くかかわったウォルトマンはこう言う。「フランクフルト・モーターショーで、モノクロ・ロゴの『バイエルン・モーター・ヴェルケ』を初めて御覧になったでしょう。少なくとも印刷物で。この方がよりエレガントで洗練されているとわたしたちは感じています。デザイン言語でこれからわたしたちがやろうとしていることにピッタリなんです」

ご期待のように、デザイン・チームはインテリアにも新しいアプローチを導入した。「同じ理由で、インテリアもクリーンなものにしました」とホーイドンクは言う。「車が知的に変貌していく、今がまさにその始まりなんです。インテリジェントなクルマなら操作は少なくていいので、必要なボタンの数も減りますね」

「Z4、8シリーズ、それにX7コンセプトでは、必要最小限のボタンは、センター・コンソールやダッシュボードのふたつのエリアにきちんと整理されています。コックピットはデジタルへと向かっていき、必ずヘッドアップ・ディスプレイが使われます。そしてクルマの操作は、タッチ、ハードキー、音声制御の3つに集約されます」

これは、クルマの知性が成長途上である近未来の話だとホーイドンク。「とおからずクルマは自分で学習し、最終的には全自動運転を行うようになります。そうすると、今のように着席する必要もなくなるので、色々な可能性が生まれます」

「ここ数年でインテリアはかなり進化することでしょう。これらのコンセプトカーでは、インテリアがシンプルになった分、一層豪華になり、贅沢な素材を使える余地が生まれたのです」

このビジュアル革命は来年一斉に始まると期待される。ウォルトマンとホーイドンクが言うように、この変革はデザインとマーケティグの双方で始まった。

「これによってブランドが少しでも上流市場にシフトできれば、結構なことです」とホーイドンクは考えている。

この上級シフトがうまくいけば、BMWに望外の成果をもたらすかもしれない。