By 401(K) 2012

カリフォルニア州にある都市「ストックトン」で、住民を対象にしたベーシックインカム制度の試験運用が2018年に開始することになっています。実際に開始されると、アメリカ国内で初めての試みとなります。

Stockton Economic Empowerment Demonstration | Created by Stockton Economic Empowerment Demonstration

https://www.crowdrise.com/o/en/team/stockton-economic-empowerment-demonstration/newventurefund

Next Year, a Californian City Will Launch the First Basic Income Experiment in the U.S.

https://futurism.com/next-year-a-californian-city-will-launch-the-first-basic-income-experiment-in-the-u-s/

ベーシックインカムの構想は古く、1790年代にはアメリカ建国の父、トマス・ペインがベーシックインカムについて記述した資料も残っています。そして1960年代、公民権運動を率いてきたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア、いわゆる「キング牧師」がベーシックインカム制度への支持を明らかにしていました。そして2018年、27歳のマイケル・タブス氏が市長として町を率いるストックトンで、その制度が実行に移されようとしています。タブス氏が「SEED」(Stockton Economic Empowerment Demonstration:ストックトン経済強化実演)と名付けたこのプログラムは、政府からの支援を受けて行われるものとなっています。

実験に使われる資金の大部分はベーシックインカム支持団体の「Economic Security Project」によるもので、この団体からは100万ドル(約1億1400万円)が提供されているとのこと。対象となる人数は明らかにされていませんが、住民の中から選ばれた人を対象に、月額500ドル(約5万6500円)・年額6000ドル(約68万円)のベーシックインカムが支給されます。タブス市長は、少なくとも3年間はこの制度を継続したいと展望を述べています。



By Alejandro Mallea

画期的な試みが始まるストックトンですが、実は2012年にそれまでのアメリカ史上で最大の財政破綻都市となっています。市は今でも貧困状態に陥っており、失業率は全米平均の4.3%を大きく上回る7.3%を示し、住民の平均年収は4万4797ドル(約510万円)で、これはカリフォルニア州の平均年収である6万1818ドル(約700万円)から大きく下がったものとなっています。また、ストックトンは犯罪率が高く、全米で最も危険な都市の一つに数えられてもいます。

タブス市長は、ベーシックインカム制度を「従来の収入に替わるクリエイティブで必要不可欠な代替策」と捉えて導入を目指してきました。市長がこの制度に触れるきっかけになったのは、キング牧師の主張であり、そして自身が経験してきた貧しい生活であるとのこと。お金がなくて支払うべきものが支払えずに数々のストレスやつらい思いをしてきた経験から、「このストレスは人格がないから生まれるのではありません。お金がないから生まれるのです」と語っています。

タブス市長がいう貧困の解消はもちろんのこと、ベーシックインカム制度は今後起こり得る「ロボットが人間の仕事をやるようになる」という時代の収入源としても期待する専門家が増えています。ロボット技術やAI技術の発達により、それまでは人間にしかできなかった作業や判断をコンピューターが担えるようになると、もはや人間はそのポジションに留まる必要がなくなってきます。これを「ロボットに仕事を奪われた」ととるか、「ロボットに人間の仕事を代わってもらえるようになった」ととるのかは判断の分かれるところですが、いずれにせよその職に就いていた人が収入源を奪われるのはまず間違いありません。その時に収入を補完する方法として、ベーシックインカム制度が期待されているというわけです。

「ロボットが人々の仕事を奪う将来は政府がベーシックインカムを払うことになる」とイーロン・マスク氏が発言 - GIGAZINE



一方で、当然のように「ベーシックインカムが導入されると人々が仕事をしなくなる・探さなくなる」というマイナス面も危惧されています。しかし、これまでに行われてきた実証実験からは、実際には人々が職探しに積極的に取り組んで就業意欲が増すという、まるで正反対の結果が見られるケースが多く存在しており、タブス市長もこれらの結果を見て制度の導入を決意するに至っている模様です。

ベーシックインカムとして国民2000人に毎月7万円を与えたフィンランドではストレスや仕事のモチベーションはどうなったのか? - GIGAZINE



働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入しても労働需要に影響はないことを示す研究結果 - GIGAZINE