安倍首相と加計孝太郎氏(Kodansha/アフロ)

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 森友・加計問題の影響で、7月に投開票された東京都議選では自民党が歴史的惨敗に終わった後、内閣改造が行われ、安倍晋三首相はこの問題について「丁寧に説明していく」と発言した。しかし、安倍首相は野党の臨時国会開催要求を3カ月引き延ばしたうえで、ようやく開催された9月28日の臨時国会冒頭で衆議院を解散し、「丁寧に説明する」という発言はまったく裏切られた。その上、選挙戦では説明は行わず、「国会で説明する」としている。

 そんな選挙戦も終盤に差し掛かり、各メディアの調査では自民党が過半数の議席を獲得するという予想も出されているなか、森友・加計問題で動きがあった。まず森友問題では、選挙公示翌日の11日、テレビ番組『報道ステーション』(テレビ朝日)の党首討論で安倍首相は森友学園前理事長の籠池泰典氏について「こういう詐欺をはたらく人物のつくった学校で、妻が名誉校長を引き受けたことはやっぱり問題だった。やはり、こういう人だから騙されてしまった」と発言し、法曹界関係者から批判を呼んだ。

 また、加計問題については、加計学園の獣医学部設置に当たり、今治市が建設予定地を無償で譲渡し、なおかつ校舎と研究棟の建設費の半額を補助することを決定しているが、その建設費を通常の建設単価の2倍に偽り補助金の詐取を行った加計孝太郎理事長の詐欺罪容疑に関連し、安倍首相が詐欺幇助罪で訴えられた。

『報道ステーション』での発言については、元東京高検検事の郷原信郎弁護士が自身のブログ上で「刑事事件については、『推定無罪の原則』が働く。しかも、籠池氏は、その容疑事実については、完全黙秘を貫いていると報じられている。その籠池氏の公判も始まっておらず、本人に言い分を述べる機会は全く与えられていないのに、行政の長である総理大臣が、起訴事実が『確定的な事実』であるように発言する」と批判している。

【『報道ステーション』での質疑応答内容】

後藤謙次コメンテーター:「総理にお伺いしたいのですが、この森友・加計学園というのは、最高責任者としての結果責任が問われている。森友問題については交渉経過を総理の指示によって検証する、そういうお考えはないのでしょうか?」

安倍首相:「まず森友学園の問題ですが、私が(籠池氏と)1回もお目にかかっていないということは、これははっきりしています。私が一切指示してないということも明らかになっています。うちの妻が直接頼んでいないということも、これも明らかになっていると思います。籠池さん自体が詐欺で逮捕され起訴されました。これは、まさにこれから司法の場に移っていくんだろうと思います。値段が適正だったかどうかも、財務省が。これは民間の方から訴えられているわけでありますから、捜査当局が明らかにしていくんだろうと思います。こういう詐欺を働く人物のつくった学校で、妻が名誉校長を引き受けたことは、これはやっぱり問題があったと。やはり、こういう人だから騙されてしまったんだろうと」

 郷原氏は、補助金適正化法違反の容疑を詐欺罪とすること自体に疑問を持ち、「森友学園問題に対する『説明』は、検察の籠池氏逮捕・起訴によって初めて可能になったということだ。安倍首相の発言は、検察の国策捜査を自ら認めたに等しい」と指摘している。

●問題の本質

 森友問題を取材してきた筆者としては、問題の本質である国有地売却における大幅な値引きによって国家財政に損失を与えた点について、以下の疑問を改めて安倍首相に問い質したい。

(1)産廃マニフェスト(産業廃棄物管理票交付等状況報告書)によって、国有地売却価格値下げの根拠となった埋設ごみが存在しないことがわかり、8億円の値引きの根拠がなくなり、財務省等の担当職員の背任が決定的になったが、これをどのように考えるのか。
  
(2)東京地検特捜部長が交代し、市民団体から出されていた背任罪と公用文書毀棄(きき)罪についての告発状が受理され、大阪地検に移送された。この点についてどのように考えるのか。官僚にとってはなんの得もないことで罪を犯すことは考えられず、出世などの自己の利益を考えた末に背任や証拠隠滅を図ったと考えられる。安倍首相への忖度、そして財務省と国交省の上層部からの指示はあったのか。

(3)安倍首相夫人の昭恵氏の関与を証言した籠池氏は、もともと森友問題で首相夫妻からの便宜供与を受けた当事者である。その当事者が、国会での証人喚問で昭恵氏から「安倍首相からの100万円」と言われ受け取り、官僚たちの便宜供与の経過事実を話している。そんな昭恵氏と財務省の佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)は、証人喚問に出ないのか。

●安倍首相を詐欺幇助罪で市民が告発

 総選挙が公示された10月10日から約1週間が経過した10月16日、「森友・加計告発プロジェクト」の2人の市民が、安倍首相のお膝元である山口地検に、加計学園の詐欺行為を幇助したとして安倍首相に対する告発状を提出した。

提出したのは、愛媛県今治市在住の黒川敦彦氏と大阪府豊中市在住の木村真・豊中市議である。黒川氏は、加計問題に当初から取り組み国会議員の調査チームなどと連携し、国会での事実調査をバックアップしてきた「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表を務めている。木村氏は森友問題について発覚当初から告発・問題提起を続け、森友問題が全国的な問題となるきっかけをつくった「森友学園問題を考える会」の代表である。

 告発状では、加計氏が今治市から獣医学部建設に当たり建設費の半額分を補助金として受給したが、その際に建設費単価を通常の2倍に当たる坪約150万円として偽り詐取したことを訴えている。また、安倍首相はそのような事情を知りながら詐取に幇助したと訴えている。

 この問題で焦点になっているのは、以下の3つである。

(1)獣医学部新設について閣議決定された「石破4条件」に適っているのか。特に既存の獣医学部ではできない新たな獣医学の研究を行うという要件を備えているのか。

(2)安倍首相による関与・便宜供与がここでも問題となっているが、所管官庁であった文部科学省への関与問題が今も隠されたままである。前川喜平前文部科学省事務次官は、首相官邸からの働きかけによって「行政が歪められた」と語り、同省は公文書や行政文書を今も隠蔽したままであり、批判を浴びている。

(3)補助金を不正に受給したとして、今治市民は住民監査請求の上に住民訴訟を訴えている。そうしたなかで明らかになってきたのは、加計学園が学校・学部新設を通して自治体から無償で土地譲渡を受けたり、補助金を受ける学園設置ビジネスのような実態である。

 黒川氏は安倍首相の選挙区である山口4区から立候補し、「本来ならこうした点を国会で論議すべきであったが、ご存知のように国会の冒頭解散でこの問題を避けたのが安倍首相であった。今回の解散―総選挙は、『もり・かけ隠し解散』であることを訴えるために行動をとっています」と語っている。

 このように森友・加計問題隠しといわれた衆議院解散・総選挙だが、選挙後も注目すべき動きが続くだけに目を離せない。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)