立憲民主党・枝野幸男代表

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 第48回衆議院議員総選挙の選挙戦は、10月22日の投開票が差し迫ってきた。そんななか、14日に東京・新宿で立憲民主党が行った街頭演説には、インターネット上での呼びかけだけで数千人の有権者たちが集まり、大きな話題となった。

 そんな立憲民主党への注目度が高まり、日増しにその勢力が強くなっているといわれており、いまや希望の党と野党第1党を争うようになっているとみられている。そこで、選挙戦終盤の情勢をみるべく、立憲民主党東京1区の海江田万里元経済産業大臣とともに枝野幸男代表が行った街頭演説を聞いてきた。

 10月19日、東京・高田馬場では、ちょうど演説が始まる頃に雨足が強くなってきたこともあり、開始予定の10分前になっても人はまばらだった。しかし、次第にその数は増えていき、最終的に駅前ロータリーには100人を超える有権者が集結した。

 14日の新宿での演説と比べると人の数こそ少ないが、この日は中野と秋葉原でも演説を行い、しかも平日の15時半に、悪天候の中でこれだけ人が集まるというのは、やはり立憲民主党への注目度が高いことを証明しているといえるだろう。

●立憲民主党は安倍政権に対する不満の受け皿

 まず演説を行ったのは海江田氏だ。安倍政権が打ち出した経済政策「アベノミクス」を、“実感のない政策”だと批評した。

「アベノミクスは、金融緩和を行い円安にすることで、輸出を行う大企業が儲かる。そうすることによって、中小企業や零細企業、あるいはそこで働く人たちに、雫が上から下に垂れてくるように行き渡り、日本の経済が回っていくと考えた。しかし、5年たった今、それを実感している人はどれだけいるでしょうか。

 『実感というのは感性の問題で数字のほうが大切だ。数字は嘘をつかない』と言う人がいる。しかし、経済は回復していると、いくら数字で示されたところで、実感がなければ意味がない。私たちは、みなさんが日々の生活で感じている実感、実体験を第一に考えなければいけないと考え、そのために安倍政権を退場させ、アベノミクスを終わらせる。そういう意味では、今回の選挙は、みなさんの生活に直接関係のある選挙なんです」(海江田氏)

 これについては、観衆からも「そうだ」という声が多く上がった。確かに、5年間行ってきたアベノミクスは、多くの国民にとって実感の伴う成果をほとんど出せていないのかもしれない。そのことに対する不満が、立憲民主党に期待が集まる理由のひとつだろう。

 海江田氏の演説を受け、続いて演説をした枝野氏は、現状ではこうした国民の不満の受け皿、選択肢がなく、その思いを受け止めて新しい政治を行うため、立憲民主党を立ち上げたと熱弁。

 そして、経済格差や貧困問題を助長させるアベノミクスのような上からの政治ではなく、草の根から日本を再生させる選択肢を示したいと訴えた。そのために必要だと語ったのは、以下の2つのことである。

・公平公正なルール
・自己責任を強調するのではなく、社会を助ける政治

「まずは、公平公正なるルールをつくらなければなりません。規制緩和して自由な競争をさせることは大事ですが、それがあまりに行き過ぎている。働き方はまさにその典型で、派遣法を緩和し自由にしてきて、今、非正規が4割。働かせる側からすれば便利ですが、働く側からすれば、そのような不安定な働き方では、生活をどうやって支えていくことができるのか。公平公正なルールをつくり、その中で競争させるから社会が発展する。このルールをつくること、守らせることを放棄しているから社会は今、閉塞状態にある。

 そして、自己責任を強調する政治を変えなければなりません。確かに人生は自己責任だが、誰も自分の力だけで生きていくことはできない。歳をとれば体が弱くなり、介護が必要になるかもしれない。そのときのために政治がある。その政治が自己責任を強調している。これは、政治の責任放棄以外の何物でもない。

 たとえば、介護の需要が高まっているのに、介護の職員や保育士の給料が安すぎて人を集めたくても集まらない。介護が人不足なのに給料が上がらないのは、政治がこうした分野や公の分野に流すお金を絞っているから。限られた財源を優先順位をつけ、保育士や賃金の低い人に回していく。そうすることで、上がったものはそのまま消費の拡大につながっていくんです。日本の国内でお金が回る、社会を下から押し上げ、支えていく。そういった社会を取り戻していこうじゃありませんか」

●聴衆の中には多くの若者の姿が

 枝野氏は、安倍政権が行っている政治は民主主義ではないと糾弾したうえで、最後にこう締めくくった。

「国民の政治離れといわれていますが、違うんです。国民が政治離れしたのではなく、政治が国民から離れてしまったんです。その政治が、みなさんと一緒に足並みをそろえて前へ進んでいく、その真っ当な政治を取り戻していきたいと思っています。

 国民のみなさん、私たちのために力を貸してください、ではありません。民主主義の当事者として、遠くなってしまった政治を少しでもみなさんで引っ張り戻すために、みなさん一緒に戦いませんか。真っ当な政治を取り戻しましょう、私にはあなたの力が必要です」

 この言葉に聴衆からは、この日一番の歓声が上がった。枝野氏の言葉から、国民の実態に寄り添ったうえで、それを解決していこうとする意気込みが強く感じられたのだろう。

 演説が終了した時点で、気づいてみれば演説開始当初よりも聴衆の数が増えていた。それはただ遅れてきたというだけでなく、枝野氏と海江田氏の熱弁に、足を止めて聞き入った人が多かったように思える。

 また、そのなかでも気になったのが、聴衆に若い人が多かったことだ。若者の投票率が低いことが嘆かれるなか、聴衆に若い人たちが多いというのは、やはり注目度の高さを感じさせる。

 演説を聞いていた学生2人組に話を聞いた。

「今回の演説は、たまたま通りかかっただけで、最初は聞く気もなかったんです。でも、枝野さんの演説には非常に考えさせられました。他政党の演説を聞いていないからなんともいえないですけど、枝野さんなら信頼できそうだなって感じはしましたね」(20代男性)

 若い人たちのなかには、彼らのようにたまたま通りがかり熱弁に足を止めた者や、枝野氏の話を聞くために、初めて選挙演説に足を運んだという人もいた。今、立憲民主党は、これからの日本を担う若者からの支持も獲得しつつあるのかもしれない。
(文=小林倫太郎/A4studio)