楽天・宋家豪【画像:(C)PLM】

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好投を続ける台湾人右腕・宋家豪、レギュラーシーズン登板はほとんどなしも…

 楽天は10月19日のCSファイナルステージ第2戦でソフトバンクを2-1の最少得点差で下して通算成績を2勝1敗(1敗はソフトバンクのアドバンテージ分)とした。ここへきて、レギュラーシーズンはほとんどマウンドに上がらなかった“謎の右腕”が「勝利の方程式」の一翼を担いつつある。

 宋家豪(ソン・チャーホウ)は、台湾、台東県の出身。小学校から野球をはじめ、台北近くの桃園にある国立体育大学に入学。この大学からはCPBL(中華職業棒球大聯盟=台湾プロ野球)に多くの人材を輩出しているが、同時に、姜建銘(元巨人)、陳偉殷(元中日、現マーリンズ)、黄志龍(元巨人)、林恩宇(元楽天)、陳冠宇(現ロッテ)などCPBLを経ずに直接NPBに入団する選手も出している。

 台湾ではアマ野球とプロ野球の実力が拮抗しており、アマの有望選手の中にはCPBLに行かず、NPBや米マイナーリーグを目指す選手も多い。宋家豪も2015年6月のCPBLのドラフトで統一に指名されたが、これを拒否して2015年10月に楽天と育成契約を結んだ。

 なお大学時代には台湾で開かれた「第1回21U野球ワールドカップ」に出場。日本ハムの近藤健介や広島の鈴木誠也など当時のNPBの若手選手主体の侍ジャパンと対戦している。また2015年、日本、台湾で開かれたプレミア12にも、代表選手として出場している。

 2016年は育成選手としてプレーし、イースタン・リーグで15試合に登板し62回2/3を投げ、6勝3敗、防御率2.44を記録。6勝はチームトップタイだった。2017年は33試合に登板し、54回2/3を投げ8勝2敗5セーブ、防御率4.28。防御率は落ちたがこの年もチームトップタイの勝ち星を挙げた。

 7月31日には育成選手から支配下選手に移行。8月11日に1軍に昇格し、オリックス戦に初登板した。このときは1回を投げて、3被安打1奪三振自責点2と結果を出せず、14日には2軍に降格したが、10月4日に再昇格。以後の成績は以下の通りだ。

10月4日 ロッテ戦 1回 0被安打1与四球1奪三振 自責点0 
10月7日 オリックス戦 1/3回 0被安打 自責点0 ホールド
10月8日 ソフトバンク戦 1回 0被安打 自責点0 ホールド
10月10日 ロッテ戦 1回1/3 0被安打 4奪三振 自責点0 ホールド

楽天自慢の「勝利の方程式」に加わった“謎の右腕”

 楽天は10月1日の時点で、12球団で最も多い9試合を残していた。CSに備えて救援投手陣の消耗を防ぐ目的もあって宋家豪を起用したが、予想外の好投を見せたのだ。

 梨田監督は、CSファーストステージではアマダーの代わりに宋家豪をロースターに載せた。10月16日の第3戦で、6回裏、2番手の高梨雄平が先頭の源田壮亮を歩かせると、梨田監督は宋をマウンドに送る。宋は代打メヒアを見逃し三振、山川を中飛、浅村を遊ゴロと、西武の中軸を3者凡退に切って取った。この好投で宋には勝ち星がつく。

 この好投で手ごたえを感じた梨田監督は、アマダーをメンバーに加えたCSファイナルステージもペゲーロを外し、そのまま宋を登録。19日の第2戦でも6回裏、先発・辛島航から1死二塁でマウンドを引き継ぎ、内川聖一を速球で空振り三振、デスパイネは歩かせたが松田宣浩を見逃し三振。次の7回表に楽天が勝ち越したため、宋にCS通算2勝目がついた。レギュラーシーズン未勝利の投手が、CSでは最多勝だ。

 宋は185センチ、92キロのがっちりした体格。150キロ超の速球とスライダー、カーブなどを投げるが、外国人投手には珍しく、制球が良いのが強みだろう。

 そして何よりも、他球団からすれば「ほとんど対戦データがない」ことが大きい。どんな投手なのかがわからないために、攻めあぐねているという一面があるのだ。宋家豪は8月のデビュー戦では3被安打したが、以後、6試合の登板で1安打も打たれていない。

 ここへきて、ハーマン、福山、松井裕樹という楽天自慢の「勝利の方程式」に“謎の右腕”が加わった。宋の活躍が今後も続くようなら、楽天の「下剋上」も夢ではなくなるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)