知られざる女子日本代表〜Beautiful woman(8)

 ロードバイクのブームとともに、日本でも人気が広がってきた自転車競技。欧州を舞台にした、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャの”3大ツール”が有名だが、日本国内でも最高峰のJプロツアーをはじめ、さまざまなカテゴリーのレースが開催されている。

 自転車競技には大きく分けて、公道や私道で行なわれるロードレースと、バンク(傾斜)のついた専用競技場で行なわれるトラックレースがある。どちらもオリンピック種目になっていて、ロードとトラックの両方をこなす選手もいる。また、3大ツールをはじめ男子の競技がメジャーな存在ではあるが、実は各カテゴリーで女子のレースも盛んだ。

 現役の日本人選手としては、3大ツールの出場経験も豊富な別府史之(べっぷ ふみゆき)、新城幸也(あらしろ ゆきや)が有名だが、女子でも萩原麻由子、與那嶺恵理(よなみね えり)が欧州の有力チームに所属して国際舞台で活躍してきた(※萩原は現在、病気療養のため活動休止中)。そして、その萩原、與那嶺に続く新世代の女子自転車選手として期待されているのが、20歳の梶原悠未(かじはら ゆうみ・筑波大)だ。


スプリント勝負で瞬発力を生み出す太もも回りは60cmある

 もともと小さい頃から水泳に打ち込んでいた梶原は、筑波大付属坂戸高校に入学後、教師に勧められて自転車競技に転向した。すると、わずか1年後の2014年、全日本選手権ジュニアに出場して、ロードレース、タイムトライアルで優勝。高校3年生で出場した翌年の同大会でも連覇を果たす。

 ジュニア日本代表として走ったアジア・ジュニア選手権では、ロード、タイムトライアルを含めて5種目で優勝する離れ業を演じ、ジュニア世界選手権にも出場した。水泳から転向してすぐにこれだけの結果を残せたのは、よほど自転車競技が梶原に向いていたのだろうか。

「基礎体力や上半身の体幹は、競泳によって培われたものが活きていると思います。自転車競技では体幹とハム、スプリント力ではハンドルを引きつける上半身の筋力も大切です。
でも、私の一番の強みは自分で考えて練習メニューを組み立てて、それを実行できることです。もともと努力することが好きで、きつくて苦しい練習を楽しめるんですね。その練習の結果がついてきているのだと思っています。

 あと、自転車競技は頭脳戦なところもあるので、頭を使って作戦や戦術を考えて走るのは得意です。とにかく自転車はスピードがすごい。自分の身体だけでは出せないスピードに乗った競技は、やるだけでなく見ていてもとても魅力的で、迫力があります」


 梶原は2016年からエリート(最上級のカテゴリー)に上がり、全日本選手権ロードにも出場した。しかし、ここではロード、タイムトライアルともに女王として君臨する與那嶺に勝つことができなかった。エリート2年目となる今年も全日本選手権トラックでは4種目に優勝したが、全日本選手権ロードでは再び與那嶺に次いで2位になっている。ジュニアとエリートとの違いは、どこにあるのだろうか。

「ジュニアは限られた世代の選手同士で戦うため、逃げて独走で勝つなど、経験が少なくても走力だけで勝負することができました。でも、エリートではベテラン選手や経験、技術を持った選手がたくさんいます。その中で勝つためには、純粋な走力だけでなく、数多くのレースを経験して身につけたレースの勘や、走行技術など、より多くの能力が求められます。自分の走力に合った作戦や瞬時の判断も必要です」

 梶原はロードレースだけでなく、トラックレースでも圧倒的な強さを発揮している。それぞれにどのような意識でとり組んでいるのか。

「ロードレースはアップダウンのある山岳系のコースや平坦なコースなど様々なコース設定で行なわれるため、それによってレース展開や活躍する選手が変わります。また、個人競技であると同時に団体競技でもあります。コースによってチームのエースを決め、エースを勝たせるためにアシストする選手がいます。私は、平坦や起伏の緩いコース設定で、レースが高速になり、選手同士がお互いに体力を削った中でのスプリント勝負を得意としています。


 一方、トラックレースはどの大会もほぼ同じ環境下で行なわれます。バイクも固定ギアで、ロードレースよりも時間や距離が短くレースが高速になるため、より繊細な作戦と瞬時に判断できる能力が必要です。私自身はトラックレースでは中距離種目を専門に取り組んでいて、オリンピック種目であるオムニアム(1日に4種目を行ない、それぞれのポイントを合計して順位を競う)を得意としています。オムニアムの4種目のなかでもリオ五輪後から組み込まれたテンポレースが得意です。
 
 テンポレースは高速で展開し、そこからさらにスプリント力が求められます。体力とスプリント力が同時に必要なこの種目が私に合っているんです。オムニアムでは各選手がポイントを持っているので、上位選手のポイントをチェックしておいて、時速60km以上で走行しながら、相手と自分のポイントを計算して、駆け引きするんです」

 この時期のアスリートであれば、当然ながら2020年が視野に入っているだろう。最後にオリンピックも含めた将来のヴィジョンを聞いてみた。

「一生アスリートとして生きていきたいです。だからこそ、自分自身でセルフコーチングができるようになって、もっと進化していきたい。まずは東京オリンピックに向けて着々と準備を進めていきます。中距離のオムニアムでオリンピックの表彰台に立ち、将来は競輪選手を考えています。そしてその先はトライアスロンのような、一生続けられる競技をやっていきたいですね」


 勝負へのこだわり、一生アスリートとして生きていきたいという想い、そして明晰な思考力。「はるかな未来へ悠々と羽ばたけるように」と両親がつけてくれた名前の通り、2020年東京オリンピックでのメダルという大きな目標に向かって突き進む梶原悠未に、ぜひ注目してほしい。

愛車に乗って地元・筑波のロードを疾走。この道が五輪に続く

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