フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『陽記』のおしどり腸粉セットです。

どうして、その穴を掘り続けたの? そう聞きたくなるような専門店はいつだって興味深い。今年の7月に西大島に登場した『陽記』はなんと、腸粉と中華粥の専門店。腸粉といえば中国料理の中でもわりとマイナーな広東式点心。お皿の上にぺろんと横たわる乳白色の物体は、米粉の蒸し春巻きのよう。そんな隠れキャラを主役に据えたのは一体なぜ?

「妻が広州出身で。“故郷の味を日本でも食べたい”というので、家で作り始めたのがきっかけでした」と、店主の竹内亮さん。なんて微笑ましいエピソードなの。元々飲食の仕事をしていた竹内さんは腸粉作りに奮闘、帰省の度に本場広州の腸粉を食べ歩くほどのめり込んでいった。

「現地では朝ごはんで気軽に食べられる屋台料理なんです。でも、日本ではなかなか出合えないから」。もっと気軽に腸粉を食べられる場所を、という思いが専門店のオープンにつながった。いざ店を開いてみると予想を超えた好反応、ご近所さんだけでなく東京中の腸粉ファンが集う場所に。人気の秘密は本場の味。ちゅるんともちもちの食感を追求した皮は、食べるというより吸引する感覚で何皿も食べられてしまう(恐ろしい)。タレの味付けも重要で、中国醤油にピーナッツオイルを混ぜた独特の甘さがやみつきになる。広東式のさらりとしたお粥に合わせれば尚おいしく、ヘルシーで風通しのいい食事が約束されている。

陽記 東京都江東区大島2-38-16 TEL:070・1187・4266 10:00〜20:00 不定休 店休日の情報はTwitter(@yeungkee0701)に掲載。

好みの腸粉2種類にサラダと前菜、デザートが付く鴛鴦(おしどり)セット¥850。右・八角の香りがふんわり漂う牛腩(広東風牛バラ煮込み)と、左・香港でも珍しい広東ローカルな卵の腸粉。2種類選べるセットを現地では「おしどり」というのだそう。かわいいね。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。

※『anan』2017年10月25日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)