ニュージーランド戦、ハイチ戦は、チームの熟成を図る段階に入った日本代表、そしてハリルホジッチ監督にとってどのような意味を持つ試合だったのか!? 写真はハイチ戦。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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「(昨年の)オーストラリア、サウジアラビア戦では、高いレベルでできるということを証明した。しかし現状では、ワールドカップでは通用しない。これから選手と対話し、修正、向上できると信じている」
 
 10月6日に行なわれたニュージーランド戦の後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はロシアW杯に向けた展望を語っている。
 
 では、ハリルジャパンはこれから進化を遂げ、W杯で世界の強豪と渡り合えるのだろうか?
 
 たびたび指摘していることだが、ハリルホジッチ監督が指標とするオーストラリア、サウジ戦での日本代表のプレーは、戦術的に高い水準にあった。プレッシングとリトリートの併用を、ボランチの長谷部誠を中心にやってのけ、鋭いカウンターを繰り出している。とりわけオーストラリアとの前半は、完璧に近い内容だった。
 
「リアクション戦術は、強い相手に対して有効な戦い方」
 
 代表関係者からは、強い自信が滲み出てくる。敵にボールを持たせながら、出所を潰し、囲い込み、奪い取ってカウンターを食らわせる。「後の先を取る」戦い方は、実力差を考えた場合、ロジカルな判断だろう。
 
 しかし、この2試合にしても、90分間を通して戦術が機能したわけではない。オーストラリア戦は後半になってリズムが落ち、綻びが出た。サウジ戦は試合の入り方が悪く、前半は低調だった。
 
 W杯本大会では、こうした乱れを見逃さない強豪が相手になる。ハリルホジッチ監督はそれも見越して、「W杯では通用しない」としているのだろう。戦術的な修正、向上が急がれる。
 
 その一方で、果たしてハリルジャパンの戦い方が進化を遂げ、世界で戦えるほどのものになるのか? という小さくない疑問は残り続ける。
 
 ハリルホジッチ監督は、徹底したリアクションの守備戦術からカウンターで相手を仕留める、という戦い方に執着している。ブラジルW杯ではアルジェリアを率い、卓越した激しい守備からのカウンター戦法で、一定の成果(ベスト16)を上げた。
 
 しかし日本人選手の特性は、アルジェリア人とは大きく異なる。日本人はアルジェリア人のようなフィジカルの強さや激しさには欠けるものの、クイックネスとテクニック、そしてコンビネーション能力には恵まれている。
 
 前者はカウンターに向いているが、果たして後者は? という疑いは消えない……。
「日本代表は、ポゼッションに囚われすぎている」
 
 ハリルホジッチ監督は苦言を呈する。確かにブラジルW杯では、ポゼッションへの執着が強すぎ、敗れ去った。しかし、ハリルジャパンも極端な方向に振れすぎている。1対1の強さに関しても、まともにぶつかり続けては分が悪いのは当然だろう。
 
 ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でありながら、フランスの国籍を有するハリルホジッチ監督は、サッカー人生の多くを過ごしたこの国のリーグ戦をひとつの基本にしている。アフリカ系選手が多いリーグは、フィジカルのぶつかり合いの部分が目立つ。
 
 それと比べたら、Jリーグのコンタクトが非力に映って当然だろう。ただ、素早さや足下の技術の高さ、そして連係など、日本人には日本人の長所があるはずで、それを束ねるのが代表監督の仕事である。
 
「結果を求めるなら、今回は選ばない面子だった。メンタルの脆さで恥をさらした」
 
 3失点で引き分けた10月10日のハイチ戦後、ハリルホジッチ監督はそう言って憤慨した。正論ではあるだろう。しかし、彼はリーダーとして、適切な選手を選び、適切な戦術を選べていただろうか……。
 
 W杯本大会まで、遺された時間は1年もない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、今年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。