先日発表されたタレントイメージ調査(ビデオリサーチ発表、男女別、2月・8月の年2回実施)で、綾瀬はるかさんは4位にランクダウン。1年半君臨したトップの座はおろか、2012年2月から守り続けてきたトップ3からも外れてしまいました。

 ちなみに1位は新垣結衣さん、2位は浅田真央さん、3位は天海祐希さん、5位はDREAMS COME TRUE。「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)のヒット以降、絶好調の新垣さんとは対照的に、綾瀬さんの主演ドラマ「わたしを離さないで」(TBS系)と「精霊の守り人」(NHK)は視聴率不振にあえぎました。

 また、このところドラマ業界では、同じ事務所の深田恭子さん(同6位)、石原さとみさん(同7位)の存在感が大きくなっていただけに、「綾瀬はるかは大丈夫か」という声が上がっていたのです。

 しかし、ついに逆襲の時が来ました。10月4日スタートの「奥様は、取り扱い注意」(日本テレビ系)に続いて、11月25日から「精霊の守り人 最終章」(NHK)が放送されるのです。綾瀬さんはこの秋、2本の主演ドラマで新たな武器を手に入れることになります。

体幹トレとプロテインで体作り

「奥様は、取り扱い注意」で綾瀬さんが演じるのは、元工作員の主婦・伊佐山菜美。菜美は壮絶な過去を隠してIT企業を経営する伊佐山勇輝(西島秀俊)と結婚し、憧れていた穏やかな毎日を手に入れました。ところが、平和な日々をもて余し始めた菜美は、幸せそうに見える近所の主婦が悩みを抱えていることに気づいてしまい、その元凶である悪者たちと戦うことになります。

 最大の見せ場は、綾瀬さんが格闘武術カリ・シラットを駆使して、悪者をなぎ倒すアクションシーン。日ごろジムに通って体幹を鍛え、プロテインを飲んでいるというだけあって、スリムな体形ながら力強さがあり、バランスを崩すこともありません。女優が、自分よりも体の大きな男優を簡単に倒すと違和感を与えがちですが、アクションのレベルが高い綾瀬さんにはその心配がないのです。

 原案・脚本を手がけ、カリ・シラットの使い手でもある金城一紀さんも「ホームドラマとアクションを融合させた高いハードルの作品ですが、圧倒的な才能を持つ綾瀬はるかさんが一緒なので安心」と絶賛。これまで金城さんは「SP」(フジテレビ系)で岡田准一さん、「CRISIS」(フジテレビ系)で小栗旬さんと西島秀俊さんにアクションシーンを仕掛けてきましたが、今作で「女性が主人公のドラマを初めて書いた」のは、綾瀬さんの存在あってのことだったのです。

天然ボケとりりしい姿の相乗効果

 一方、「精霊の守り人」はすでに2シリーズが放送され、今秋の新作が最終章。これまで綾瀬さんは女用心棒・バルサとして、並みいる敵たちと短槍で激しく渡り合う迫力満点のアクションを披露してきました。

 同作で見せるアクションは、空手、キックボクシング、中国武術など、さまざまな格闘術の要素を取り入れた、いわば“総合アクション”。朝から夜までひたすらアクションシーンの練習や撮影に挑む日々で体得したものであり、目を奪われるのは必然なのです。

 綾瀬さんは「ホタルノヒカリ」「きょうは会社休みます。」(ともに日本テレビ系)で見せたコメディエンヌのイメージが強く、飾らない姿で好感を獲得してきましたが、今秋をきっかけに「アクションの綾瀬はるか」という新境地を印象づけられるのではないでしょうか。少なくとも、「日本には主演を張れるアクション女優がほとんどいない」と言われ続けてきただけに、今後も同ジャンルのオファーは続くことが予想されています。

 コメディーで見せる天然ボケの綾瀬さんと、アクションで見せるりりしい綾瀬さん。今後は両者のギャップが相乗効果となって、これまでと同等以上の支持を集めるでしょう。実際「奥様は、取り扱い注意」でも1時間の中で、前半から中盤にかけては家事が苦手な主婦をコミカルに演じ、終盤に激しいアクションで魅了しつつ、最後は夫とイチャイチャするシーンで締めくくる、というギャップあふれる姿を見せています。

 アクションを引き立たせるコメディー要素が万全な同作は、視聴率も11.4%、11.3%、12.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調をキープ。綾瀬さんが西島さんに頭をポンポンされたり、着物の帯をクルクル巻き取られたり、バッグハグの後にキスされるなどのシーンがSNSをにぎわせるなど話題性も大きいだけに、この人気は最後まで続くでしょう。

番宣で見せた類まれなバラエティー適応力

 綾瀬さんは「奥様は、取り扱い注意」の番宣で、「火曜サプライズ」「さんま御殿」「天才!志村どうぶつ園」「笑神様は突然に…」「DASHでイッテQ!行列のできるしゃべくり日テレ系人気番組No.1決定戦」「うわっ!ダマされた大賞2017秋の2時間SP」(すべて日本テレビ系)など、多くのバラエティーに出演しました。

 元々ドラマでの演技に加えて、バラエティー出演時の好印象でトップ女優として君臨していましたが、「出れば必ず笑いと癒しを提供する」というタレント性は今なお健在。これまで以上に多くの番組に出演したことで、類まれなバラエティー適応力を改めて見せつけたのです。視聴者サイドにも「やっぱり綾瀬はるかはいい」「綾瀬はるかの出る番組をもっと見たい」という声が多く、来年2月に実施される冒頭のタレントイメージ調査は再浮上必至でしょう。

 最後に余談を一つ。今月5日、前述したドラマ「わたしを話さないで」の原作者カズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞しました。これを記念して地上波とCSで綾瀬さんの主演ドラマが再放送され、改めて評価されるという追い風が吹いています。

 現在32歳の綾瀬さんは、30代に入ってアクションという新たな武器を手に入れましたが、40代、50代とキャリアを積み重ねていく中で、どのような魅力を加えるのでしょうか。日本の芸能史上、前例のない女優像だけに楽しみでなりません。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

【別カット】“夫”西島秀俊さんとのワンシーン

「奥様は、取り扱い注意」より