地元の農作物が手に入るのが「道の駅」なら、新鮮な地魚や水産加工品が手に入るのが「海の駅」。

 瀬戸内海を望む鳴門市にある「きたなだ海の駅」には、その場で魚を食べられる漁協食堂などが併設されている。ここで「駅長」を務めているのが、なるだ。

 なるは現在、漁協の直営店「JF北灘さかな市」の店長・中瀬啓子さんの飼いねこ。野良ねこだったが、2015年9月ごろにお店に姿を現わし始めた。

「ガリガリに痩せてるのに、人なつこくて。足元にすりよってくるから、放っておけなくてね」(第一発見者の北灘漁業協同組合組合長・松下有宏さん)

 保護して病院へ連れていったところ、幸い、病気にはなっていなかった。その後、中瀬さんが面倒を見ることになり、「鳴門」にちなんで「なる」と名づけられた。保護されたばかりのときは2キロ程度だった体重が、今では6キロ近くにまで “成長” した。

 なるの最大の魅力は、何事にも物怖じしない、おっとりとした姿。お客に媚びないその姿勢が逆に人気を呼び、「それならいっそのこと、『海の駅』の駅長さんになってもらっては」という提案があった。そして2016年3月1日、任命証が交付され、なるは晴れて駅長に就任。駅長用の帽子も贈られた。

 駅長としての重要な仕事に、午前中の生け簀のパトロールがある。

「たまに、野良ねこが生け簀の中で泳いでいる魚を、前脚で捕まえて持っていってしまうことがあるんです。それを見張るのが、なるの役目。午後は小屋の中で昼寝をしたり、店先でお客を出迎えたり。夕方、店が終わると、私といっしょに帰宅します」(中瀬さん)

「なるが看板ねこになってから、店の売り上げは1割くらい上がったかなあ」とほほえむ松下さん。魚も守ってくれて、一石二鳥だ!

(週刊FLASH 2017年7月25日号)