グランプリ(GP)シリーズの初戦、ロシア大会のロステレコム杯が始まる前日の10月19日、羽生結弦は、午前10時半からの公式練習でフリーの『SEIMEI』を演じた。

 冒頭のジャンプには、その直前に両足着氷になっていた4回転ルッツを持ってきたが、それはパンクして1回転。それでも続く4回転ループと3回転フリップを決めると、後半には最初の4回転サルコウを3連続ジャンプにして決める。4回転トーループは着氷を少し乱れたために2本とも単独ジャンプにし、トリプルアクセルは連続ジャンプと単独ジャンプの両方をしっかり決めて曲かけ練習を終えた。


グランプリシリーズ初戦に臨む羽生結弦

 最初のルッツを4回転にするのは、この演技構成を明らかにした時から予定していたものだ。その構成にGPシリーズ初戦から挑戦する理由を、羽生はこう説明した。

「今まで練習をやってきて、『ルッツを入れられるな』と思ったのが、今回(4回転ルッツを)入れることにした理由のひとつですね。五輪へ向けてこれからどんどん試合を重ねていくわけですけど、実際には試合数も限られていますから。本番へ向けて、試みた回数というのも一つひとつ大事になっていくと思うので、その意味でも、できるだけやりたいと考えました」

 今季初戦のオータムクラシックで学んだのは、「全力でできないことが、自分の集中力を途切らせることにつながる」ということだった。右膝に不安を抱え、4回転ループを封印したことで、フリーでは後半のジャンプへの意識が過剰になってしまった。現状をしっかり分析して冷静にやっていたつもりではあったが、それが程よい集中力につながったとはいえなかったからだ。

 この構成に挑戦してみて、もしうまくいかなかったらまた構成を変えるという選択もできる。それを早めにハッキリさせるためにも、まずは挑戦しておかなければと考えたのだろう。

「オータムクラシックのように集中力が途切れることを避けるためにも、今自分が一番実力を発揮させる構成で、自分が一番本気を出せるプログラムでやりたいと思っています」

その言葉どおり、挑戦こそは自分の信条ということだろう。

「グランプリシリーズが始まるなという感覚もあります。それに、自分が目標にしてきた構成にやっと体がついてきたので、そういった意味でも『やっと始まるな』と。ただ、今は五輪シーズンが始まったなというよりも、ひとつの試合として考えなければいけないと思います。この試合では、(4回転)ルッツも注目されると思いますし、もちろんショートも注目されると思いますけど、まずは今日のフリーの曲かけ練習でできたこと、できなかったことを反省して調整し、明日に向けてしっかりとやっていかなければと思います」

 こう話す羽生は、この大会の会場である”メガスポルト”を、「シニアに上がってからの2年間はここでのグランプリシリーズに出ていたので思い出深いですし、自分の中では『帰って来たな』という感じもある会場です。実際、モスクワで合宿したこともあったので、その意味ではすごく懐かしい感じもして、落ち着いて試合に臨めるのではないかなと思います」と話す。そんな思い入れのある場所であることも、彼が4回転ルッツという新たな挑戦を選択したひとつの理由かもしれない。

 曲かけ練習のあと、ブライアン・オーサーコーチのアドバイスを聞きながら挑んだ4回転ルッツでは何度かパンクを繰り返していた羽生だが、自分の気持ちを盛り上げるように両手をクルクルと回す仕種をしたあと、イーグルからの4回転ループに挑戦して4回目にはきれいに決めた。そして、もう一度4回転ルッツでパンクしたあとに、4回転ルッツをきれいに決めて観客席の歓声を誘った。

「ルッツのパンクが多かった理由には、フリーの曲かけを頑張ったあとということもあったし、それはそれでしょうがないと思っています。ただ、最終的にはああやって、練習中に体力を回復させながら最後にはルッツもしっかりと軸の取れたものを跳べているので、それはよかったなと思っています。それに、本番はこんなに疲れた状態でやるわけではないので、いい感じで調整しながらできています」

 攻める心をなくさないのが羽生の持ち味であり、それが自身をさらに進化させる源でもあると自分でも理解をしているはず。羽生結弦は、平昌五輪シーズンのGPシリーズ初戦を攻めの姿勢でスタートした。

Sportiva フィギュアスケート特集号
『羽生結弦 いざ、決戦のシーズン』
好評発売中!


★詳しくはこちらから>>

■フィギュアスケート 記事一覧>>

■フィギュアスケート特集ページ>