かつカレー1100円

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 地方まで足を運んだ際の楽しみといえば現地の食べ物だ。とはいえ、いわゆる名物だけでは物足りない。元バックパッカーの記者。現地の人たちの間で親しまれているようなちょっとディープなメシ事情が知りたい……。

 日本列島における本州の最北端・青森県。なかでも津軽地方では独自のメシ文化が育まれているという情報を聞きつけた。そこで記者が、青森の地まで赴き、実際に調査してみた!

◆弘前の夜、呑んだあとはカツでシメるのが定番!?

 到着したのは夕方。青森県・弘前の飲み屋街といえば鍛冶町だ。今風のカフェやバーと昭和な佇まいの灼けたスナックなどが混在し、独特でアジのある風情を醸し出している。この日は金曜の夜。通りを眺めていると、サラリーマンはもちろん、学生らしき若者たちの姿も数多く見られる。

 飲み歩いたあとは、“シメ”といきたいところだが……地方の繁華街では、20時には閑古鳥が鳴いてしまうことも珍しくない。しかし、鍛冶町の付近には、夜の街で働く人々や飲み歩く常連客に向け、深夜まで営業を続ける食堂も数多く存在する。

 シメの定番は言わずもがなラーメンと思いきや、ここではなんと“カツ”を食べるひとが多数いるのだという。

●とんかつ「しげ作」

 創業37年の歴史があり、名物はカツサンドだというとんかつ屋「しげ作」。店主の鳴海茂さんがこう話す。

「カツサンドをつまみにビールを飲んでいく常連さんが多く、鍛冶町の場所柄、一般客のほかに、スナックのママさんがお客さんと同伴で訪れることもあります」

 カツサンドに使うパンは専用の銅板を使ってまんべんなく焼き上げるため、口当たりが柔らかく仕上がる。脂っこさもまったく感じない。たしかに、これならばお酒を飲んだあとでも気軽に食べられそうだ。

 また、深夜にも関わらず、通常のとんかつをガッツリ食べていく人も多いのだという。とはいえ、飲んだあとにとんかつを食べるのは少し重たいような気もするが……。

「とんかつの油は新しいものを1回しか使わない。少ない量であっさりと揚げるので、胸焼けしにくいんです」

 カツの味だけでも勝負できるため、ソースをかけない状態でも楽しめるという。とはいえ、しげ作はソースにも自信がある。その秘訣は「長時間かけて煮る」。ピリ辛でコクのあるソースがカツと絶妙に合う。こうしたさりげないこだわりが長く愛され続けている所以なのかもしれない。

●ふぁーすと食事処

「店名はふぁーすとですが、むしろ最後にかつカレーを食べるために飲み歩いています」(40代・男性)

 ある常連客の言葉だ。「ふぁーすと食事処」は、夜中12時を過ぎてからが本番だ。33年前から店を営むのは工藤善治さん。そして息子の直樹さんも手伝うようになった。地元の大学生や若者たちの目当てはボリューム満点のカツ。

「カツが分厚いので、なかまできちんと火が通るように。とはいえ、熱しすぎると今度はかたくなってしまう。そのサジ加減に気を配っています」(直樹さん)

 また、かつカレーだけではなく、カツ丼も人気。現在では当時の学生たちが社会人となり、会社の先輩から後輩へ。

「野球部とかラグビー部の学生が、よく部活終わりにユニフォームのまま食べにきてね。そのまま時が経って、サラリーマンになって。今度は家族や子どもを連れてきたり」(善治さん)

 こうした伝統のようなものがあり、その味が地元で受け継がれているのだという。最近では、SNSの口コミによって県外から食べにくる人も多いのだとか。

 もちろん、鍛冶町でもシメにラーメンを食べる人は多いのだという。だが、せっかく青森を訪れたのであれば、カツでシメるのがオツかもしれない。

<取材・撮影・文/藤井敦年>