photo by Pexels via pixbay(CC0 Public Domain)

写真拡大

 スペインのラホイ首相は10月19日、カタルーニャの自治権停止を決めた。その手続きを21日の特別閣僚会議に掛けて決定するとした。

 自治権の停止には憲法155条の適用が必要だ。その発動には先ず閣僚会議で決定した内容を上院に通知する必要がある。

 上院では、その内容を審査する委員会に通さねばならない。その後、上院での審議にかけられて過半数の議席の承認が必要となる。上院で可決した上で155条の発動となる。上院での可決には問題はない。与党国民党は上院で過半数の議席を持っている。

 しかも、社会労働党とシウダダンスもそれに支持を表明している。特に、シウダダンスはカタルーニャで誕生した中道右派で、カタルーニャ州議会では野党第一党である。

 155条を上院で可決させ、カタルーニャの自治機能を実際に停止できるようになるのは恐らく26日か27日になるだろと推察されている。

 ラホイ首相は20日のEU首脳会議に向かう前の19日の午前中に臨時の閣僚会議を設けて自治権停止を閣議で決定することが出来た。そうすれば、155条の発動も2日程度早めることが出来たはずである。それを敢えて行わなかったのは、政府にとっても、自治機能の停止は1978年にスペインで議会制民主政治が施行されてから初めてのケースで、その反応は全く未知数だからである。

 敢えて、2日だけでもその決定を遅らせてカタルーニャ州政府の姿勢が軟化するかもしれないという僅かの望みをラホイ首相は託したのである。

◆ラホイ首相とカタルーニャ州知事の駆け引き

 10月1日の違憲住民投票で独立賛成派が多数を占めたというのを理由に、10月10日に州議会を招集。その議会でプッチェモン州知事は独立宣言をしたが、それを曖昧な表現で表明したため、スペイン政府はその明確さを求めた。独立宣言をしたとなれば、スペインの国家統一を妨げる行為であるとして、自治機能を停止できる権利をスペイン政府はもっているからである。

 その明確化を求めてラホイ首長とプッチェモン州知事の間で書簡による交換があった。国家の分離に関わる重要な問題は、双方で会談をもって明確にされるべきであろう。しかし、双方の間にはこれまでの独立問題に絡んでマス前州知事の時から現在まで問題が複雑化してぎくしゃくした関係になっているため、これ以上会談をもつ意向は特にラホイ首相の方でなくしていたようである。

 しかし、9月上旬にカタルーニャ議会で野党の権利を無視して独立立法を強引に可決した時に、スペイン政府は155条を発動すべきであったという声もあったのだ。フェリペ・ゴンサレス元首相(12年政権維持)、アズナール元首相(8年政権維持)らを始め、政界ではカタルーニャの自治機能を停止すべきという意見が多く出た。しかし、ラホイ首相はそれを実行しなかった。

 そのせいで、事態は雪だるまと同じで、独立への動きは次第に膨らんで行ったのである。そして、ついにラホイ首相もこれ以上カタルーニャ州政府の憲法を無視した独立への動きを放置できなくなったのである。特に、今回のプッチェモン州知事が回答して来た書簡では、スペイン政府が155条でもって自治機能を停止しようとするのであれば、州議会を早速召集して共和国としての承認を議会で可決させるという脅しの回答をしてきたのである。

◆「独立」後に待つ厳しい現実

 しかし、カタルーニャが共和国として独立宣言をしても何度も報じているように厳しい現実が待っている。

 カタルーニャの独立宣言について、「それは妄想でしかない」と指摘したのは、スペインが民主化になる以前から現在までの政治の歩みを熟知している著名ジャーナリストのフェルナンド・オネガである。同氏はカタルーニャの代表紙『La Vanguardia』への寄稿の中で、「750億ユーロ(9兆7500億円)の負債を抱え、州の公務員への給与も支払うことが出来ない」、「自治州の融通資金もない」、「国連にもEUにも加盟出来ない」、「ジュンケラス副州知事が期待した共和国の柱に成る銀行も欧州中央銀行からの支えもなく(州外に去った)」、「これが(共和国になった)翌日に置かれる状況である」と独立派への厳しい評価を下している。