今週末の第17戦・アメリカGPで、2017年のドライバーズチャンピオンとコンストラクターズチャンピオンが決まる可能性がある。

 ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が優勝し、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が6位以下の場合、ハミルトンの通算4度目のタイトルが決定。ハミルトンが2位でも、ベッテルが9位、バルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)が3位以下なら同じく年間王者が決まる。


ドライバーズランキングで首位を走るルイス・ハミルトン

 メルセデスAMGとフェラーリの戦力を考えれば、そんな結果になる可能性は小さいとはいえ、必ずしもゼロとは言い切れない。

「何も変わらない。今までのレースとまったく同じメンタリティで臨む。みんなの見方は違うかもしれないけど、僕は何も違わないんだ」

 タイトル獲得の可能性を持って臨む今週末のレースを前に、ハミルトンは多くを語らない。

「もちろんチャンピオンシップを獲得することが僕の目標だし、そのことを考えない日はないよ。そのためにF1マシンをドライビングしているんだし、それを果たすためにすべての精力を注いでいる。だけど、残り4戦でタイトルを獲ること――それが僕の目標だ。それがどこだろうと、最終戦だろうと関係ない。今週この目の前のレースで勝つこと、それがまずはもっとも重要なことなんだ」

 シーズン前半戦を終えた時点でランキング首位に立っていたのは、ベッテルのほうだった。メルセデスAMGの圧勝が予想されていた夏の高速2連戦(第12戦・ベルギーGP、第13戦・イタリアGP)でハミルトンに連勝を許し、ランキング首位を譲りはしたものの、予想以上に善戦(ベルギー2位、イタリア3位)したことで、むしろタイトル争いはベッテル優位との見方も強かった。

 しかし、圧倒的優位だった第14戦・シンガポールGPで、フロントロウを得ながらスタート直後の混乱でリタイア。痛かったのは、ベッテル自身が優勝を落としたことだけでなく、シンガポールでは3強チームのなかで3番目の速さしかなく予選5位に終わったハミルトン(予選6位はボッタス)に優勝させてしまったことだ。この1戦で相手に15点差をつけるはずが、逆に25点もの差をつけられてしまったのだ。

 続く第15戦・マレーシアGPでも、ベッテルはポールポジション争いができたはずの予選でパワーユニットのトラブルに見舞われ、最後尾スタートから4位フィニッシュ。優勝はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がかっさらったものの、ハミルトンは2位に入りさらに6点の差を広げた。

 そして、この2戦の取りこぼしで追い詰められた第16戦・日本GPでも、フェラーリはスパークプラグの不良を見抜けずにリタイア。これでベッテルのタイトル獲得は絶望的となってしまった。

 普通ならば、アメリカGPでベッテルが6位以下に終わることはないだろう。しかし、この3戦でのフェラーリの体(てい)たらくを見れば、6位以下どころかノーポイントの可能性すら現実味を帯びているように感じられてしまう。

 だが、ベッテルはまだあきらめてはいない。

「まだチャンスはあるし、集中して戦っていかなければならない。確かにここ数戦はうまくいかなかったけど、僕らには強力なマシンパッケージがある。ここ数戦も勝てるだけの力があった。残念ながらそれは現実にはならなかったけど、今週末に向けても自信はある。みんなはここ数戦のことだけに目を向けてあれこれ判断するだろうけど、僕らには強力なクルマがあり、今シーズンはとてもいいかたちでここまできているしね」

 マレーシアGPではインタークーラーからICE(内燃機関エンジン)へ吸気を送り込むカーボン製パイプにクラックが入るという、パワーユニット本体とは関係のない原因での最後尾スタート。日本GPではスパークプラグの不良だったが、同じメーカー品を使うメルセデスAMGは予選後、ハミルトン車のスパークプラグに問題の予兆を察知して交換しているところを見れば、フェラーリの管理体制の甘さに問題があったと断じざるを得ない。

「限界ギリギリを攻めれば、それを超えて失敗することもある。ミスを犯すこともある。それが起きれば大きな代償を支払うことになる。しかし、そういうことが起きるには、それなりの理由がある。その問題の解決策を見つけ出さなければならないんだ」

 ベッテルはそう語るが、この切羽詰まった状況のなかでフェラーリが冷静さを取り戻し、問題に対処できるかどうか、それはわからない。

「アメリカGPでのベッテルの6位以下」というシナリオがあり得なくないと思われるもうひとつの理由は、躍進著しいレッドブルの存在だ。

 レッドブルがフェラーリを上回る速さを見せれば、ベッテルが6位に沈む可能性も出てくる。そうとなれば、フェラーリはキミ・ライコネンよりベッテルを先行させてタイトル争いの可能性を引き延ばそうとするだろうが、ライコネンとベッテルの間にレッドブルがいれば順位の入れ換えもできなくなる。また、このところ実力を発揮し切れていないメルセデスAMGのボッタスがそのポジションに居合わせるケースもあるだろう。

 もちろん、メルセデスAMGもハミルトンも、そこまでして強引に今週末のオースティンでタイトルを決定させようとはしていない。はっきり言えば、ハミルトンのタイトル獲得はもうほとんど時間の問題だからだ。

 それでも、逆転の可能性はゼロではない。メルセデスAMGのマネージングディレクター、トト・ウォルフは口癖のように言う。

「F1界では、いかにあっという間に勢力図が入れ替わるかということを、我々は痛いほどよく知っている。だからこそ、油断することは絶対にできない。常に全力を尽くさなければ、勝つことなどできないんだ」

 メルセデスAMG自身、マレーシアGPでレッドブルに敗れたことで改めて自分たちを見つめ直し、さらに強さを磨いてきた。

「あの敗北で我々はあらゆるデータを分析し直し、セットアップを見直して正しい方向性に変えた。あそこで多くを学んだんだ。もしあれがなければ、鈴鹿では1秒遅かったかもしれない。悪夢のような1日がさらなる成長をもたらしてくれるものなんだ」(ウォルフ)

 コンストラクターズポイントでも、メルセデスAMGはフェラーリに145点差をつけており、このアメリカGPでフェラーリがメルセデスAMGより16点以上多く獲得しなければ、メルセデスAMGの4年連続コンストラクターズタイトルが決定する。メルセデスAMGの1台が優勝(25点)すれば、フェラーリは2位・3位でも33点しか獲得できないため、タイトル決定。フェラーリが1位・2位でも、メルセデスAMGが3位・4位ならタイトルが決まる。今週末のアメリカGPでコンストラクターズタイトルが決定する可能性はかなり高いと言える。

 それでもハミルトンはフェラーリの逆襲を念頭に置いて、手綱は絶対に緩めないと語る。油断をすれば、マレーシアGPのように恐れ知らずのレッドブル勢が取りこぼしの許されないハミルトンの弱みを突き、優勝争いに飛び込んでこないとも限らない。

「正直言って、今週タイトルを獲るかどうかを語るのは馬鹿げていると思う。セバスチャン(・ベッテル)は今週も強力だろうし、今週も彼らが問題を抱えると期待するなんて間違っているよ。彼らは速いし、勝つチャンスがある。今週末も残り4戦も、すべて彼らはとても強いはずだ。だからこそ、僕もスタンスは変えないんだ。プレッシャーは保ち続けておかなければならないし、それを緩める理由なんてない。前に進み続けなければならないんだ」

 いずれにしても、2017年のタイトル争いは佳境に入った。それぞれの思いを抱えて、シーズン終盤戦の北米ラウンドへと突入していく。

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