無所属での出馬会見を行う嘉田由紀子・前滋賀県知事

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◆無所属は政党候補者に比べて3つハンディがある

 今総選挙では、突然の解散と新党立ち上げの混乱のもと、既存政党を離れて無所属で立つ候補が少なくない。

 そんな中、「無所属候補は国政選挙で3つのハンディがある」と語るのは、無所属で出馬を決めた前滋賀県知事の嘉田由紀子氏。当初は民進党からの出馬を打診されたが、「『国政政党の党首経験者は無所属で出馬を』と、前原誠司民進党代表から相談があり無所属から出ることになった」(嘉田氏)という。

 嘉田氏は2012年の衆院選で「日本未来の党」の共同代表を務めた経験がある。「卒原発」を訴えて100人を越える候補者を立てて9議席を獲得したが、その後党内人事の対立による離党・分党で所属議員がいなくなった。本人による衆院選出馬は初めてのこと。

「滋賀県では、再生可能エネルギーを入れながら2030年までに原発ゼロを実現するための工程表を作った。地方でできないことを国政で進めていきたい」と準備を始めた嘉田氏。「無所属はものすごく不利だと、出馬してみて改めて気づきました」と語る。

「知事選挙だったら無所属でも同じスタートが切れますが、国政選挙では3つのハンディがあるんです。政権放送、ビラ、選挙カー、どれをとっても不利。メディアで届けられない、目で届けられない、耳で届けられない」

◆ビラやポスター、選挙カーや拡声器、事務所の数にまで差が

 まず、無所属では政権放送ができず、テレビ・メディアでのナマの声と姿を届けられない。

 選挙ハガキは各候補者3万5000枚を活用できるが、政党はそれに加えて候補者数×2万枚を活用できる。選挙ビラも同様。各候補者は2種類以内7万枚を配布できるが、政党はそれに加えて種類の制限なしに候補者×4万枚を配布できる。

 選挙ポスターは公営掲示板に各1枚、政党候補者はそれ以外に1000枚掲示できる。

 選挙カーも各候補者1台だが、政党は候補者の人数に応じて1台以上がプラスされる。その他、街頭演説用の拡声器の数、選挙事務所の数にまで差がある。

 また無所属では小選挙区でしか出馬できないが、政党候補者は比例区との重複立候補によって、小選挙区で落ちても比例区での復活当選がありえる。

 憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等」だと謳うが、いまだ被選挙権はさまざまにイビツで平等ではない。さらに言えば、既存政党と新党の間にも差別がある。

◆無所属や新党の候補者は、資金面でも圧倒的に不利

 無所属でも政党候補者でも、供託金を選挙管理委員会に支払わねばならない。衆議院の小選挙区は300万円、比例区は600万円だ(選挙で一定の得票に達しなければ没収される)。すぐにポンと準備できる額ではないが、既存政党なら国民1人あたり年250円分が税金から議員数に応じて交付される「政党交付金」がある。

 例えば2017年度は自民176億円、民進87億円、公明31億円、維新10億円、自由4億円、社民4億円、こころ5億円をそれぞれ受け取った。政党はこれを財源にして、候補者に選挙資金を提供することができる。共産党だけは「国民には政党を支持する自由も支持しない自由もある」と、これまでに政党助成金を受け取ったことがない。

 しかし新党の場合、交付金の算定は毎年1月1日時点の所属議員数で決まるので、今年10月に結党しても0円だ。希望の党から流出した「政策協定書」には、原案に「本選挙に当たり、党の指示する金額を党に提供すること」、最終版に「公認候補となるに当たり、党の資金提供をすること」と書かれていたのはこのためだ。

「これのどこが政策なのか」と嘲笑されたが、大量に候補者を立てようと思えばどうしても多額のカネが必要になるのが、日本の公職選挙なのだ。カネがなければ無所属であれ政党であれ、選挙はできない。

◆「被選挙権の不平等をなくそう」という声は少ない

 もともと政党交付金は「金権政治の克服」を目的に企業献金の代わりに導入されたもの。しかしここにも抜け穴が残っている。政治家個人の政治団体向けには企業献金が禁止されているが、政党支部への企業献金は禁止されていないのだ。

 しかも、企業献金を出す側にまで格差がある。資本金10億円未満の企業なら750万円が上限だが、資本金1050億円以上なら上限は1億円。無所属候補は政党交付金も企業献金も受けることはできず、さらに個人献金でも差をつけられている。政党候補は2000万円、無所属候補は1000万円が限度額となっているのだ。

 カネにかかわる選挙制度で平等なのは供託金ぐらい。他は、政党候補者が圧倒的に有利となっている。選挙運動でも圧倒的に不利で、資金力も知名度もない一般人が無所属で出るのはかなりハードルが高い。

 今回の選挙公約では、共産・維新・希望・立憲民主が「企業・団体献金ゼロ」を謳い、維新と立憲民主がそれに加えて個人献金の促進を訴えているが、「被選挙権の不平等をなくそう」を訴える声は少ない。無所属候補のへの不平等を解消するためには、国民がまず現状の問題点を知ることが大切だ。

<取材・文/まさのあつこ>