橋本環奈が語る、『斉木楠雄のΨ難』振り切れた演技の秘訣 「自分のなかで上限を決めないこと」

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 『週刊少年ジャンプ』で連載されている麻生周一の同名コミックを、『銀魂』の福田雄一監督が実写化したコメディ映画『斉木楠雄のΨ難』が10月21日より公開される。本作では、生まれながらにとんでもない超能力を与えられた高校生・斉木楠雄が、トラブルメイカーばかりのクラスメイトが巻き起こす災難に巻き込まれながら、突然訪れた地球滅亡の危機を乗り越えようと奮闘する模様が描かれる。

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 今回、リアルサウンド映画部では、天下無敵の美少女である学園のアイドル照橋心美を演じた橋本環奈にインタビューを行った。『銀魂』に続いてのタッグとなった福田雄一監督への信頼から、イメージを覆すような振り切れた演技で臨んだ役作りについて、さらには自身の演技に対するスタンスまで、じっくりと語ってもらった。

■「『銀魂』の神楽は身体を張って全力でやったけど、心美はある意味もっとすごい」

ーー福田監督の作品には『銀魂』に続いての出演となります。『銀魂』の出演があった上で今回の『斉木楠雄のΨ難』の出演が決まったのでしょうか?

橋本環奈(以下、橋本):『銀魂』で神楽役をやらせていただくことが決まる前に、福田監督と一度お会いしたんです。私自身、福田監督とお会いしたこともなく、コメディもやったことがなかったので、福田監督が「お会いしてからどうするか決めます」ということでした。それで実際に福田監督とプロデューサーの方とお会いしたら、その時点で「じゃあアニメも観ておいてください」と言われて、「もう決まったんですか?」という感じだったのですが、そのときに今回の『斉木楠雄のΨ難』の話も聞いていて。

ーーでは、『銀魂』と『斉木楠雄のΨ難』が同時に決まったようなものなんですね。

橋本:『斉木楠雄のΨ難』に関しては、もしかしたらスケジュール的に受けられないかもしれなかったのですが、なんとか調整ができて、ちょうど『銀魂』の撮影が始まるぐらいのタイミングで正式に決まりました。

ーー『銀魂』での経験は『斉木楠雄のΨ難』につながる部分も多かったのでは?

橋本:ちょうど続けての撮影だったので、『銀魂』での経験は本当に大きかったです。神楽役をやった時の「そこまでやるんだ!」というコメディ感であったり、福田監督のやり方だったりが下地にあったからこそ、今回の照橋心美役ができたのかなと。

ーー原作ファンの間でもイメージ通りのキャスティングと話題になっていました。

橋本:この役が決まる前に、Twitterでファンの方から「環奈ちゃんに照橋心美役をやってほしい!」と言われたんです。それで、どんなキャラクターだろうと思ってすぐに調べてみたら、「あ! あの漫画だー!」という感じで。周りの人たちからもすごく面白いと評判は聞いていたので、もともと原作の存在は知っていたのですが、読んだことがなかったんです。ずっと読みたいなと思っていて、ちょうどアニメを観始めた頃に出演のお話をいただいたのでビックリしました。

ーー橋本さんは演じる役に対してあまりプレッシャーを感じないそうですね。照橋心美は非常に個性の強い人気キャラクターでもありますが、今回もそれは変わりませんでしたか?

橋本:プレッシャーというよりも、すべてに関して常にいい緊張感を持って臨むことができればいいなと思っているんです。緊張感と共存しているような感じで、逆に緊張していない自分がいると危ないと思うことがあるぐらいで。ある程度の緊張感がないといいものも生み出せないと思いますし、ちょっとドキドキしているぐらいが1番よかったりもするんです。緊張感とプレッシャーはまた違うものですし、そういう意味ではプレッシャーを感じることはなく、緊張感を持って、最も集中するかたちでその役に臨んでいるところはあります。だから『銀魂』の神楽も、『斉木楠雄のΨ難』の心美も、自分のなかでは同じ姿勢で臨みました。

ーー『銀魂』ではかなりふりきれた演技を披露していて、橋本さんにとっての新境地だと感じたのですが、今回はそれをさらに越えてきたなという印象を受けました。

橋本:ありがとうございます! 『銀魂』はたくさんの方々に観ていただけて、本当にありがたいという気持ちが強いのですが、そのなかで「神楽よかった!」と言ってくださる方もいれば、「あんなに体を張って大丈夫?」と言う方もいて。その上で『斉木楠雄のΨ難』があるわけなので、『銀魂』を観ていいなと思ってくださった方々が『斉木楠雄のΨ難』を観たらどう思うんだろうとは感じています。確かに神楽はすごく身体を張ったし、本気で全力でやったのですが、心美はある意味もっとすごいと私も思っています(笑)。

