2児の父であり、日本人であること以外に正体を明らかにしていない「RIU」と名乗る切り絵師。

作品はとにかくバリエーションが多く、型にハマらない柔軟さとチャレンジ精神を感じる。そんなところに強く惹かれて話を聞いてみると、「紙」の中に隠された彼の人間性が見えてきた。

ただ、ひたすら鍛錬の日々

タイトル:「The Maple Peacock」

RIUはInstagramで作品を公開しているが、日中は別の仕事をしており、アーティストとして仕事を引き受けるような活動はほとんどしていない。まだ自身を “修行の身”と位置づけ、ひたむきに創作を繰り返す。だけど、上の画像を見てもわかる通り、ハッとするような細密さ。

修行中だからこそ、幅広いバリエーションの作品を生み出しているそうなのだけど、むしろこの“柔軟な作風”が彼の持ち味に思えてしまうほどのクオリティの高さなのだ。以下、作品の写真とRIUが込めた「想い」をじっくり感じながら、切り絵の世界に浸ってみよう。

タイトル:「SENSU - Welcome to JAPAN -」

この作品では、和の模様を組み込み、オリンピックのシンボルマークを入れています。海外から観光に来た外国の方に見てもらい、触れてもらう文化の一つとして、ぜひ切り絵もノミネートして欲しいものです。

 

「海外の人にとって、玄関口である空港に飾ってもらってお出迎えしたい」。という意気込みで切り上げたものですが、オファーはまだありません(笑)。切り絵の透け感と影の神秘性を一つにした扇子を、多くの人に見てもらいたいですね。

タイトル:「Skeleton with poor eyesight」(視力の悪い骸骨)

ガイコツは、「君はメガネ派か?それともコンタクト派か?」と聞いているんです。ちなみに、本人は「レーシック派だ」と答えていています。

 

でも、ガイコツには目がありませんよね。子どもたちには将来のことを考えて、今のうちに目を大事にしなよ。と、伝えられればと思い作りました。

タイトル:「NO FACTS, ONLY INTERPRETATIONS」(事実はない、あるのは解釈だけである)

この作品は「interpretations(解釈)」という言葉だけで作られています。哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉に感銘を受け製作したもの。

 

彼の全文はこうです。「There are no facts, only interpretations. (事実はない、あるのは解釈だけである)」この言葉から作品の着想を得て製作をしていますが、その込めた想いを説明すると長くなるので短く言うと。人類の歴史は人類のこれまで解釈の変遷、積み重ねで、私達の心も沢山の既成の解釈に多く依存しています。全てはそもそも、人類の勝手な解釈なんです。

 

だから、事実はこうだ、とかいうものに騙されないで自分の解釈をしっかり持ちたいし持ってほしい。それが誰かを救うための解釈になれば。というものです。

 

作品ではたくさんの解釈(interpretations)が集まって、事実(facts)を浮き立たせています。事実の輪郭は解釈から成り立っていて、解釈がなくなれば事実も消える。そう思っています。いや、それどころか事実と思っているものすら、実体がない場合も……と、思ってもらえることも期待しています。ちょっと混乱するので、ここら辺でやめておきますね(笑)。

 

とにかく、作品を通じて何か私達にとって大切な話ができたらいいのにな。誰かの考えるきっかけになればいいな。いつもそう思っていて、他の作品にもこの「想い」を込めてるんです。この作品に関しては、哲学が好きな人ほどよく響くんじゃないかな。

タイトル:「Totoro」

宮崎駿監督の映画としても有名なトトロをモチーフにした作品は、ネット検索で最も多くの人に見られている切り絵だと思います。自分でも好きな作品でもあり、家にも飾ってあるんです。

 

デザインの構成が、私のその後の作品に影響していて、これをきっかけに、自分の中の切りたい表現の一つがなんとなく掴めたような気がしました。

タイトル:「Children fighting against incurable diseases」(難病と闘う子どもたち)

