10月19日、小雨が降る中で熱弁を振るう立憲民主党の枝野幸男代表(写真:ロイター/アフロ)

10月19日18時50分。JR秋葉原駅のホームに降り立つと、駅の外の広場に集まった傘を持つ人たちの集団が見えた。19時から「1019東京大作戦2」と銘打った立憲民主党の集会が開催されることになっていたためだ。

まさに東京都議選の最終日である7月1日に自民党が街宣したのと同じ場所だ。安倍晋三首相が野次に対して「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫び、おそらくそのことが一因となって自民党が57議席から23議席へと激減させた、因縁の地である。

秋葉原は自民党の聖地のはずだが・・・

それまで秋葉原は、自民党が選挙戦の最終日に街宣会場として使用し、勝利に向けて大いに盛り上げてきた、いわば自民党の“聖地”ともいえる。はたして立憲民主党は、かの地でどれだけの人を集めることができたのか。

14日に行われた第1弾は都内3カ所で開催されたが、とりわけ新宿東南口で行われた街宣には約3000人が集まって話題となった。そもそも立憲民主党は公示前の現職が15人、擁立している候補者数が78人にすぎない小さな政党だ。

しかし大手メディア各社の予想では、50議席近く獲得すると見られている。そうなれば非常に興味深いことが発生する。旧民進党勢力が事実上躍進することになるかもしれないのだ。

2014年の衆院選で民主党(当時)が獲得した議席数は73議席。後に維新の党などと合流して、衆議院の勢力は95議席となっていた。よって立憲民主党の当選者を仮に50人として、これに希望の党に移った候補や無所属で戦うベテラン陣を加えると、元民進党が獲得する議席数は100議席を超え、改選前の議席数を上回ることになるかもしれない。

その理由は、希望の党からの当選者は、ほとんどが民進党出身で占めるに違いないからだ。民進党にいた前職や元職ならば、ある程度以上の期間は選挙区で活動しており、地元での知名度がある。また労組など各団体も彼らを支持しており、これらから一定の票は確保できる。よって、もし小選挙区で敗退しても惜敗率は高く、比例区で復活する可能性は高いのだ。

一方、若狭勝氏が立ち上げた輝照塾出身者や小池百合子東京都知事の知名度目当てに衆院選に手を挙げた候補たちはそうしたツテもなく、選挙準備の期間も十分になかったため、ほとんど空中戦しか展開できない状態だ。

当初は100万円の“上納金”を納めてすっかり当選した気分になっていたのに、小池百合子東京都知事の衆議院転身はなく、公示とともに政党支持率も急落。下手をすると供託金も没収されるかもしれない。「おカネを返してほしい」と思っても、後の祭り状態だ。まさに“小池チルドレン”にとっては受難の選挙といえる。

その希望の党に「排除」されたがために結成されたのが立憲民主党。ところがいまや、野党第1党に躍り出る可能性も出てきている。57人の前職を擁する希望の党は、比例区を含めて235人の候補者を立てているが、党勢の失墜とともに獲得議席数が50議席に届かないかもしれないとささやかれている。立憲民主党が50議席を超えれば、その可能性は否定できない。

19日夜のJR秋葉原駅電気街口の話に戻ろう。

響き渡った「エダノン、エダノン」

「1019東京大作戦2」は、定刻どおりに始まった。気温は10度ほどで肌寒く、しとしとと降る雨がさらに体感温度を下げていた。

それでも聴衆は熱気を帯びていた。集まった人数は自民党の街宣には及ばないが、駅前広場の8割くらいは占めていただろうか。まずは東京2区から出馬の松尾明弘氏が演説した。続くは枝野幸男代表だ。広場中央に設置された演壇の上に枝野氏が上がると、「エダノン」(枝野氏の愛称)コールが沸き上がる。

「10月2日にひとりで記者会見をして、呼びかけた。立憲民主党を立ち上げた。多くのみなさんから『このままでは受け皿がない』『投票する政党がない』とたいへん力強く背中を押していただき、こんなに短い期間でこんなにたくさんの人から応援いただけるとは、正直思っていなかった」

感慨深く枝野氏が話すとおり、確かに立憲民主党に風が吹いている。同じ19日の午後に秋葉原の前に行われた高田馬場駅前での街宣も、平日にもかかわらず、サラリーマンやOL、学生など100人ほど集まった。傘をさした人たちの4割ほどは一般の通行人で、たまたま足を止めたにすぎなかったようだ。それでも枝野氏が演説する間、誰ひとり立ち去ろうとはしなかった。


10月19日18時50分。JR秋葉原駅のホームに降り立つと、駅の外の広場に集まった傘を持つ人たちの集団が見えた。19時に始まる立憲民主党の街宣に集まった人々だ(筆者撮影)

「多くのみなさんが今の政治に不満やいらだちを覚えていた。政治が国民のみなさんから離れてしまった。私も24年国会にいたひとりとして、大きな責任を感じている。いまこそ本当の民主主義をこの国でスタートしようじゃありませんか」

壇上の枝野氏が話す都度、歓声とともに大きな拍手が鳴り響く。その内容は前日に池袋駅前で行われた安倍首相の演説とは好対照だ。安倍首相は北朝鮮の脅威について拉致問題を皮切りに多くを語った。しかし枝野氏が重点を置いたのは国民の生活だ。

「いま健康でそこそこの稼ぎがあって、自分は勝ち組だと思っているあなたも、もしかすると明日病気になるかもしれない、事故に遭って体が不自由になるかもしれない。それが私たちの人生ではないか。そんなときに、困ったときにしっかりと寄り添う、自分の力だけではどうにもならないときにそれを支える役割、それが政治ではないか、まっとうな政治ではないか」

枝野氏が一気にまくしたてると、一段と大きな歓声と拍手が沸き起こる。貧困や格差社会は国民にとって最も大きな脅威だ。北朝鮮の脅威も怖いが、さらに心配しなくてはいけないのは自分たちの将来だと考える国民は少なくない。

自民党は立憲民主党の躍進に警戒

選挙戦が進むにつれて国民からの支持を広げつつある立憲民主党だが、早急には与党を脅かす存在ではない。各社の情勢調査によれば、自公が獲得する議席数は300前後で、公示前の318議席(自民党284議席、公明党34議席)よりは減らすものの、微減程度だろう。大勢に影響はないと見られている。

だが、次の衆院選以降はどうなるか。ある自民党前職の秘書は危機感を込めて次のように筆者に語った。「僕は次の衆院選は次の参院選(2019年)とダブルになると見ている。今回の衆院選で安倍政権は続投して来年の総裁選で3選となるだろうが、東京五輪がある2020年まではもたないかもしれない」。

選挙後、立憲民主党のもとにリベラル勢力が結集する、という条件付きではあるが、大きな存在感を放つことになりそうだ。