ーーTwitterでも「皆さん、観ないで下さい。観たら色んな意味でびっくりします。私は公開が怖くて仕方ないです」と呟いていましたね(笑)。

橋本:自分が出演した映画を観ないでくださいと言ったのは初めてです(笑)。もちろん自分のはっちゃけ具合もあるのですが、この映画は“絶対にやらないこと”をやっているんです。絶対にこういうことはしないだろうなという固定観念を覆すような、ある意味、革命のようなことをやっている。だから、「観ないで下さい」というアピールの仕方も『斉木楠雄のΨ難』だったら許してくれるだろうなと思ったんです。

ーー『銀魂』の神楽と比べても、『斉木楠雄のΨ難』の他の登場人物と比べても、心美はビジュアルでいうとより一般的ですよね。“天下無敵の美少女”という設定はもちろんあるわけですが、役作りにおいては難しいところもあったのでは?

橋本:そうですね。これに関しては、監督に信頼を寄せている部分がすごく大きいです。私は笑いが好きではあるのですが、笑いを作るという面では自分に力があるとは思っていません。だからこそ自分のなかで上限を決めないことが大事だと思っているんです。一つひとつのことをやり切ることを念頭に置いて、さらにそれを超えるべくやり切ることで、自分のなかでの幅も広がるのかなと。私が何をやっても、福田監督が面白くしてくれることがわかっているからこそ、身を任せられるところは確実にありました。監督と話し合いながら作っていくところも大きかったですね。

ーー福田監督だからこそできたところが大きいのですね。

橋本:それは大きいですね。ムロ(ツヨシ)さんや(佐藤)二朗さんなど福田組常連の方々がいらっしゃるなかで、私は監督に演技をつけていただき、指導していただきながらでしたが、現場では『監督を笑わせたい!』というような空気が流れているんですよ。だからこそ私も、監督に笑ってもらいたいなという気持ちもありましたし、自分のなかでも普段から人を笑わせたいとは思っているので、『銀魂』での経験がいいかたちで作用してくれたのではないかと思っています。

■「ファンの方々の原作愛を裏切らないことが、私自身1番気をつけているところ」

ーー『銀魂』に続いて今回も多彩な表情を披露していますが、この辺りも福田監督と話し合いながら?

橋本:それもありますし、自分で考えながらやった部分もあります。演技って全身を使うものじゃないですか。だから表情で見せたいという気持ちが前提にありつつも、自分自身が心美の気持ちに乗っかって、自然とそうなっていくところもありました。福田監督には、「ここはもうちょっと口を開こう」とか「もう少しはっちゃけていいよ」とか細かい部分を指示していただいて。でも、はっちゃけ過ぎてNGというのはないので(笑)。

ーーそうなんですね(笑)。

橋本:監督が「カット!」と言う前にめちゃくちゃ笑ってくれたらOKなんです(笑)。それが「カット! うーん……」となったら、みんなもう1回やる準備を始めるという(笑)。

ーー撮影現場も笑いが絶えなさそうですね。

橋本:本当に楽しい現場なんですよ! 終始笑いを我慢しなければいけない感じ(笑)。楠雄役の山崎賢人さんとか私とかは、燃堂(新井浩文)や海藤(吉沢亮)がやっていることをジーッと見ていなければいけないわけなんです。どうしても吉沢さんの中二病姿には笑ってしまうし、新井さんの燃堂も相当面白かったですね。とにかく皆さん面白過ぎて、笑いを我慢するのが大変な現場でした。

ーーコメディ映画初主演となる山崎賢人さんとの共演はいかがでしたか?

橋本:山崎賢人さんとは今回初めての共演でしたが、初日から本当に笑いが好きな方だなと感じました。賢人さんは福田監督の作品にずっと出てみたかったそうなのですが、その気持ちがすごく伝わってきました。斉木楠雄はクールなキャラクターなので、あまり表情を変えてはいけないのですが、「もう我慢できない!」とずっと笑っていたのが印象的でした。映画では、心美の妄想のなかだけ楠雄がはっちゃけるところがあって、そのシーンをやっているときの賢人くんは本当に楽しそうにしていました。笑いについてもそうですが、演技に関してもいろいろと追求されているのを目の当たりにして、私にとってもすごく刺激になりました。

ーー『銀魂』で共演したキャストの方々もたくさんいますが、現場の雰囲気は『銀魂』と違うものがありましたか?