子どもたちの頑張り。この作品で取り上げた「病と闘う」こと、世界の至る所で争いの被害に遭っていることも、すべて私の心にしっかりと刺さっているし、とても苦しく切なくなるものです。それは、悲しいことだけじゃなくて、勉強や習い事など普段の何気ないことであっても。彼らの心にいつも癒されて、瞳を見ただけで力を与えられているようです。

 

親として大人として何ができるのか。常に考えて行動にしたいなって。色々ある自分の切り絵のジャンルの中で、「子どもと命」というテーマはちゃんと切り続けていきたいと思っています。

 

この作品では、難病と闘う子どもたちを応援する想い。それに、普通の大人はもっと頑張れよ。と、自分にも言い聞かせるための作品でもあるんです。インスタグラムのキャプションに思いが詰まっているので、ぜひ読んでみてくださいね。

タイトル:「Sharing Laughter Beyond The Border」(境界を超えて笑い合うこと)

今まで一緒に過ごしたことのない人と、もしも心の底から笑いあうことができたなら。私達はきっとそれまでになかった世界の広がりと楽しさを感じ始めると思います。知らない子とでもすぐに遊び始める子どもたちを見ていると、世界中のどんな争いも、やっぱり昔から大人のせいだよな、と感じてしまうんです。ここから先はインスタのコメントを。

 

とにかく、いつもこの社会は大人の事情で進んでいて、大切なことが二の次になっているようなことばかりじゃないか。そう感じているからこそ、全く別のキャラクターであるのにも関わらず、肩を並べて笑い合うスヌーピーとミッキーマウスを作りました。

 

少し前のものなのですが、日本の皆さんからたくさんの感慨深いコメントをいただいたことで、言葉で想いを伝えることの大切さを痛感した作品です。ただ、私の他の作品にもあるように、敬愛する宮崎駿先生のジブリ映画の二次創作物と同様に、このミッキーとスヌーピーも“借り物”作品です。オリジナルではないということがアーティストとしての評価の際には必ず指摘されるポイント。ということを踏まえても、なお作りたいものがある。そう思いながら切りました。

タイトル:「Always Look Ahead 」(いつだって前を向こう)

*RIU*さん(@mr_riu)がシェアした投稿 -

2015年にパリ市街でテロがありました。2001年9月11日のアメリカで起きた衝撃的なハイジャック事件もあり、21世紀はまるでテロの時代のように感じてしまいました。

 

文化とアートの象徴でもあるパリで起きたあのテロにもショックを受けました。テロによる被害者やご家族のことを思うと、今でも悲しみと悔しさでいっぱいになるんです。

 

残された家族は、前を向いて生きていかないといけない現実。自分の身に置き換えると恐ろしくて仕方ありません。でも、辛いことばかりじゃない希望をと思います。

 

キレイな星空に、未来のキラキラした夢を見よう。遠い国でもちゃんと思っている人達がいるし、あなたたちの苦しみを決して忘れない。そんな思いを伝えたくて、切り上げた作品です。動画は完成したものを切り離す時のもの。これは、切り絵の醍醐味のひとつです。この作品では、女の子がパッと現れたその瞬間と余韻の中に、「新しい希望」のようなものを感じてもらえたらいいなあ。そう思っています。

繊細な紙に詰まったたくさんの気持ち。他の仕事をしている彼の製作はほとんど夜で、大好きな芋焼酎を飲みながら、想いをめぐらせて、切り絵をしているそうだ。

今まで切り絵というものは、ちょっと近寄りがたい伝統工芸だと思っていた私。けれど、自由な発想のRIUの作品と出会ってからは、「人間らしい美しさ」に親しみを感じられるようになった。それは、細密であればあるほど作者の強い想いが秘められていることに気づいたから。

まだまだ、彼は修行を続けていくと言う。次はどんな想いが私たちに届くのだろう。

Licensed material used with permission by RIU,(Instagram)