橋本:どうでしょう……。違ったような気もするし、一緒だったような気もします。でも、みんなが笑いを追求しながら楽しんで撮影するという、福田組の基本的なところは変わらないです。ただ、『銀魂』はアクションもあったので、より大変だった部分は大きかったかもしれません。特に新井さんは『銀魂』のとき、「あー早く終わってほしい」と言いながら苦しいと嘆いていたんですよ。新井さんが演じた岡田似蔵役はシリアスなキャラクターだったので、「なんで福田組なのに、うちはコメディできないのかな」って(笑)。だから『斉木楠雄のΨ難』の初日に、新井さんが「あー楽しい!」と何十回も言っていたのがとても印象に残っています(笑)。

ーー燃堂役の新井さんのインパクトは強烈でした。

橋本:もう燃堂そのものですもんね(笑)。原作の麻生先生も現場で新井さんを見て、すごくテンションが上がっていました。他のキャラクターも含めて登場人物はみんなキャラが濃いのですが、実写の違和感をあえていじってくるというか、いい意味でのコスプレ感を出せているのが福田監督のすごいところだなと感じます。

ーー確かにそうですよね。『銀魂』では柳楽優弥さんにインタビューをしたのですが、同じようなことを言っていました。

橋本:原作とまったく同じにするのは難しいですよね。マンガやアニメの世界を実際の人間で演じるからには、その時点で違うわけですし。でもファンの方々の原作愛を裏切りたくない気持ちももちろんあるんです。そこは私自身1番気をつけているところでもあって。

ーー具体的にどういうところを?

橋下:『銀魂』のときに、神楽の口癖である「〜アル」を取ってもいいと原作の空知先生がおっしゃっていたのですが、でもそれは神楽にとって必要な要素だと思ったので、そのままやらせていただきました。でもやっぱり原作モノの実写化作品は、絶対にその原作を好きな人しかとやらないと思うんです。だからこそ、そこは安心していただきたい部分ではあります。演じる立場からすると、「実写が残念になる」と言われたり、様々な実写化作品が増えていったりするなかで、それを成功に導くのはすごく大変なことだと思います。でも逆にそれがやりがいだと感じる部分でもあるんです。原作ファンの方々を裏切らないようにする一方で、原作とまったく同じことはしないようにする。そのバランス感覚が大事なのではないかなと。原作の絶対に変えてはいけない部分を受け継ぎながらも、そのなかで自分らしさを出すように心がけています。

ーー今回の心美に関しても自分らしさを出すことができた?

橋本:でも自分らしさって、自分ではわからないものだと思うんです。ちょっと矛盾してしまうかもしれないのですが、演じるときに何か特別なことを持ってきて自分に被せていくというよりは、共通点を見つけていったり、溶け込ませていったりするほうが近いかもしれません。何かを身につけていくというより、剥いでいく。だから何かハッキリと“これが今回の私らしさ”とは言えませんが、“橋本環奈が演じた照橋心美”全体をとおして、私らしさを感じてもらえるのではないかなと思います。

■「上限を決めないこと、やり切ることが大事だということを気づかせてもらえた」

ーー改めて今回の『斉木楠雄のΨ難』は自身にとってどのような経験になりましたか?

橋本:すごく多くのものを得た作品になりました。初めての完全なコメディを自分が楽しんでできたというのはやっぱり大きいです。じゃあ具体的に自分がどう変わったのかを考えると意外と難しいのですが、改めて考えてみると、これまで出演してきた作品があったからこそ、『斉木楠雄のΨ難』で照橋心美役を演じることができた部分もあるのかなと。例えば、この前まで出演させていただいていたドラマ『警視庁いきもの係』の薄圭子役もそうで、動物好きでブワッと話すところとかは、ちょっと心美とつながる要素があったんです。そうやって、出演させていただいた作品で得た経験は、確実に次の作品に何かしらつながっているのは感じています。それに、今回すごく難しいコメディというジャンルの作品を福田監督とやらせてもらえることができて、いろいろな面においてコツを掴めたところも大きいです。自分のなかで上限を決めてしまってはダメなんだということ、やり切ることが大事なんだということを『斉木楠雄のΨ難』では気づかせてもらえることができました。

ーー今後チャレンジしたいジャンルや役柄はありますか?

橋本:本当にどんな役柄でもやりたいです。さっき上限を決めないと言いましたが、自分でこの役をやりたいとか、この役しかやりたくないと思うこと自体が面白くないなと思っていて。いま、いろいろな役をやらせていただいているなかでも、自分がやったことのないような役のほうが多いんです。だからいまのペースで自分がやったことのない役にこれからも挑戦していきたいですし、声をかけていただけるのであれば、どんな役でもやらせていただきたいという気持ちです。(取材・文=宮川翔)

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記